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4章 ナイトフォール編

カイルVSドレア②

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「ひゃあ――っ! これで人間串焼きの出来上がりだ……っていない!? あいつどこ行った? 影に血だってついてる。 そう遠くは逃げられないと思うが……   」

「ここだ――っ! 」

「んなっ! 」

 ドンッ――

 俺は時空間魔法【 ディメンション・ウェイブ 】によりさっき居た場所と別の場所の空間を繋げた。
 咄嗟のことで、繋げる場所の指定まではすることはできなかったが、何度か影に刺されながらも移動を果たした。

 幸いそんなに遠くない場所だったため、やつが高笑いしている間に後方へと移動し、蹴り飛ばしてやったというわけだ。

 さすが神級のエーテルバフ。
 速度も段違いだし、威力も以前とは比べ物にならない。

 実際、あの上位魔族でさえ俺の蹴りで吹っ飛ばされ、着地で受け身も取れずに倒れ込んでいる。

「ううっ……。 人間如きの攻撃を受けるなんて。 お前のことは敵として認めなければならないようだな 」

 そう言いながら、ドレアはゆっくりと立ち上がり続ける。

「影遊びはここまでだ。 本気でいく。 魔人化【 影纏い 】」

 なんだ?魔人化って?
 やつの周りに闇のエネルギーとさっきまで使っていた影が集まっていくぞ。
 そしてそれが身体に纏われていく。

 俺達でいうエーテルバフみたいなものだろうか。
 そしてその闇は身体に纏うなり悪魔の形を模し始めた。
 ……いやそれだけじゃない、それに続き、影が鎧のように身体に巻きつき顔まで覆っている。

 これで『黒い鎧を纏った悪魔』が誕生した。 

「驚いたか? これが上位魔族だけが使える魔人化ってやつだ 」

「あぁ、正直ビビりまくってるぞ! 」

 この感情は事実だ。
 もちろん格上の相手……。
 しかし戦えないというほどの実力差は感じない。
 以前ならば、震えが止まらず手も足も出なかっただろうが、今の俺ならばっ! 

「その割にはお前のその目……勝つ気だな?  」

「うん? そうだなぁ。 勝てる確信はないが、負けるつもりもないぞ!  」

「ふっ! 正直なやつだ! お前、名前は?   」 

「カイルだ! 君はドレア、だろ?  」

「そうだ!  カイル、お前とは出会う場所が違ったなら、友になれたかもしれないな  」

「ははっ! 全く同感だ!  」

「しかし、カイルよ。 僕達はお互いに慕う主が違うから戦わないといけない。 そこで提案だ。 お前魔族側にこい! カイルの実力ならばダークオーダーとはいかないが、僕達の側近くらいなら問題なくなれるだろう  」

「そうだな。 それもいいかもしれない  」

「ならばっ! 」

「だがドレアよ、悪いな。 俺は今の主……いや、友を裏切ることはできんっ! 」

「そう言うと思ったよ! そんなカイルを気に入ったのだから! しかしこれで戦う他なくなったわけだな   」

「そうだな、ドレアよ! 」

 この言葉を、境にドレアは戦闘態勢に再び入った。
 そしてそれを感じた俺も遅れまいと向かい合う。

「行くぞ、カイル! 殺す気でこい! 」

 その黒い鎧を身につけている悪魔は、常軌を逸している速度で向かってきた。

 そして俺は引き続き神級のエーテルバフを纏い、同じく彼に向かっていく。

 このままだとドレアと衝突するはずだが、彼の鎧からニュウっと伸びている影の刃、さっき俺を突き刺してきた影達がその前に直撃する。

 だがさっきと同様、雷のエーテルバフの特徴は『速度』だ。
 それも俺のそれは神級に匹敵しているはず。

 幾億もの影の刃も目前! 
 しかし全ての刃を紙一重に避ける。
 よし、問題なく対応できてるな。

 それに追いつくようにドレア自身と接触する。

 手と手を組み合い、一瞬力が拮抗した。
 が、すぐお互いが同時に腹部を蹴り飛ばし合う。
 そして各自飛ばされたことで再度距離開いた。

 次いで時を移さず、距離を詰める。
 今度は正面から拳を交わし合う。

 物理的な攻撃ではほぼ互角。
 なんとか魔人化に対抗できている。
 だが、手数の多さでは向こうが1枚上手。
 この攻防に加えて、影の刃も突き刺してくる。
 さすがにこの均衡も長くは続かなかった。

「グハッ!!  」

 この流れを壊したのは、魔人化したドレアの一撃。
 やはり手数の多さで勝負は決まっていた。

 俺は影により右大腿を貫かれ、動きが鈍ったところをドレアにぶん殴られた。
 それにしてもかなりの距離飛ばされたな。

 それでも彼は攻撃の手を緩めない。
 またも距離を詰めてこようとしている。

 ドレアの表情、あれは戦いを楽しんでいるような顔。
 恐ろしいほど満面の笑みだ。

 このままじゃ殺される――っ!
 
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