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1章 エメラルドヴェール編

思わぬ登場人物

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 俺は高橋 春陽はる
 高校2年生にして異世界転生者であり、このエメラルドヴェールの英雄という扱いだ。
 今俺は応接……じゃなかった、玉座の間つまり王様の部屋にいる。

 対面には王様エルミンが座っており、その横に側近騎士且つ翠影の守護騎士団団長セリオン、さらには目の前のテーブルに神セレスティアがこちらを見ており、なぜか皆、疑惑の目をこちらに向けている。
 そう、なぜか俺は質問責めに合っているのだ。
 その理由は明白。
 
「もぉ~なんなのぉみんなこっち見てさぁ……   主様《あるじさま》が悪いことしたの? 」
 
 おれの隣で能天気に話しているこのお子様のせいだ。
 こいつはエレナ・シャドウウィスパー。
 お名前で察しの通り『魔族』だ。

 こいつが俺の前に現れたのは玉座の間に初めてきた次の日、街を見回っていた時のことだ。

 ◇

 外を見てみたくて城から出てきたけど、やっぱり昨日の今日だな。
 あちらこちらで街の復旧作業をしている。

「大変そうだなぁ」

 そうぼやくと、周りにいた人達は手を止めてこちらを見てきた。
 頑張ってる人達にいらないことを言ったかもしれない……
 申し訳ないなと思っていると、

「あれ、英雄様だ」「ほんとだ」「昨日はありがとよー!」「きみのおかけだ!」

 思っていた反応と違う。
 いつの間にか俺の周りには街の人々で溢れており、数え切れない感謝、尊敬の言葉が舞っていた。
 改めてこの街を守れたこと、心からよかったと思えた。

 少し街の皆と話をした後にその場を去った。

 街をひと回りし、城へ戻っている最中、後ろからずっと視線を感じる。
 振り向いて見ても何もいない。
 わずかに感じる魔力の方を見ても姿は見えない……いや、なんかしっぽだけ浮いてる?
 ちょっと引っ張ってみるか……
 
「い~やんっ♡」

 おれがわいせつ行為をしたかのような反応をしながら姿を現した。
 どうやら魔法か何かで姿を消していたが、しっぽだけ消せてなかったのだろう。
 その姿はあらかた『魔族』で間違いない。
 この街を襲ったリリスなんとかと似たような黒のドレスにローブを羽織っている。
 それが『魔族』特有の正装というやつなのだろうか。
 ただ比較をすると目の前のこいつは少し幼い。
 見た目だけでいうと15歳くらいだろうか、中学生くらいに見える。

「ちょっと……そんなところ触るってことは責任とってくれるんだよね? 」
 
 と言いながら目の前の『魔族?』はモジモジと照れている素振りをしている。
 え、しっぽ触るって魔族界隈では求婚的な意味だったりするの?困るよ、おれ。
 とりあえず話題を変えよう。

「そ、それより俺の後つけてたってことはなんか用事あるんじゃないの?  仲間の敵討ちとか?  」

「敵討ちだなんてぇそんなことしないよぉ 」

「じゃあなんだ?  」

「聞いてくれるの?  やっぱり優しい♡  実はね、魔族滅ぼしてほしいんだ! 」

「……ん?  なんだって?  」
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