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4章 ナイトフォール編

ミアVSレイズ①

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 あの弟くんはこちらを見るなり、
「なんだ、その炎の塊は?  」

 どうやら魔族は精霊というものを見たことがないらしい。

 精霊って普通の人には見えないんだけどね。
 でも見えないといっても、その人からして何も見えていないというわけではない。
 例えば、イフリートであれば私が見えているのは精霊としてのイフリートで会話もできるが、一般的な人が見ると、話もしないただの炎の塊に見える。

 もちろんシルヴァンディアでは精霊魔法というものに理解があるため、その属性の塊を見ても、「きっと精霊なんだろうな」ということが分かるが、魔族からしたら本当にただの塊に見えるのだろう。

「これ、精霊魔法っていうの  」

「へぇなんか聞いたことあるな。 じゃあ君にはそれが精霊として見えているってこと?  」

 この子、見たことないにしては理解が早い。

「うん、そうだよ  」

「へぇそうなんだ  」

 気のせい?
 あの子、今笑ったような。

「その精霊、イフリートって言うの?  」

「え? そうだけ……  」
 (ミア! 言ったらダメだっ! )

「闇魔法【  オーバーロード  】」

 彼の手から放たれる闇のエネルギーが具現化して、こちらへ向かってくる。

 (ミア! 避けるんだ! )

「え、うん! 」

 私とイフリートは別々の方向へ避けた……が、その闇は私ではない方へ狙いを定めている。

 なんで……。
 狙いは私じゃないの?

 (ミア! 一旦俺を解除しろ! )

「精霊魔法【  解  】」

 そうして、イフリートは炎に包まれて元の居場所へ転移していった。
 あの闇、そんなに危ないものだったの?

「ふふっ! ムダなのにね  」

 その闇はイフリートの炎と共に消えていった。

「あなた、さっきの何? 」

「じきに分かるよ  」

 すると、さっき解除したはずなのに、イフリートの気配と共に本体が目の前に現れた。

「イフリート……?  」

 (――――――――。 )

 返事がない。
 いつものイフリートの目じゃない。
 なんでいつもあなたが敵に向ける目を私に向けるの?

「イフリートこっちだ、こっちにこい!  」

 弟くんがイフリートを呼ぶと、彼は私に背を向けて、あっちに向かっていく。

 ここまで来れば、いくら察しの悪い私でも気づく。
 イフリートは操られているんだ。

「そろそろ君も分かったと思うけど、僕の闇魔法は物質を支配することなんだ。 それは僕が物だと本気で思うもの全てが対象さ。 つまり人間も精霊も例外じゃない  」

 春陽さんも言ってたけど本当だったんだ。
 魔族はイカれてるやつが多いって。

「イフリート……くっ! 精霊魔法【  解  】」

「ハハッ! もうこの物体の所有権は僕なんだ。 君じゃこの炎の塊を消すことはできないよ。 イフリート、目の前の女を消し炭にしろ    」

 (――――――――――。 )

 イフリート……。
 言葉こそ発していないが、彼とは長い付き合いだし、見るだけで何を思っているのか何となく分かる。
 苦しいんだね、ごめんね。

「水神級エーテルバフ発動! 」

 今までの魔力ならできなかったけど、春陽さんのおかげでできるようになった。
 水エネルギーを極度に高めたものを身体全体に纏う。
 そして、そのエネルギーを自在に操ることもできるはず。

 (――――――――――。 ) 

 水は危険だと本能で分かるのか、イフリートはそれ以上近づいてこない。

「ふぅ……。 このエーテルバフがある限りイフリートはきっと近づいてこない  」

「ちっ! 使えねぇ精霊。   しかしおねーさん、まぁまぁの魔力量だね。 僕もちょっと本気で行こうかな  」

 途端、彼に闇の魔力が集まり始め、それが身体を覆い始めた。
 これが私たちでいう闇のエーテルバフのようなもの?
 ……いや、もっとおぞましい。
 身体を纏っている闇エネルギーは、ただ纏っているだけではなく悪魔の形を模していた。
 さらに魔力量も比じゃない。

「魔人化。 上位魔族にしかできない芸当さ  」

 聞くからにヤバそうな名前。
 ただえさえ精霊が使えない状態だし。
 このエーテルバフでどこまで対応できるか……。
 

 
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