33 / 47
悪い予感はだいたい当たる
しおりを挟む(専用パッシブスキル【魔力吸収】を発動します)
え、なんで!?
そんな考察をする暇もなく、目の前の復活したゴーレムが瞬く間に岩の残骸へと再び姿を変えた。
「お前、何をした? 」
気づけば俺のそばまでやってきていた浦岡が声をかけてきた。
珍しく彼が驚きを隠せないといった表情をしている。
「いえ、自分にも何が何だか…… 」
俺の答えに納得がいっていないのか再び彼は表情を無くし、そっぽを向いた。
本当にこの人は何を考えているのか分からないな。
「戸波さん、すごいですよ!! 本当に何したんですか? 」
「そうそう、急に光り始めてぼわぁぁっとゴーレムを吸い込んでいったし! 実はスゴい冒険者だったり?? 」
一方、この本部組の2人は分かりやすい。
助かったことの嬉しさからかヨウスケ、ヒナは興奮状態になっている。
それから2人はどうやっただの、スゴい人だのとやたら俺を持ち上げてきているが、詰まるところいい気分にさせてこの先も助けてもらおうという魂胆だろう。
俺の性格が歪んでいるって?
いやいや、人間そんなものなのだ。
自分の利が1番。
しかしまぁ褒められるのは悪い気しないな。
そういえばふと気になったことがあったので口に出す。
「あれ、他のゴーレムの残骸は? 」
おそらく俺が吸収したのは、ヨウスケが斬り刻んだゴーレムの一部だけのはず。
浦岡が倒したものや、俺のところまで辿り着けなかったゴーレム達に何かした覚えはない。
なのに、他のゴーレム達もただの岩に戻っているのだ。
「本当だ。そういえば浦岡さんの周りにもゴーレムが何体かいたような? 」
戦いながらもヨウスケは周りがよく見えていたようだ。
まぁそりゃD級冒険者で俺より強いわけだから当然といえばそれまでなのだが。
「それは……あいつが何かした途端、崩れ去ったのだ 」
浦岡は俺を指差し、そう物を言う。
それによって再び俺に注目が集まるが、知らんふりしてやった。
何しろ本部の人間がいるのだ。
マジックブレイカーがバレてもめんどくさい。
それにしても本当に全て消えた?
それとも術者が意図的に消したか。
どちらにせよ、あのゴーレムが魔法で創られたものだということは確定した。
あとは誰が発動した魔法なのか。
この遺跡に俺達以外の人間がいてそいつが発動した、もしくはこの中の誰かがこっそり魔法を使った?
まぁ……浦岡が1番怪しいわな。
アイツ土魔法の使い手みたいだし、ゴーレムも簡単に創れる可能性は充分にある。
いや、こういう悪い予想は止めといたほうがいい。
フラグがたってしまう。
「とりあえず、進みません? 」
この提案をしたのは魔法剣士、ヨウスケだ。
これはかなり意外。
彼なら根掘り葉掘り聞いてきそうなものだが。
そして俺に向かって下手くそなウインクをしてくる。
え、もしかして俺に何か隠し事があることを感じ、庇ってくれたのか?
彼氏の姿を見てヒナも何か勘づいたのか、ハッとした顔をした後に、
「そうそう! 目的はこのダンジョンの攻略だし! 」
彼女もヨウスケと同じくウインクをカマしてくるが、彼氏に引けを取らず決して上手いとは言えない。
いや、この2人は一体なにを察したんだ。
「まぁ……そうだな 」
おお……。
浦岡が納得して前に進み始めた。
本部組のおかげでごまかせたのか?
今は彼がゴーレム生成の犯人という証拠もない。
しっかりヤツのことは警戒しておこう。
そう思って俺とヨウスケ、ヒナの3人は彼の後に続いた。
……のはいいが、俺はなんでこの2人の間にいるんだ?
初対面のカップルに挟まれている状況、これは俺のことバカにしてるのか?
未だ童貞、彼女いない歴年齢の俺を嘲笑ってんだろ。
って思いたくなるような心境だ。
「ねぇ戸波さん 」
そう声をかけてきたのは、俺の右手側のヨウスケ。
「え、何? 」
そう聞くと、彼は俺に耳打ちをしてきて
「あのゴーレム吸い込んだの戸波さんでしょ? さっき浦岡さんには知らないふりをしてたみたいけど戸波さん、ゴーレムが残骸に戻ったあとそんなに驚いている様子には見えなかったから 」
こいつやっぱりよく人のこと見てるな。
剣でゴーレムをぶった斬りながら俺の表情まで見てたって今思ったらすごくね?
まぁこの2人ここまで絡んでいて悪い人じゃなさそうだし、それくらいなら教えてもいいか。
「あぁそうだよ。魔力を吸収できるスキルがあるんだ 」
浦岡に聞こえてはいけないと思い、耳打ちで彼に返答する。
するとヨウスケの表情がパーッと明るくなり、
「やっぱりヒナの予想は当たってたよ!! 」
彼女に話を振る。
「え、なんの話!? 」
俺が左右の2人を交互に見ながらそう聞くと、ヒナはヨウスケよりもさらに小さい声で俺に耳打ちをしてきた。
「最初からゴーレムが魔法で創られたって分かってたの。魔力感知……私はそれが得意で 」
「あ、そうなんだ 」
人の彼女がこんな近くに居て、それに耳元で囁いてくるなんてダンジョンというこの状況下でも変な背徳感を感じる。
ちょっと興奮してしまったのはここだけの話にしよう。
にしても魔力感知ってめっちゃ便利そうじゃん。
さらにヒナは俺の耳元で説明を続ける。
「この魔力感知、どんなものでも魔力がこもってるかどうか分かるの。それでね、さっきから気になってるんだけど少し前、二手に分かれたでしょ? こっちの通り道にだけ魔力を感じるんだ 」
「え、それってこの奥にめっちゃ強いモンスターがいるとか? 」
彼女は首を横に振っている。
どうやら俺の見解は違うらしい。
「そうじゃなくて通り道に、です! 」
彼女の口調からは力強さを感じる。
通り道に?
まさかこの通路自体が魔法で創られたってことか!?
そうだとしたら、なんの目的でそんなこと……。
「思ったより、気づくのが早かったようだな 」
さっきまで足を進めていた浦岡は気づけば立ち止まり、俺達の方を向いていた。
40
お気に入りに追加
170
あなたにおすすめの小説
保健室の秘密...
とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。
吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。
吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。
僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。
そんな吉田さんには、ある噂があった。
「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」
それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる