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3章 空中都市編

悲劇

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 魔族を圧倒させるイメージをしながら魔力を取り込んだ。
 すると、詳細な映像として脳に流れてくる。

「……いや、確かに可能かもしれないが、リスクもあるな 」

 その映像では魔族と対等に……いや、寧ろ圧倒的優位な戦闘を繰り広げている。

「こればっかりは今試せそうにない…… 」

 今手にしたイメージは今後、魔族との戦いでおそらく必要になってくるものだった。
 仮に今は『闇の力』とでも名付けようか。

 ぶっつけ本番になるとは思うが、最終手段として頭の隅に置いておこう。

「はぁ……。 ちょっと疲れた。 俺も寝るか 」

 こんなに明確なイメージができたのは初めてだし、それを2回も今日は行った。
 思ったより脳が疲労したのかもしれないな。

 そうして俺は寝室に戻り、眠りにつくのだった。


 ◇


 今日は皆、起きて準備出来次第この宿に集まり、その後スカイタワーへ出向くつもりだ。

「春陽! 早く顔洗って準備しないとっ! 2人とも外で待ってるよ? 」

 そう、俺はしっかりと寝坊した。
 昨日色々あって疲れたってのもあるが、やはり魔力を取り込んで明確にイメージをするというのは疲れるらしい。
 戦闘中はあまり気にしなかったんだが。

「ああ、ごめんな 」
 ぽかぽかと叩いて急かしてくるセレスティアを適当にあしらいながら、急いで準備をした。

 猛烈な勢いで宿屋を後にし、外の2人と合流したが、遅刻したことを全く気にしていない様子だ。

「おおっ! 春陽おはよう! 少し早く来すぎたようだなっ! 」
「春陽さん、おはようございます 」
「ごめんな、寝坊して 」
「ああ、そもそも時間なんて決めてなかったからなっ! 」
「はい……私達が早く来すぎただけなので 」

 2人がいい人すぎて申し訳なさが強くなる……。
 とは思うが、今日の目的はノクティス様に話の続きを聞きに行くことだ。 

「ありがとう、 まぁ遅れた俺が言うのもなんだけど、スカイタワーに早く向かうか 」
「ははっ! 申し訳なさそうにしている春陽もいいもんだなっ 」
「ぷっ。 ちょっとカイルくんっ! 」

 カイルには爽快なイジりをされ、ミアに関しては思わず吹き出してしまうほど笑われた。

「ボクはちゃんと起こしたのになぁ~ 」

 一緒になってこの神までイジり始めてきた。

「ほ、ほら! 早く行くぞ! 」
「春陽さん、また話逸らした 」
「ミア! そんなこと言うな! これが春陽なのだ! 」
「2人とも、イジりすぎだよ、二ヒヒッ 」

 カイルは天然で言っているのだろうが、セレスティアに関しては悪意のあるセリフと笑い方をしている。
 よし今日は彼女を身動きできないよう掴んで、ノクティス様にお土産として献上しよう、そうしよう。

 そんなこと思っている間にスカイタワーへ到着した。
 今日の目的はノクティス様にナイトフォールへの行き方と魔族の住処であるシャドウバレーに続く転移門の場所を聞くことだ。

 エレベーターに乗ったが、相変わらず22階とは長いな。
 チンッ───
 やっと着いたか。

「ノクティス様、おはようございます。 今日は話を……!? 」

 部屋が昨日と違う
 それはまるで泥棒がきたのかと思うほど荒らされており、本棚は倒れ、ソファも大きく位置がズレている。
 そして昨日と違う部分がもうひとつ……。

「あれ、無重力は!? 」

 元々スイッチか何かで作動していたのか、昨日のような無重力空間はなくなっている。

「ほんとだ! 浮かないぞ!! 」
「……待って、誰かいる 」

 初めにミアが気がついた。
 そこには2人いる。
 1人は横たわり、もう1人はこの前に立っていた。

「……!? 兄さん!! 」

 突然のことで頭がついてこない。
 その場に横たわっているのは正真正銘ノクティス様だ。
 セレスティアは急いで兄に駆け寄っていく。
 そしてその前に立つものには全く身に覚えがない。
 10歳くらいの男の子だ。
 だけど彼にはドラゴンのような翼、悪魔のような角があり、肌も青白く明らかに人ではないことを物語っている。

「はぁ……。 こんな攻撃で死んじゃうなんて、ノクティス弱くなったね~。 ボクはがっかりだよ。 さて息絶えたようだし、帰るとしますかっ 」

 彼から感じる魔力はあの第二席ゾルガン以上だ。
 だが、昨日魔族と戦うイメージはつけた。
 だからこそかあの時ほどの恐怖は感じていない。

「おい、お前誰だ! 」

 よし、声は出た。
 身体も動く。
 戦う覚悟だってできた。

 だけど、やつはこっちを見ようとしない。
 それどころかノクティス様に駆け寄ったセレスティアにさえ目もくれずにいる。
 まるで見えていないかのように。

「さて、ここでの用事も終わったな 」

「くそ……逃がすかっ! 」

 聞こえていないにしろ、攻撃は当たるはずだ。
 最速で蹴りを喰らわしてやる。
 そういう勢いで近づいたが、やつはゾルガンの時同様、身体全体に纏った闇に飲まれ姿を消した。
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