7 / 34
第7話 リュウVS秦
しおりを挟む「うちの護衛ハンター、前田 秦くんと戦って勝ったら入学を認めよう!」
玲奈のパパはそう提案してきた。
彼はそのまま続けて、
「いや……恩人に無礼なことを言っているのは重々分かっている。しかし今年入学できなかったものがたくさんいる中、君を裏口入学させたとなれば学校の評判はガタ落ちだ」
あの人の言っている意味はほとんど分からなかったけど、ボクは唯一分かったことを再確認する。
「つまりボクが勝てばハンターになれるんだね?」
「……あぁ。理解が早くて助かる。それと戦いの様子は生配信させてもらうよ。証人は多いに越したことないだろ?」
「パパッ! リュウくんを戦わせるなんて……」
「玲奈、ウチの評判どーこーもそうだが素性や実力が分からない人を入学させるのは学校側にもリスクがあるのだ。娘を助けてくれるくらいの人だし、人柄は信用できよう。あとは実力。一応玲奈を助ける姿は見ていたが、その力、実際に見てみたい」
「俺も賛成ですよ、理事長」
突然話に割り入ってきたのは、ずっと理事長の隣で立っていた前田 秦という男。
今からボクが戦う相手らしい。
背丈もボクより顔一つ分高く、細身の割に質のいい筋肉を身につけている辺り相当鍛えているのだろう。
ボクに向けてくるその鋭い眼光からは憎しみ、殺意といった強い感情が伝わってくる。
まるでモンスターと対峙した時みたいだ。
「秦、勝手にお前を相手に選んで悪いな」
「いえ、いくらお嬢様を助けたからってこんな得体の知れないもの学校に入れるわけにはいきませんから」
「ちょっと秦もいい加減にしなさいっ!」
玲奈は秦に対して強い口調で言い放った。
「いいですか、お嬢様……学校経営とは遊びではないのです。素性は疎か実力すら分からないものなど、我がハンター養成学校の危険分子に過ぎない」
それに対して秦は彼女に対して淡々とした口調で言い返す。
「秦、その辺にしておいてくれ。玲奈、リュウくん、彼がキツい言葉をぶつけたようですまなかった。我々は何も厄介払いしようってわけじゃないんだ。本当に実力がみたいだけで、ハンターになるに値すると判断すればもちろん歓迎するよ」
「……分かった。パパ、リュウくんが勝ったらちゃんと入学を認めてよ?」
「あぁ分かっている」
「リュウくんも戦うことになっちゃってごめんね?」
「……? ボクはハンターになれるならなんでも構わないよ!」
玲奈はボクに対してとても申し訳なさそうな顔をしている。
ボクが勝てばいいだけのことだから、気にしなくていいのにな。
「理事長、では訓練所へ行きましょう」
「あ、あぁそうだな。玲奈、リュウくん、ついておいで」
ボクと玲奈は理事長の言うとおり、後に続いていった。
◇
そして到着したその場所はどうやら訓練所と呼ばれているらしい。
訓練か……父さんにしごかれた記憶しかないや。
「ここなら思う存分戦えるだろ? どうだ、リュウくん!」
理事長は大きく両手を広げ、この空間の広大さを示している。
たしかにダンジョンほどではないけど思う存分戦えそうだ。
「うん、これだけ広かったら戦いやすいよ」
「そりゃそうだ。ここは縦32m、横20mと理事長が訓練しやすいようにと提案してくれたものなのだから。それとお前、敬語もろくに使えないのか? 上下関係ができない奴はハンターになんてなれないぞ」
秦は相変わらずボクを冷たい目で見ている。
父さんからは人間と仲良くと言われているけど、彼とは少し難しそうだ。
「秦、そんなこと言ってやるな。さっそく配信も始めるが準備はいいか?」
理事長がそう言うと、秦は「わかりました」と返しこの空間の中央へ移動する。
そりゃ戦うなら真ん中だよね、ってことでボクも後ろから彼についていった。
"あれ、急遽生配信!?"
"このチャンネルってハンター学校のPRチャンネルじゃん"
"さすが普段稼働してないチャンネルだから視聴者少ねぇw"
"待って、あの人前田 秦!? 最も特級ハンターに近いっていわれてる"
"多分そうじゃね? この前ハンター雑誌載ってた顔と同じ"
"模擬戦って動画タイトルだけど、戦う人が不憫だわww"
"秦と向かい合ってるのシルバーくんじゃない?"
"シルバーって今SNSで合成って話題の?"
