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2章 魔術対抗試験編

謎の男再び

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 炎神級魔法【  ディヴァイン・イグナイトノヴァ⠀】
 この魔法を止めるには、単純に考えると、水魔法を使うのが早いだろう。
 しかし俺は今ここで新しい魔法を使うことができない。
 それは、空気中の魔力が取り込めないからである。
 空気中の魔力には魔法に必要な魔力量を蓄えることができるという意味が大きいが、それだけでなく多大な情報量が込められている。
 俺が今まで必要な相手に対し、適切な魔法が発動できたのは、取り込んだ魔力が情報として俺に最適解を教えてくれていたからである。
 つまり俺は現在魔力を取り込めないわけで、新たな情報を得れず、今まで覚えた魔法で乗り切るしかないのだ。

「この魔法は必中ですよ。 どうするつもりですか? 」
「どうするもこうするも俺に選択肢は多くない 」
「……というと? 」
「突っ込む! 」
 俺は今まで纏っていた無属性のエーテルバフを炎に転換した。
 普通炎に対して水が有効と思うが、現状俺は水魔法の使い方が分からない。
 ならもう1つ有効な方法、それは目には目をというやつである。
 つまり炎には炎ということだ。
 神級の炎に勝てるかは定かでは無いが、一瞬なら突破できるんじゃないかという浅はかな考えである。

「グダグダと考えとらんと早く行け! 」
 ドンッ───
「痛ってぇ! 」
 ライラの強い蹴りである。
 その勢いに乗って俺は炎を纏いながら、神級魔法に包まれている先の通り道に突っ込んだ。

「通させません! 」
 ケビンは青い炎を操り、俺へ矛先を向けてくる。
「もう少しで通れる…… 」
 のにも関わらず、青い炎に囲まれた。
 そしてその熱が伝わってくるが、おそらく俺の纏っている炎と明らかに純度が違う。
 それを喰らうとただでは済まないということだけは今の俺でも分かるのだ。
「くそっ! もう少しだってのに! 」
 逃げ場を塞いできたディヴァイン・イグナイトノヴァはもう俺に直撃する寸前だ。
 ダメ元で出口へ飛び込むがおそらくあと一歩足りない。
 何か一つあれば届く距離にあるが、届かないのが現実。
 大人しく炎に喰らわれる覚悟を決めた時、
「だから早く行けと言ったろう? 」
 誰かに強く蹴られ、その勢いで通り抜けることができた。
 その誰かとは言うまでもない、この場にいる一人。
 もちろんライラである。
「ぐあぁあぁぁぁ!! 」
 魔法を喰らったライラの悲痛な叫びが聞こえてくる。
「ライラァ!! 」
「こんなくだらん魔法には屈さぬ! お前はミアの心配でもしていろ! 」
「……悪い、先に行く! 」
「……ふっ。 それでいいのだ 」

 俺は先へ進んだ。
 空気中の魔力を使えなければ俺は如何に使い物にならないかよく分かった。
 結局ライラの好意に助けられてばかりだった気がする。
 あいつには返せないほど大きな借りができた。
 ……いや、その分ミアを助けるんだ。
 そして俺は通路を進んだ。

 通路を抜けた先に、目的の人物がいた。
「ミア!! 」
 どうやらミアは気絶しているようだ。
 ミアの横には大柄の男が立っていた。
 黒いローブに黒いフード、顔は白い仮面で隠してある。
 以前にも同じ特徴をした男と会ったことがある気がする。
 ……!?
「お前、前もミアを攫った男か? 」
「ほぉ、よく覚えていたな。 しかしお前からはあの時のような強さを感じられないな 」

 ギルド認定試験の日、ミアを攫った大男だ。
 あの時とほとんど同じ格好をしている。
 しかし、なぜこの男がここにいる?
 この地下演習場って転移でしか入れないのでは?

「お前のその顔、なぜこの俺がここにいるのか不思議で仕方ないようだな。 そうだろう? 」
「……ああ、どうしてここにいる? 何が目的だ? 」
「そんな一気に聞いてくれるな  」

「まずどうやって来たか、だが、ミア・ローズの精霊魔法を使った 」
「……言ってる意味が分からない 」
「精霊魔法ってのは精霊を創り出すものではなく、呼び出すものってことだ。 つまり精霊の場所と呼び出すタイミングさえ分かればそれに合わせて召喚場所まで移動できる。 俺はそれを利用した! 」

 どうやらやつはミアが発動した精霊魔法で呼び出した精霊と共にここへ転移してきたようだ。
 つまり計画性があるという可能性が出てきた。

「……とにかく俺の邪魔をするな 」
「邪魔……? 何をするつもりだ? 」
「ミア・ローズとセリア・ウィンドウィスパーの抹殺だ 」

 ……!?
 耳を疑ったが、聞いたことがある名前が2人出てきた。
 しかもその2人を殺すだって?
 
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