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4章 ナイトフォール編

この街のギルドは…

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 やはり街に入ってからも街灯は少なく、不気味だ。
 さらには、その住人らしき人達もなぜか黒ベースの衣類を着ており、それがより暗さを引き立たせている。
 中にはフードを被っている人もいるがなぜだ?
 顔が見られてはいけない理由でもあるのだろうか。

『ねぇねぇ、どこに向かうの? ねぇってば! 』
「春陽、早くその球体静かにさせてよ! さっきからうるさいんだけど! 」

 俺からしたら2人ともうるさい。
 ちなみにその球体とは、以前アークスカイで購入した『クリスタルボール』のことだ。

 じゃあなぜ急に話し始めたか?

 それはミアの魔法によるものだ。
 たしかに彼女は「いい魔法があるんです」と言っていた。
 そしてその通りだとは思うのだが、まさかこんなにお喋りさんだったとは……。

 通信連絡用小型妖精、通称『ピクシー』

 これがこの話す球体の正体なのだ。

 どうやらこの妖精そのものは霊体であり、呼び出すだけでは機能しないらしい。
 つまり何か物体に宿り、それを通信媒体へと変化させるようだ。

 そこで目に付いたのが、このクリスタルボール。
 大きさもそこそこで持ちやすく、みんな共通で持っているから丁度いいねと話がまとまった。

『主人とカイル氏はこの街のこと、宿について、あなたはシャドウバレーについて、分担して聞き込みするんでしょ? それなら早くどこかお店に入ったほうがいいよ!! 』

「ま、まぁそうだな  」

「えっ! 春陽、球体の言うこと聞くの!?  ボクやだよぉ 」

「仕方ないだろ。 実際正しいこと言ってんだし  」

 そう、少し口うるさい球体だが、基本的にマトモなことを言っているのだ。
 このピクシーと話し始めて30分程度経つが、いつも正しいし、もう全て従ってみようかなとも思い始めてきた。

「えっと、それじゃあここに入るか? 」

 ちょうど目の前に『冒険者ギルド』という看板が建物の頭付近に大きく横文字で設置されている。

「え~なんかボロいけど大丈夫? 」

『あなた神様でしょ? そんなこと言うもんじゃないよ?  』

「え、本当なんなのこの球体……  」

『それと球体じゃなくてピクシーだし。 そろそろ覚えてね  』

「ムキィィィッ!! 春陽! もう行こっ!! 」

「え、あぁ……  」

 神様が妖精に論破されてる。
 このピクシーの言葉、正論すぎて言い返せないんだよなぁ。

 ティアはちっちゃいし、ピクシーは球体のため、結局俺がドアを開けることになる。

 ガラガラッ――

「マスター!!! 酒持ってってくれ――!! 」
「こっちの席にも頼むっ!!!! 」

「はいはい~! 飲みすぎて暴れるんじゃねーぞ! 」

 外観も大きかったし、中も広いだろうなぁと思っていたが、かなり広い。
 入って左半分はテーブル席がいくつもあり、それぞれお酒や食事が提供されている。
 まるで居酒屋の光景だな。

 もう半分は当たり前だが、『ギルド』って感じだ。

 すると、ティアが耳打ちしてきた。
「ねぇちょっと春陽……。 怖い人ばっかり。 ここ出ようよ  」

 周りに聞かれたくないようだしと俺も耳打ちで、
「いやいや、見た目だけじゃなんとも言えないだろ。 いい人だってきっといるよ  」

『いやいや、君たちここへ何しに来たの? シャドウバレーのこと聞きに来たんでしょ? 』

 そのピクシーの声にギルド内の人々は一斉にこちらへ目を向けた。
 そりゃそうだ、こんなに騒がしかった場の音量をはるかに凌ぐ大きな声だった。

「おい、兄ちゃん。 見たことねぇが、よそ者か? 」

 ここにいる全員チンピラのような顔をしているが、一際目立った風貌の男が声をかけてきた。
 これだけ顔に傷跡があるのはこの人くらいだろう。

「はい、今日ここに着きました  」

「じゃあさっきの言葉が厳禁なのも知らねーよな? 」

 なんだ、さっきの言葉って。
 まぁおそらく思いつくのはひとつしかないが。

『それはシャドウバレーのことだね!きっと!  』

「ちょっと球体――! 厳禁なんだってば――! 」

「はぁ……。 兄ちゃん、一度は俺だって許そうとしたんだぜ? わりぃが二度は許せねぇよな、お前ら! 」

 ガタッ――

 この男がそう叫んだ瞬間、座って酒を飲んでたやつ、掲示板でクエストを探していたやつ、仲間と会話していたやつが全員近づいてきた。

 お前らってこんなにいるの……。
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