"だから合成じゃないって。あの時の翼、鱗本物だろ"
"ここでも合成か論争起こってるの草"
"この動画さっそく拡散されまくってますよ"
"あの2人どっちが勝つんだろ"
"さすがに秦だって"
「2人とも! 動画盛り上がってきたぞー!!」
嬉しそうに理事長が何か言ってるけど、よく分からない。
「リュウくんっ! 頑張ってねっ!!」
玲奈が手を振って応援してくれてる。
ボクは「ありがとう」と手を振り返した。
「ちっ」
秦から何か聞こえたけど、さっきよりボクを睨む目力が尋常じゃないくらい強くなっている。
またボク何かしたのかな?
"もしかしてだけど、これってレナちゃんの取り合い?"
"え、まじ?"
"だって秦って人シルバーにめっちゃ怒ってるし"
"あぁ。さっきレナちゃんが手を振ったから?"
"嫉妬したんですね。わかります"
"僕達と一緒だな。秦、ともにシルバーを滅ぼそうぞ"
"やめとけ、この前のレナの配信からシルバーのファンクラブができつつあるらしいぞ"
"やばいやんwwww"
「お互い武器を構えっ!!」
理事長が何かの合図をした。
「え、武器? ボクないけど」
みんな持ってるものなのかな?
分からないので思わず首を傾げる。
「は? お前素手で戦うつもりか?」
そう言った秦は鞘から抜いた長刀を手に持っている。
そうか、ハンターって武器を使うのか。
ダンジョンで倒した人も銃を持っていたし。
だけどボクは今まで素手で戦ってきたしなぁ。
「うん、ボクはこれでいいよ」
そう言って彼に拳を見せる。
「ふっ。なら俺もそれに倣おう」
一瞬、笑みをみせた秦は腰にかけてある鞘へ長刀を仕舞い、同じく拳を見せてきた。
"拳同士か! 男の戦いだな"
"これならシルバー様の勝ちも有り得るんじゃっ!"
"いやぁ甘いですな。秦殿は今まで何人もの非正規ハンター、それも1級に近い実力のものを拳で葬ってきましたから"
"化け物やんww でもなんで武器使わんの?"
"どうやら非正規ごときに己の武器を汚したくないとか"
"潔癖症なの草"
「ふははっ! お前達、それでこそ男だっ! では改めて、これより模擬戦を開始する。いざ尋常に……試合開始っ!」
理事長の一言により、戦いの火蓋は切って落とされた。
328
お気に入りに追加
766
あなたにおすすめの小説
集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!
七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」
その天使の言葉は善意からなのか?
異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか?
そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。
ただし、その扱いが難しいものだった。
転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。
基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。
○○○「これは私とのラブストーリーなの!」
主人公「いや、それは違うな」
クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される
こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる
初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。
なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています
こちらの作品も宜しければお願いします
[イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]
異世界でネットショッピングをして商いをしました。
ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。
それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。
これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ)
よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m
hotランキング23位(18日11時時点)
本当にありがとうございます
誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
せっかく異世界に転生できたんだから、急いで生きる必要なんてないよね?ー明日も俺はスローなライフを謳歌したいー
ジミー凌我
ファンタジー
日夜仕事に追われ続ける日常を毎日毎日繰り返していた。
仕事仕事の毎日、明日も明後日も仕事を積みたくないと生き急いでいた。
そんな俺はいつしか過労で倒れてしまった。
そのまま死んだ俺は、異世界に転生していた。
忙しすぎてうわさでしか聞いたことがないが、これが異世界転生というものなのだろう。
生き急いで死んでしまったんだ。俺はこの世界ではゆっくりと生きていきたいと思った。
ただ、この世界にはモンスターも魔王もいるみたい。
この世界で最初に出会ったクレハという女の子は、細かいことは気にしない自由奔放な可愛らしい子で、俺を助けてくれた。
冒険者としてゆったり生計を立てていこうと思ったら、以外と儲かる仕事だったからこれは楽な人生が始まると思った矢先。
なぜか2日目にして魔王軍の侵略に遭遇し…。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
異世界あるある 転生物語 たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?
よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する!
土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。
自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。
『あ、やべ!』
そして・・・・
【あれ?ここは何処だ?】
気が付けば真っ白な世界。
気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ?
・・・・
・・・
・・
・
【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】
こうして剛史は新た生を異世界で受けた。
そして何も思い出す事なく10歳に。
そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。
スキルによって一生が決まるからだ。
最低1、最高でも10。平均すると概ね5。
そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。
しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。
そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで
ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。
追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。
だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。
『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』
不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。
そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。
その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。
前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。
但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。
転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。
これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな?
何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが?
俺は農家の4男だぞ?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる