上 下
20 / 34

第20話 青髪の女の子、サラ

しおりを挟む


 ボクの目の前からミノタウロスが忽然と姿を消した。

"今ミノタウロス消えた?"
"うん、消えた。というかあのガントレットに吸い込まれたようにも見えたが……?"
"んなアホな"
"いや、あり得るぞ" 
"↑その根拠は?"
"あれが魂奪のガントレットだから……?" 
"説明になってなくて草"
"↑いや、魂奪なんだからそれで充分理解できるだろw 理解力低すぎて草"

 モンスターが消え、戦闘終了とみなされたのか、AI撮影ドローンはボス部屋の外へと静かに飛んで行った。
 あくまで戦っている場面を集中して撮影するなんてとっても賢いな。

 そういえばソルイはさっき、いい魂だったと言っていた。
 つまり名の通り魂を奪ったってことなのかな。

 (リュウ、その通りじゃ。あのミノタウロスには魂奪のガントレットの一部になってもらった)

 ソルイ、そんなことできるの?

 (あぁ。我が良質な魂だと判断した場合にのみじゃが)

 良質?
 それの判断基準は?

 (んぬぅ……お主は難しいことを聞くの~。まぁ平たく言えば善良な魂、つまり根が良い魂かのぉ。悪い魂は不味いのじゃ)

 善良な魂!?
 さっきのモンスター、あの女の子を襲ってたけど!?

 (そりゃモンスターも自分の居場所に無断で入られりゃ怒るであろう)

 え、そういうものなの?

 (そういうものだ。あとな、ある程度強いやつの方がええ)

 なんで?

 (それはな、お主の力になるものだからじゃ)

 ボクの力?
 ちょっと分からないことが多すぎて頭いっぱいだよ。

 (まぁこの話は一旦置いといて、今はあの女子じゃ。目が覚めたようだぞ)

 青髪の女の子が?
 ちゃんと目覚めてよかった。

 ボクがその方へ視線を向けると、彼女はその場にひょこっと座り込んでいる。
 何が何だかと言わんばかりに、この空間をぐるりと見渡した。
 そしてすぐにボクと目が合う。

 まだ頭がはっきりしていないのかボクを見たまま惚けたようにぽか~んとしている。

 大丈夫かな?
 そう思って彼女の元へトコトコと駆けつける。

 近づくボクに気付いたようで、

「ふぇえええ……っ!?」

 なんだか狼狽えたようなおろおろ声を出している。

「どうしたの?」

 ボクは彼女が心配になり、ふと顔を覗く。

 すると可愛い女の子はほんのりと赤らめた自身の顔を手で覆い隠し、

「あ……の、二度も助けて下さってありがとうございました、シルバーさま……」

 そう感謝の言葉をボクに伝える。

 シルバーさま?
 その呼び方はボクが配信で呼ばれている呼称だ。
 誰がそう名づけたのかは知らないけど、おそらくこの銀髪が由来なんだろう。

「君……ボクの配信か何かを見たの?」

 彼女は顔を隠していた手を下ろし、

「はい……。 え、えと……実はシルバー様のファンで……っ!」

 ボクは地上に出てきてから配信に関する単語を調べてきたから、ファンという意味も分かる。
 つまりボクのことを好きでいてくれる人のことだ。
 そうやって好意的な感情を向けられるというのは嬉しい。

「ボクも君みたいな可愛い女の子にそう言ってもらえると嬉しいよっ! 君、名前は?」

 地上では玲奈や大我くんのように名前をお互い呼び合う。
 彼女のことをずっと女の子と呼ぶのも少し変な気がするしね。

「かわ……っ! ぐへへへ……そんな……あ、失礼しました。私はサラと言います。そのままサラとお呼びください」

 なんか一瞬すごい下品な笑い方が聞こえてきたけど、とりあえず彼女の名前はわかった。

「サラ、だね。ボクはリュウ。なんだか配信の中ではシルバーって呼ばれてるみたいだし、呼び方はどっちでもいいよ」

「呼び方……リュウ様でもいいですか?  シルバー様は私の中でどうしても画面の中のヒーローというかとっても尊い存在なので……」

 呼び方でそんなに変わるものなのかボクには分からないけど、彼女の意向を尊重することにした。
 ただ、様ってのは違和感があると伝えると「じゃあリュウさんで……」ってことになったけど。

 ということでお互い自己紹介も終わったし、この後のことを考えないといけない。
 もう夜も遅いし、きっとサラも大我くんと一緒で疲れているはず。
 そう思って一つ提案した。

「サラ、ボク達が見つけた寝床に来ない? モンスターもいないし、安全だよ」

「ええ……っ!? 男の人と一緒、それって……」

 サラはボクの提案に小さな声でブツブツと言い、考える素振りをしている。
 一体何に悩んでいるんだろう?

「大丈夫! ボクの友達、大我くんも一緒だからさっ!」

「えええ……っ!? もしかして3人でするつもりですかっ!?」

 なぜか彼女は一歩後ずさり、怪訝な顔でボクの顔を見る。
 でも、こんなところで疲弊した美女を置いていくことはできない。
 ここは半ば無理矢理にでもっ!

「ん? ちょっとよく分からないけど、ほら早く行くよっ!」

 ボクは彼女の手を引いて、大我くんがいる洞穴まで向かっていく。

「ふぇえ……ちょっと心の準備が……っ!」

 終始サラの言っている意味が分からなかったけど、きっと一緒の方が安全だよね。
 そう思い、彼女の手を引いて向かったのだった。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

異世界でネットショッピングをして商いをしました。

ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。 それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。 これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ) よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m hotランキング23位(18日11時時点) 本当にありがとうございます 誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

ちょっと神様!私もうステータス調整されてるんですが!!

べちてん
ファンタジー
アニメ、マンガ、ラノベに小説好きの典型的な陰キャ高校生の西園千成はある日河川敷に花見に来ていた。人混みに酔い、体調が悪くなったので少し離れた路地で休憩していたらいつの間にか神域に迷い込んでしまっていた!!もう元居た世界には戻れないとのことなので魔法の世界へ転移することに。申し訳ないとか何とかでステータスを古龍の半分にしてもらったのだが、別の神様がそれを知らずに私のステータスをそこからさらに2倍にしてしまった!ちょっと神様!もうステータス調整されてるんですが!!

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

処理中です...