22 / 34
第22話 非常事態
しおりを挟む6階層。
ここからは少し雰囲気が変わった。
出現するモンスターもガラリと変化を見せ、目の前にはフロストゴーレムとやらが立ちはだかっている。
そいつらは数体の群れとしてやってきたわけだが、ボク、大我くん、サラの力で残り一体になるまで倒した。
その一体ってのが他の個体よりも一回り大きいので、もしかしたら親玉みたいなものなのかもしれない。
「大我さんっ! 今のうちですっ!」
サラはフロストゴーレムの連撃を大剣で防ぐ。
自身の力なのか大剣の力なのか分からないけど彼女の周囲には光の膜のようなものができており、そのおかげで剣身だけでは幅が足りないような範囲攻撃にも対応することができている。
「ようし、任せとけいっ!」
大我くんの武器はハンドガン。
昨日「旦那ァ! この銃は普通のハンドガンよりも銃身が長いデザインも魅力なんだがよ、それよりも銃本体の大きさに関係ねぇほど莫大なエネルギー弾が発射できるのも魅力の一つなんだぜ!」なんて言ってた。
彼は言葉の通り目の前のフロストゴーレムの飲み込んでしまうほど大きなエネルギー弾を発射してみせる。
ボクとしては可愛い女の子サラの身を守ってあげたいけど、戦闘スタイル的に彼女は前衛として、大きな大剣で身を守りつつ敵の注意を引くという役割を果たしてきたということで彼女が一番先頭の配置になってしまったのだ。
実際、彼女は完全に無傷。
その大剣で完璧に守れているということになる。
それにボクも中衛ポジションでサラのやや後方に位置しているため、いつでも彼女を守ることができるのだ。
ドカンッ――
大我くんが放った弾がフロストゴーレムに直撃した。
強い爆発音と共にその直撃部分から大量の煙がたちのぼる。
「よっしゃあ、相当喰らっただろ!」
ゴゴゴゴ――
「大我さん、まだですっ!!」
そのフロストゴーレムは倒れることなく、重低音な雄叫びを上げる。
他のやつならこれで倒れていたのにさすが親玉だ。
「まじかっ!! ザコに弾撃ちすぎちまってリロードが必要だ……。旦那っ! 頼めるかっ?」
ボクもそろそろ出番かなって思っていた。
「もちろん。硬化っ!」
ボクはガントレット下の上肢に竜鱗を纏う。
武器の下には硬化した皮膚、ガントレット+硬化の拳ので威力は増大だ。
「はぁぁ――っ! 【竜棍の一撃】」
地面から飛び上がったボクは、フロストゴーレムの頭上からその拳を振り下ろす。
ズドンッ――
そいつはその暴力的な技に原型を止めることなく押し潰された。
「さすがリュウさんっ! 見事な一撃です!」
サラはニコニコした笑顔でボクの元へ駆け寄ってくる。
「いや、サラが引き付けてくれてたから狙いやすかったんだ。ありがとうっ!」
「お、お役に立てたのなら嬉しいです……」
「いやぁ旦那、助かったぜ。てか相変わらずエグい威力だ。これじゃ俺の弾なんてあってもなくても一緒だな。ハハッ!」
「大我くんそんなことないよ。普通のモンスターならあれで一撃だし、あの大きなフロストゴーレムもだいぶダメージ受けてたと思う」
「そ、そうですよ。おかげで私も守りやすかったですし……」
「2人とも、気ぃ使わせて悪いな。さっ! 先に進もうぜいっ!」
大我くんは一足先に奥へ進もうとする。
この試験始まって分かったんだけど、大我くんは意外と悲観的だ。
普段はにヒヒッと笑顔を絶やさずハキハキと話すのだけれど、戦いになると別。
あまり自分の攻撃に自信が無いのか、「俺の攻撃なんて……」みたいな自虐的な発言が多くなる。
ちょっと心配だなぁ。
「……大我さんって姓は鳴上でしたよね?」
サラは彼の背中を見つめ、そう言う。
「うん、たしかそう言ってた気がする! それがどうかしたの?」
「鳴上家っていえば有名なハンターの一族ですよ。それに十傑第七席は彼のお兄さんですし、何か思うところがあるんでしょうかね……」
「そっか」
どうやら彼は彼で抱えるものが多いらしい。
踏み入っていいものか分からないし、今はそっとしておくしかないよね。
それからボク達は大我くんの背を追って、6階層の攻略を再開した。
朝10時頃から活動しているが、早いものでお昼すぎにはもう7階層への入口に近づいてきている。
これだけ攻略があっという間なのも、スマホに送られたダンジョンのMAPがあるからこそだけど。
「おっ! 2人とも! あの階段じゃねーか? 行こうぜ!」
7階層へ下る階段が見えたので、大我くんは元気に駆け出して行った。
「あれ、でもあそこスタッフさんがいますよ?」
そこには初めルール説明をしてくれたロベールとやらの護衛ハンター、飛田さんと言ったっけ……その人が立っている。
けどいつもは階層終わり付近にスタッフがいることなんてなかったけど。
ボク達3人がその場に到着すると、
「君たち。実はこの先、今は通ることができないんだ」
