9 / 129
1章 エメラルドヴェール編
思わぬ登場人物
しおりを挟む
俺は高橋 春陽。
高校2年生にして異世界転生者であり、このエメラルドヴェールの英雄という扱いだ。
今俺は応接……じゃなかった、玉座の間つまり王様の部屋にいる。
対面には王様エルミンが座っており、その横に側近騎士且つ翠影の守護騎士団団長セリオン、さらには目の前のテーブルに神セレスティアがこちらを見ており、なぜか皆、疑惑の目をこちらに向けている。
そう、なぜか俺は質問責めに合っているのだ。
その理由は明白。
「もぉ~なんなのぉみんなこっち見てさぁ…… 主様《あるじさま》が悪いことしたの? 」
おれの隣で能天気に話しているこのお子様のせいだ。
こいつはエレナ・シャドウウィスパー。
お名前で察しの通り『魔族』だ。
こいつが俺の前に現れたのは玉座の間に初めてきた次の日、街を見回っていた時のことだ。
◇
外を見てみたくて城から出てきたけど、やっぱり昨日の今日だな。
あちらこちらで街の復旧作業をしている。
「大変そうだなぁ」
そうぼやくと、周りにいた人達は手を止めてこちらを見てきた。
頑張ってる人達にいらないことを言ったかもしれない……
申し訳ないなと思っていると、
「あれ、英雄様だ」「ほんとだ」「昨日はありがとよー!」「きみのおかけだ!」
思っていた反応と違う。
いつの間にか俺の周りには街の人々で溢れており、数え切れない感謝、尊敬の言葉が舞っていた。
改めてこの街を守れたこと、心からよかったと思えた。
少し街の皆と話をした後にその場を去った。
街をひと回りし、城へ戻っている最中、後ろからずっと視線を感じる。
振り向いて見ても何もいない。
わずかに感じる魔力の方を見ても姿は見えない……いや、なんかしっぽだけ浮いてる?
ちょっと引っ張ってみるか……
「い~やんっ♡」
おれがわいせつ行為をしたかのような反応をしながら姿を現した。
どうやら魔法か何かで姿を消していたが、しっぽだけ消せてなかったのだろう。
その姿はあらかた『魔族』で間違いない。
この街を襲ったリリスなんとかと似たような黒のドレスにローブを羽織っている。
それが『魔族』特有の正装というやつなのだろうか。
ただ比較をすると目の前のこいつは少し幼い。
見た目だけでいうと15歳くらいだろうか、中学生くらいに見える。
「ちょっと……そんなところ触るってことは責任とってくれるんだよね? 」
と言いながら目の前の『魔族?』はモジモジと照れている素振りをしている。
え、しっぽ触るって魔族界隈では求婚的な意味だったりするの?困るよ、おれ。
とりあえず話題を変えよう。
「そ、それより俺の後つけてたってことはなんか用事あるんじゃないの? 仲間の敵討ちとか? 」
「敵討ちだなんてぇそんなことしないよぉ 」
「じゃあなんだ? 」
「聞いてくれるの? やっぱり優しい♡ 実はね、魔族滅ぼしてほしいんだ! 」
「……ん? なんだって? 」
高校2年生にして異世界転生者であり、このエメラルドヴェールの英雄という扱いだ。
今俺は応接……じゃなかった、玉座の間つまり王様の部屋にいる。
対面には王様エルミンが座っており、その横に側近騎士且つ翠影の守護騎士団団長セリオン、さらには目の前のテーブルに神セレスティアがこちらを見ており、なぜか皆、疑惑の目をこちらに向けている。
そう、なぜか俺は質問責めに合っているのだ。
その理由は明白。
「もぉ~なんなのぉみんなこっち見てさぁ…… 主様《あるじさま》が悪いことしたの? 」
おれの隣で能天気に話しているこのお子様のせいだ。
こいつはエレナ・シャドウウィスパー。
お名前で察しの通り『魔族』だ。
こいつが俺の前に現れたのは玉座の間に初めてきた次の日、街を見回っていた時のことだ。
◇
外を見てみたくて城から出てきたけど、やっぱり昨日の今日だな。
あちらこちらで街の復旧作業をしている。
「大変そうだなぁ」
そうぼやくと、周りにいた人達は手を止めてこちらを見てきた。
頑張ってる人達にいらないことを言ったかもしれない……
申し訳ないなと思っていると、
「あれ、英雄様だ」「ほんとだ」「昨日はありがとよー!」「きみのおかけだ!」
思っていた反応と違う。
いつの間にか俺の周りには街の人々で溢れており、数え切れない感謝、尊敬の言葉が舞っていた。
改めてこの街を守れたこと、心からよかったと思えた。
少し街の皆と話をした後にその場を去った。
街をひと回りし、城へ戻っている最中、後ろからずっと視線を感じる。
振り向いて見ても何もいない。
わずかに感じる魔力の方を見ても姿は見えない……いや、なんかしっぽだけ浮いてる?
