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4章 ナイトフォール編

代償

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 闇の精霊との戦いから3日。
 未だミアは目覚めていない。

 あの戦いが終わった直後、ミアが倒れた。
 倒れたミアから突然魔力を感じられなくなったが、昨日になってようやく魔力を取り戻したみたいでよかった。
 そう安堵していると、イフリートが突如ミアの身体から出てきたのはびっくりしたな。
 それも彼女が起きてから説明せねば。

 イフリートの話からすると今日中には目覚めるらしい。
 ということで俺は今、ミアが眠っている部屋にいる。
 決して彼女の寝顔を見にきたわけではないし、手を出そうとしているわけでもない。
 なぜか知らないが、イフリートには(ミアのことは頼んだ。 しかし手は出すなよ )と言われたが、あいつはミアのお父さんみたいな存在なのだろうか。

 俺が住んでいた日本には王子様のキスでお姫様が目覚めるなんて話があったが、今がその時なのではないか。
 だめだ……。3日も心配し続けて頭がアホになっているのかもしれない。

「しかし、キスか……  」
 あ、つい独り言が口に出てしまったが、この部屋に誰もいなくてよかった。

「んっ…… 」

 うおっ!びっくりした。
 さっきまで閉じられていたミアの目が少しずつ開かれる。
 そしてその眩しそうな彼女の細めた目を目が合った。

「……あれ、春陽さん? なんで私眠って……あ、そっか。 ミッドナイトと戦って…… 」

 よかった。記憶もしっかりしているようだ。
 
「ミア、3日も眠っていたから心配したぞ 」
 実際イフリートが出てくるまで、心配しすぎて頭おかしくなりそうだったし。

「ごめんなさい、心配かけて。 でもミッドナイトも倒したし、これでナイトフォールに連れてってもらえますねっ! 」

 こんな時まで自分の体調ではなく、俺たちの旅のことを考えてくれている。
 そんな無垢な笑顔を不意に見せてくる彼女には、またもドキドキさせられた。

「あぁ、ありがとう。 でもまずはミアの体調を治すのが先だからな 」
「へへっ。 ありがとう、春陽さんっ! 」
「なら休みついでに少し話いいか? 」
「ん? いいですよ? 」

 ミアにはこの3日間、起きた話をする必要がある。

「まず、昨日ミアの身体からイフリートが出てきた 」
「……うん 」

 あれ、何だか知っていたかのような反応だ。

「知ってたのか? 」
 俺がそう聞くと、ミアは静かに頷いた。

 どうやら説明はいらなかったみたいで、彼女の夢にイフリートが出てきたようだ。
 そして彼から聞いた内容は2つ。

 1つはイフリートを含む精霊を無詠唱で呼び出すことができるようになったこと。
 これは、もうすでにミッドナイト戦で明らかになっていたから問題ない。

 そしてもう1つ、マナフュージョン使用後の代償について。
 これは俺もイフリートから説明を受けたし、目の当たりにもした。

 それは使用後、2日間は体内の魔力が消える。
 この場合、枯渇するとは意味が違うようだ。
 じゃあどこに消えるか、それはマナフュージョンした精霊へ送られ、彼らはその魔力を使って実体に戻るらしい。
 やはりマナフュージョンとは精霊側にも負担がかかるらしく、使用後は実体を維持できずそのためには主人の魔力がいるとのことだった。

「つまりマナフュージョンは大事な時にしか使えないってことですね……  」
 少し残念そうに顔を俯いているが、無詠唱であんなに強そうな精霊を呼び出せるだけでも十分だと思う。

「その時になったら頼らせてもらうな 」
 そう言うと、ミアは顔をあげ、俺の方を見るなり
「はいっ! 任せてくださいっ! 」
 嬉しそうに頷いて見せた。

 実際、ダークオーダーとの戦いでは必要になると思う。
 だからミア、とても心強いよ。

 しかしイフリート……。
 彼女には2つの説明で、なぜ俺には3つ説明した?
 彼にも伝えたいタイミングがあるのだろうか。
 そういうことなら俺は黙っておくことにしよう。

 ガチャッ――

「回復したそうでよかったわ 」
 ノックをせず入ってきたのはアリア様だった。
 しかしこの家の持ち主は彼女なのだから文句は言えない。

「はい……。おかげさまで体調も戻りました 」
 そしてアリア様は彼女に近づくなり、被っていた布団を剥ぎ、身体を見渡した。 

「ふぇぇっ!? 」
 ミアは薄めのキャミソールで胸元は強調されており、さらに下はショートパンツという露出度が高い服装だった。
 急いで胸元を隠そうとするも、下半身の露出も気になり、どっちを隠せば良いか分からなくなっている。

 そんな彼女を見て、アリア様は
「ふむふむ、3日ってところか 」
 その言葉の真意が分からなかったため俺は、
「アリア様、それはどういう……? 」
 そう聞き返したが、
「出発だよ! ナイトフォールへの! 」
 彼女は間髪いれず、満面の笑みでそう答えたのだった。
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