彼はそう言い放った。
ボクが受けた印象の通り、この先は通れないことになっているらしい。
「いやいや、そんなのズルいっす!! 先に行った人達がいるでしょーよ!」
「スマホの配信画面をみてくれ……。まぁヤバいことになってるから」
ボク達3人はなんのことか分からず、3人お互い視線を交わし合い、各自スマホを開く。
そこに映るのは、常にトップを走っていた受験者達とそれに立ちはだかる謎の蜘蛛女だった。
"うわぁモンスターだけどめっちゃ人型じゃん"
"メス蜘蛛を擬人化したような感じ。うん……イけるな"
"↑何がだよwww"
"たしかに美人だけど、モンスターだって笑"
"7階層にあんなモンスターいるの?"
"いや、知らん。けど受験者じゃ歯がたってないな"
"早く護衛ハンター達来てやれって笑"
"今ネットで調べてるけどあんな奴いないんだがw"
"もしかして新種!?"
"もしくはもっと下層のモンスター?"
"そんなやつがなんで7層にいんのよ笑"
その7層に現れた蜘蛛女のことをボクは知っている。
ここより遥か下層、60階層のボスモンスターだ。
239
お気に入りに追加
774
あなたにおすすめの小説
異世界でネットショッピングをして商いをしました。
ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。
それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。
これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ)
よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m
hotランキング23位(18日11時時点)
本当にありがとうございます
誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。
NTRエロゲの世界に転移した俺、ヒロインの好感度は限界突破。レベルアップ出来ない俺はスキルを取得して無双する。~お前らNTRを狙いすぎだろ~
ぐうのすけ
ファンタジー
高校生で18才の【黒野 速人】はクラス転移で異世界に召喚される。
城に召喚され、ステータス確認で他の者はレア固有スキルを持つ中、速人の固有スキルは呪い扱いされ城を追い出された。
速人は気づく。
この世界、俺がやっていたエロゲ、プリンセストラップダンジョン学園・NTRと同じ世界だ!
この世界の攻略法を俺は知っている!
そして自分のステータスを見て気づく。
そうか、俺の固有スキルは大器晩成型の強スキルだ!
こうして速人は徐々に頭角を現し、ハーレムと大きな地位を築いていく。
一方速人を追放したクラスメートの勇者源氏朝陽はゲームの仕様を知らず、徐々に成長が止まり、落ちぶれていく。
そしてクラス1の美人【姫野 姫】にも逃げられ更に追い込まれる。
順調に強くなっていく中速人は気づく。
俺達が転移した事でゲームの歴史が変わっていく。
更にゲームオーバーを回避するためにヒロインを助けた事でヒロインの好感度が限界突破していく。
強くなり、ヒロインを救いつつ成り上がっていくお話。
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
カクヨムとアルファポリス同時掲載。
30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?
みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。
なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。
身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。
一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。
……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ?
※他サイトでも掲載しています。
※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。
若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双
たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。
ゲームの知識を活かして成り上がります。
圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる