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2章 魔術対抗試験編

レオンの実力

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 エレナの活躍により会場の盛り上がりが絶頂になっている状況で、4番目の挑戦者がBランクモンスターに敗退しているところを誰も見てはいなさそうだった。
 待機室で俺は見てたよ、ナイスファイト。

 そして5番目、モブリーダーのレオンだ。
 今まで散々モブモブと思ってきたが、一応装備も綺麗に整えているし、顔立ちも3人ともそれなりに整ってはいる。
 魔力量だって多いし、そのリーダーなわけだからおそらくまぁまぁ強いだろう。
 しっかり最後まで試合を見ててやるぞ、レオン。
 ……っとレオンの方を見ると準備をせずに座って、口が空いたままポカーンとしている。

「おい、レオン。 お前の順番だぞ! 」
 俺がそう声をかけると、
「………………」
 こちらを見てくるも、完全に無視だ。
 さっきまであんなに強い物言いをしていたため、気持ちが悪い。

 『さぁ気を取り直して5番目の挑戦者、レオン選手!! 彼はどこまでか勝ち残ることができるのか!! まずはCランクモンスター《シャドウワーム》ですが、どのような技を…… レオン選手?  何やら手を挙げて何か仰っています!  』

「俺にもSランクモンスターを出せ!  」

 モニター越しでもしっかり聞こえたその言葉。
 先程のエレナに対抗しているのだろう。
 やつはとてつもない負けず嫌いのようだな。

 『そ、そう言われましても実力の順に倒して頂くという決まりでして…… 』

 やはり高テンション実況者でも困っている。

「はぁ……。 わかった。 速攻で終わらす。 炎中級魔法【  インフェルノブレイズ⠀】」

 レオンはそう言ってシャドウワームを灰の如く燃やし尽くした。
 やはり彼にとってあの程度は朝飯前のようだ。

 『レオン選手!! 気を取り直して、Bランクモンスターを倒して下さいました!! その調子で倒していけばもちろんSランクモンスターと戦えますので頑張って下さい。』

 さすが大口を叩くだけあって彼の実力は仲間の中でもトップクラスのようだ。
 Aランクモンスターに対しては炎上級魔法【  メテオストーム⠀】を発動し、空中から炎の塊をぶち当てるという荒業を見せてきた。

 いよいよSランクモンスターだ。
 だが、ファントムアビスはエレナが倒してしまった。
 換えのモンスターはいるのだろうか?

 『皆様お待たせ致しました! 2体目のSランクモンスターが出るなど異例の事態!!
 他にSランクモンスターがいるのか? そう心配されてる方もいるでしょう!!  実はいるんです! 私もまさかこのモンスターの姿を見ることができるなんて思いもしませんでした!! では登場してもらいましょう!!! 昔この地に存在したといわれる《フロストフェンリル》ですゥゥゥゥ!!!』

 闘技場の門からそいつは現れた。
 象なのかと思わせる大きさで、名前の通り氷を全体に纏っている狼といった印象か。
 ファントムアビスとはまた違う雰囲気を漂わせている。

 フロストフェンリルは闘技場中を吹雪状態にし、まるで自分の居場所だと言わんばかりに佇んでいる。

 『この状況レオン選手はどうするゥゥゥゥ!!』

「相性が悪かったな、氷の狼よ。 俺は炎聖級のエーテルバフを習得している! 」

 正直この世界に来てまともな魔法を見たことがない。
 先程からの中級上級とかもゲームや漫画の知識でなんとなく分かるが、聖級とかはよく分からん。
 そしてあいつが言ったエーテルバフってなんだ?
 モニター越しから見たレオンは、炎のエーテルバフと唱えた直後、身体中に炎の魔力を纏い始めた。
 どうやらエーテルバフとは、扱う属性の魔力を纏う力らしい。
 つまり属性魔力を纏った状態で近距離攻撃や防御を行うことで数段強い力を発揮できるといったところか。

 『なんと! 聖級のエーテルバフが使えるようですゥゥ!!!  さらに《フロストフェンリル》は氷属性のため、炎は相性抜群!!! レオン選手!!運をも引き寄せているのかァァァ!!』

 ここからはレオンとフロストフェンリルの激しい攻防が続いた。
 炎の魔力を纏ったレオンは、フロストフェンリルの攻撃を凄まじい反射速度で避けつつ近接攻撃をカマしている。
 対するフロストフェンリルは氷属性の遠距離攻撃、近距離攻撃と工夫して攻撃するも、レオンの身に纏っている炎のせいで届く前に溶けてしまう。
 現状レオンが有利だ。
 均衡を破ったのは、レオンの炎聖級魔法【⠀ブレイジングサン  】だ。
 太陽のような高温エネルギーにより、人工的な晴れを作り出し、闘技場全体を熱帯地域とした。
 それにより、フロストフェンリルは動きが鈍くなり、防戦一方となる。

 『ついに……フロストフェンリルが倒れたァァァ!! フロストフェンリルとの攻防が始まって30分ほど経過しております!! 非常に長く辛い戦いでしたが、ついに決着!!勝者!レオン選手ゥゥゥゥ!!!前代未聞、本日2人目のSランク冒険者誕生です!!!  皆様、再び大きな拍手を!!!』

 レオン、Sランクモンスターを倒すとはなかなかの実力なのだろうな。
 やつが終わったということは次は俺だな。
 さて準備して闘技場に行くとするか。

「主様!! 頑張ってね♡ 」
「ああ、ありがとう!  」

 そうエレナと言葉を交わした俺は待機室を出て、闘技場へ繋がる通路へと出た。
 ここを真っ直ぐ行くと、試験会場に着くだろう。
 俺が闘技場へ向かっていると、待機室に戻るであろうレオンとすれ違った。

 レオンはすれ違う直前に立ち止まり、
「Sランク冒険者になったぞ! あの娘が強いのはよく分かったが、俺が勝敗を決めるのはお前だ。 負けた時の約束覚えてるよな?   」
「ああ、なんでも言うことを聞く、だろ?」
「覚えてて偉いなぁ! 内容はもう決めてある! 」
「なんだ? 言ってみろ  」
「お前がSランク冒険者になれなかった時、あの娘のSランク冒険者登録を辞退させろ! 」
 レオンは圧倒的な自信に満ちたような表情で笑っている。

 エレナは冒険者になりたいわけではないはず。
 しかし試験で勝ったときの彼女の笑顔は本物だ。
 レオンは自分が唯一のSランク冒険者になりたいがために、エレナの冒険者登録を辞退させたいのだろう。
 そんな自分勝手な理由でエレナの笑顔を奪って良いわけがない。

「なら俺が勝ったら、お前も冒険者辞めることだな。」
「ふんっ! じゃあ決まりだ! 」

 エレナの冒険者人生は終わらせない。
 そして彼女の笑顔も奪わせない。
 俺はレオンと話終わった後、闘技場の入口へと向かった。
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