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2章 魔術対抗試験編

古代遺跡

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 「……身体も回復したみたいだし、カイル君、そろそろ帰ろう  」

「だな!  ただの採取クエストだったが、あんなゴーレムいたらクリアもできん!  はははっ! 」

 どうやらカイルが起きる前に言っていた古代遺跡のゴーレムのことだろう。
 この世界に来てから空気中にある魔力が見えるようになったが、その人個人が体内で宿している魔力もなんとなく感じることができるようになったようだ。
 故にミア、カイル2人とも相当な量の魔力を兼ね備えていることが分かる。
 それなのに、ただの採取クエストに出てくる敵に勝てないというのは違和感があるような。

「……うーん、古代遺跡にそんな強いゴーレムいたっけなぁ?  」

 セレスティアは顎に人差し指を当てて、思い当たる節を探しているようだ。
 やはり彼女も俺と同じく違和感を感じているんだな。

「……皆さん、助けてもらったお礼……としては弱いですが、アルカナまで案内させてください  」
「そうだ! 一緒に行こうぜ!!」

 もちろんミアとカイルのそのお誘いには大賛成であり、エレナ、セレスティア2人を見ても俺と同意見のようだ。
 しかしその前にやることを済ませてからにしよう。
 そうしないとモヤモヤしたままアルカナに行くことになるだろうしな。

「そうだな、案内してもらおうかな。  でもその前にクエスト終わらせてからにしないか?  」

 すると2人は向き合い、そして同時にこちらを見つめてきた。
 その視線はまるで諦めていた夢が叶ったかのような煌めきをしている。

「……はい!!」
「おう!!」

 そして俺たちは、古代遺跡へと向かったのだった。

 ◇

 俺たちは古代遺跡の中まで来た。
 彼らは1度最奥部まで到達しているため、そこまであっという間の道のりである。
 遺跡内は等間隔で灯されている蝋燭のおかげで、お互いの姿が見えるほどには明るい。
 内部は広大な迷路のようになっていたが、魔術学院生2人の力によって壊滅的に攻略されていく。
 遺跡と聞いて少しわくわくしていたのにこれでは若干拍子抜けな気もする。
 そうしている間に目の前は最奥部の扉だ。

「……着きました。 この奥です。  」

「春陽、ゴーレムは強いぞ  」

 2人の空気は急に冷たくなり、その言葉からは緊張感が伝わってくる。
 そりゃさっき対峙した格上の相手がこの向こうにいるのだし、無理はない。
 だが俺は試したい魔法もある。
 2人には悪い気もするが、俺の気持ちは少し高揚し、心臓の鼓動が意気揚々と踊っているようだ。

「春陽なら大丈夫だよ! ボクもいるしっ!  」

「主様の活躍楽しみっ!  」

 おれの旅仲間たちは誰よりも気楽にしているようだ。
 いつもと変わらない2人の姿を見ると少し安心する。

「よし、みんな!  行こう!  」

 俺のその言葉を合図に、最奥部の扉が開いた。

 ◇

 ここが最奥部……。
 広い空間に壁一面何か意味がありそうな複雑な彫刻が刻まれている。
 部屋中央には大きな魔法陣があり、それによってゴーレムが召喚されたのか、動力源になっているのかそこまではわからないが、深く関係はあるのだろう。
 肝心のゴーレムだが、数十メートルもの大きさで全身に鉄なのか岩なのかで堅牢な装甲に覆われている。

「みんなで力を合わせるぞ!」

「よし、螺旋魔法【⠀ヴォーテックス・ツイスター 】」

 以前と同じだ。
 魔法をイメージするとその魔法名が頭に駆け巡る。
 その魔法は皆が動き出す前にゴーレムへ命中。
 そしてゴーレムの、その無機質な体が無惨にも捻れ、歪みながら崩れ去った。
 
 セレスティアはいつも通り、誇らしげに胸を張っており、エレナは子供のようにドタドタと足踏みをしながらはしゃいでいる。
「さすが、春陽だよ、!」  「主様、すごい♡」
 相変わらずの褒めようだな。

「……い、いち……げき……  」
 
 しかしミアとカイルは崩れたゴーレムの塊を眺めながら、言葉を失っている。
 そもそも俺はここの世界の強さという基準を未だ知らない。
 もしかして、これはやりすぎたのでは……。
 せっかく仲良くなれそうな人達に出会えたのに俺は加減を間違ったのかもしれない。
 これじゃゴーレムより俺の方が化け物だもんな。

「「……すごい!」」

「え?  」

「春陽!  何をしたんだ!?  見たこともない魔法だが、なんという魔法なんだ?  強すぎるではないか!! 」
「……えっと、感動しました。 魔術学院でも、そんなの見たことないです。  先生達もきっと驚きですよ。 」

 2人からの言葉はまるで嵐のように激しく、返事もままならなくなる。

「2人が急に黙るから、俺のことが怖くなったのかと思ったよ  」

「……そんな、助けてもらった人に恐怖を感じるわけないですよ  」

 ミアは微笑みながらそう答え、カイルはその言葉に「うむうむ」と頷いていた。
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