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第13話 どうやらボクは少し不利らしい
しおりを挟むボクたちは商店街に備わっている訓練所へ到着した。
「リュウくん? ちゃんと聞いてる?」
「うん、聞いてるよ!」
「聞いてるならなんでまだそのガントレットつけてるの? 孝二さんからも説明受けたよね?」
「受けたけど、ボク大丈夫みたいだし……」
「それにね、知ってると思うけどダンジョンには遠くから攻撃をしてくるドラゴンやアラクネ、リーチが長いゴーレムみたいなモンスターがいるんだよ? いくらリュウくんがダンジョンで過ごしてたからって逃げるのと倒すのじゃ話が変わってくる。秦みたいに長刀ならまだ使ってる人も多いけど、そんなリーチの短い武器使ってる人ほとんど見たことないよ……」
さっきから玲奈は不安げな声でボクに語りかけてくる。
彼女が気がかりなのはボクが選んだ武器、魂奪のガントレットのことだ。
別名『命の略奪者』
名の通り、この武器は人の命を奪う。
そういうと大袈裟かもしれないが、装着者の氣をありったけ吸ってしまうことが分かったので物置の奥に仕舞っていたようだ。
常人だと1分と持たず倒れてしまうみたいだけど、ボクの場合なんの変化もない。
そもそも氣がなくなる感覚もよく分からないし。
「まぁまぁ玲奈お嬢、そこまで強く言うことねーじゃねぇか。当の本人だってどうもなさそうだし」
一方の孝二さんは落ち着いた様子で彼女を宥めようとしている。
「孝二さんだって初めは焦って止めてたじゃないですか!」
「まぁ初めはな。でも俺だって一人の武器商人。使われない武器は見てて悲しいし、どんな武器だって輝けると思っている。魂奪のガントレットにも脚光を浴びる場ができて嬉しいんだよ。いい相棒に出会えたってことだ。な、リュウ!」
孝二さんはボクの肩をポンッと優しく叩いてくる。
「うんっ! こんないい武器を貰えるなんてとっても嬉しいよ!」
「ガハハハッ! もう勝った気でいやがる! 面白ぇやつだ。まぁ後はこいつに信頼してもらえるかどうかだな」
「信頼?」
首を傾げ、孝二さんに問いかける。
「あぁそれはな……」
そんな会話の途中で、
「さーて皆様お待たせ致しましたっ! 俺達がやってきたのは対ダンジョン商店街の訓練所! そして今日の男気バトルの相手は……今Dチューブで話題のシルバー君ですっ!!」
武器を選び終え、撮影の準備ができたのかケンタは再び動画配信を再開し始めた。
それと同時に視聴者のコメント欄も動き出す。
"待ってました"
"ケンタVSシルバー わ く わ く"
"端に映るレナたんを見にきました"
"さすがハンターのみが入れる対ダンジョン商店街の訓練所、広いもんだな"
"俺もこんな所で戦いたいな。ハンターじゃないけど"
"ケンタはクロスボウ、それに長刀まで仕込んでる。シルバーは……何あの武器"
"何ってガントレットだろ。シルバーくんが武器選ぶとこ見てないの?"
"完全に近距離と遠距離。結果が決まったも同然ww"
"いやいや、シルバー様のスピード舐めたらあかんぜ"
"そうだ、秦と戦ってた時の速度もすごかったし"
"いや銃弾より速いわけww"
コメントを見ると視聴者さんも盛り上がってる。
「お~い、シルバーくん? 準備はいいかい?」
そう声をかけてきたケンタは、すでに武器を持って準備できているみたいだ。
「あ、うん! 今行くよ!」
「リュウ、あのクロスボウ……完全に相性が悪いぞ。それに加え長刀まで腰に差してる。最悪近づかれても近距離戦で、ってことだろう。あいつ、武器の選び方を見ても対人戦に慣れてやがる、気をつけろよ」
孝二さんからの助言だ。
とってもありがたい。
「クロスボウってあの手に持ってるやつ?」
「あぁ、銃みたいなもんだがあれから発射されるのは矢だ。まぁ銃にしろ弓にしろお前が不利なのは変わらねぇがな」
「あの~早くきてくれませんかね? 視聴者さんも待ってますし」
ケンタもさすがに待ちかねたのか再び声を飛ばしてきた。
「ごめんね、行くよ」
ボクは彼の元へ駆けて行こうとすると、
「リュウくん!!」
玲奈が力強い声で呼びかけてきた。
そのまま彼女は続けて、
「危なかったらすぐ降参してね? 武器と武器じゃ命だって落とすかも……」
どんどん声がか細くなっていくところ、玲奈はボクのことを心配してくれているのだろう。
このまま向かうわけにはいかないね。
そう思ってボクは彼女に体を向け、
「玲奈、大丈夫! ボク強いから負けないよ!」
そう返すと、彼女は「そうだよね、うん大丈夫」と自分を納得させるかのように頷いている。
「じゃあね、リュウくん……これに勝ってハンター試験も合格したらデートしよ! ねっ?」
あれ、たしかデートって好きな異性とするものだって言ってなかったっけ?
ボクが行っていいものか分からないけど、玲奈と居られるのなら嬉しい。
「うん! いいよ!」
「じゃあ決まりっ! だからちゃんと無事に帰ってきてね!」
彼女の力強い声に背中を押されてボクはようやくケンタの元へ向かった。
"今デートっつったか?"
"言ってたな"
"あぁイってた"
"シルバーにはここで負けてもらおう、そうしよう"
"俺達のレナを渡すわけにはいかない"
"でもさ、レナちゃんが決めたことだし……"
"シルレナ応援します"
"シルバー様! 勝ってレナさんを幸せにしてあげて!"
"私のシルバー様が……"
"シルレナチャンネル開設待ってます"
この時、色んな方向にコメント欄が荒れていたことをボク達は知る由もなかった。
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