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2章 魔術対抗試験編

史上最強のモンスター

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 試合開始の合図がなされたが、俺とセラフィックドラゴンは互いに静止している。
 俺のことをそもそも敵として認識していないのか、全くこちらを向いていない。

 『舞台では静寂が続いております。 どうやら《セラフィックドラゴン》は戦闘態勢に入っていないのか??   春陽選手に一切意識を向けていないようです!!!』

 それはそれでショックだけどなぁ……。
 まぁ少し相手の反応を見てみるか。

 俺はヤツと同じように、空気中の魔力を目いっぱい身体に取り込んだ。
 自分と同種となると、あのモンスターも反応せざるを得ないだろう。

 『ようやくお互いが向き合う状態となったァァァ!!! さらに《セラフィックドラゴン》、臨戦態勢に入ったのか、険しい表情となっているゥゥゥゥ!!』

 よし、思った通り。
 ようやく俺を敵として認めたか。

 (お主、人間か? 魔力を取り込んだように見えたが…… )

 ───!?
 取り込んだ魔力からヤツの言葉らしきものが伝わってきた。
 (そうだよ、どうやら俺には空気中の魔力を使うことができるみたいでな  )
 俺は同じく魔力へ言葉を込めてみた。

 (ほう、面白い人間だ。 我は遥か昔、神龍と言われていたものだ。 今はもうとっくに命を落とし、《セラフィックドラゴン》と人間に呼ばれておる、ただのクローンらしいがな  )

 同じ仕組みで返事が返ってきたということは伝わったのだろう。

 (自己紹介どうも。 俺は高橋 春陽だ。 別の世界から来た! ここはギルドの試験会場で、合格するにはあなたを倒さなきゃいけない。 戦ってくれるか? )

 (うむ、我もお主の力に興味がある。そちらから来て良いぞ  )

 来て良いか……。
 いかせてもらうが、どんな魔法を効く気がしないんだけど。
 とりあえず試しにいつものいくか。

「重力魔法【⠀ハイグラビティ  】」
 俺が今まで得意としてきた魔法だ。

 『静寂の時間は終わり、遂に戦いの火蓋は切って落とされたァァァ!! 春陽選手!ここでまた珍しい重力魔法を唱えたが、《セラフィックドラゴン》はピクリともしていないィィィ!!!』

 (なんだ? その程度か? )

 どうやら全く効いてないみたいだ。
 続いて、『螺旋魔法【⠀ヴォーテックス・ツイスター  】』

 古代遺跡のゴーレムを捻り倒した魔法、これも同様。
 ビクともしない。
 やはりとんでもない化け物だ。

 ……となると、新しい魔法を考えなくちゃならん。
 そういえばヤツの周りの魔力、聖属性の魔力らしいなぁ。
 これは取り込んだ時にそう感じたのだ。
 今思うと、魔力には多大な情報量が込められてるんだろう。
 いつも取り込むだけで属性魔法の生み出し方や魔法名などポンッポン浮かんでくるし。

 色々考えても仕方ないし、聖属性に対応出来る魔法を使うか。
「闇魔法【⠀ダークバインド  】」
 闇属性の魔力で頭上に大きな輪を形成し、神龍に解き放った。
 試しに拘束する類の魔法をイメージした。

 『一体、春陽選手は何種類の魔法を使用できるのでしょうかァァァ!!!!  もう何が発動されても驚きはしませんッッッッ!!   おっと《セラフィックドラゴン》闇は相性が悪いのか、空中で大きく旋回し、技を避けたァァァ!!  しかしあの闇の輪っかは敵を逃がさないようだ!!! 追尾しているゥゥゥゥ!!!!』

 念のため、聖属性追尾効果を付与している。
 空中を旋回している神龍に対して、俺が放ったダークバインドは少しずつ追いつこうとしていたが、危機感を感じたのかぐるっと旋回し、魔法と向き合う形となった。

 『追いついたダークバインド、直撃なるか? 』

「キャイィィィオォォォォ───」

 神龍の破壊的な金属音により、ダークバインドが一瞬で吹き飛んだ。
 最初からそうすれば良かったものを。
 しかし神龍と言えども闇を喰らえばマズイようだ。

 (さすが、神の加護を得たものよ……)

 神の加護?
 久しぶりに聞き慣れない単語がでてきた。

 (その様子、分からぬようだから敢えて答えるが、お主の無尽蔵な魔力は神が与えてくれたものぞ。 どの神かまではわからんが  )

 この神龍意外と親切なようだ。
 俺の意図を汲んでくれるとは。
 とりあえず俺の魔力が無尽蔵な理由は分かった。
 どの神の加護か、それは後々だな。

 (セラフィックドラゴン、教えてくれてありがとう。 戦いはまだ続いてるけど、どうする? 見た通り俺は、これ以上に強い闇魔法を放つことができるが  )

 (そうだな、次の一撃で全て決めるか?  お主の全力の闇魔法我に放ってこい! それが決まればお主の勝ち、止めれば我の勝ちでどうだ?  )

 この神龍やはりいいやつなのでは?
 そして男気のある決着を望んでいるあたり、カッコイイモンスターじゃないか。

 (よし、のった!! )

『再び会場に静寂が続いております! そして両者向き合い、立ち止まっているゥゥ! ……と思えば春陽選手が動き出し、魔法を発動しようとしておりますゥゥゥゥ!!!  』

 俺は全力で魔力を集めた。
「いくぞ、神龍様よ! 闇魔法【  アビスカース⠀】」

 放った魔法は、闇の魔力で出来た巨大な竜巻となり、神龍の元へ向かっていく。
 それは神龍へ向かいながらも空気中の魔力を取り込みながら、まだまだ大きくなっている。
 これはヤツに届くまで無尽蔵に大きくなっていく。
 この魔法を無効化されたら俺の負けだ。

 (見事だ、人間……いや、春陽。 )
 神龍はそう言うと、すぐに聖属性の吐息ブレスを吐いて現時点イメージできる最強であろう闇属性魔法をかき消してきた。
 ……あ、そうか、俺の負けか。

 (そう肩を落とすな。 最強技【⠀ホーリーブレス  】を使わなければ、負けていたのは我だった   )

 (それでも俺の負けだ……  )

 (では、こういうのはどうだ?)

 神龍はそう言って姿を消し……!?
 いや、目の前にいる!

 そう思った時にはもう遅く、ヤツは俺の懐辺りだろうか?だいたいその辺りへ吸い込まれるように俺の体内へ侵入してきたのだ。
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