ちょっと引っ張ってみるか……
「い~やんっ♡」
おれがわいせつ行為をしたかのような反応をしながら姿を現した。
どうやら魔法か何かで姿を消していたが、しっぽだけ消せてなかったのだろう。
その姿はあらかた『魔族』で間違いない。
この街を襲ったリリスなんとかと似たような黒のドレスにローブを羽織っている。
それが『魔族』特有の正装というやつなのだろうか。
ただ比較をすると目の前のこいつは少し幼い。
見た目だけでいうと15歳くらいだろうか、中学生くらいに見える。
「ちょっと……そんなところ触るってことは責任とってくれるんだよね? 」
と言いながら目の前の『魔族?』はモジモジと照れている素振りをしている。
え、しっぽ触るって魔族界隈では求婚的な意味だったりするの?困るよ、おれ。
とりあえず話題を変えよう。
「そ、それより俺の後つけてたってことはなんか用事あるんじゃないの? 仲間の敵討ちとか? 」
「敵討ちだなんてぇそんなことしないよぉ 」
「じゃあなんだ? 」
「聞いてくれるの? やっぱり優しい♡ 実はね、魔族滅ぼしてほしいんだ! 」
「……ん? なんだって? 」
12
お気に入りに追加
393
あなたにおすすめの小説
勇者パーティーに追放されたアランが望み見る
辻田煙
ファンタジー
過去、アランは勇者パーティーにより、魔王軍に襲われた村から救出された。以降、勇者たちの雑用としてアランは彼らからの精神的肉体的な苦痛に耐えている。村を襲った魔王軍への復讐になると思って。
しかし、アランは自身を魔王軍から救ってくれたはずの勇者パーティーの不正に気付いてしまう。
さらに、警戒していたにも関わらず、ダンジョンのトラップ部屋で勇者達に殺害される。
「やーっと、起きた。アラン」
死んだはずのアランが目を覚ますと、聞こえたのはどこか懐かしい声だった――
数週間後、アランは勇者パーティーの一人である竜人ジェナの前に立っていた。
「見つけたぁ。てめえ、なんで死んでねえんだぁ?」
「遅いよ、ジェナ」
アランの仕掛けたダンジョントラップでボロボロでありながら、なおも不敵に嗤うジェナを前に、アランは復讐の炎を滾らせ戦いに挑む。
救済者と勘違いし気付けなかった過去の自分への戒めと、恨みを持って。
【感想、お気に入りに追加】、エール、お願いいたします!m(__)m
※2024年4月13日〜2024年4月29日連載、完結
※この作品は、カクヨム・小説家になろう・ノベルアップ+にも投稿しています。
【Twitter】(更新報告など)
@tuzita_en(https://twitter.com/tuzita_en)
【主要作品リスト・最新情報】
lit.link(https://lit.link/tuzitaen)
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?
桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」
その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。
影響するステータスは『運』。
聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。
第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。
すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。
より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!
真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。
【簡単な流れ】
勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ
【原題】
『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
神々の間では異世界転移がブームらしいです。
はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》
楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。
理由は『最近流行ってるから』
数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。
優しくて単純な少女の異世界冒険譚。
第2部 《精霊の紋章》
ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。
それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。
第3部 《交錯する戦場》
各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。
人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。
第4部 《新たなる神話》
戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。
連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。
それは、この世界で最も新しい神話。
クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした
コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。
クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。
召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。
理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。
ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。
これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
転生したら神だった。どうすんの?
埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの?
人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる