ギルドを追放された【ぼっち】だけど、スキル【自動生成ダンジョン】がSSSランクの魔剣や友人を生み出してくれました。

お茶っ葉

文字の大きさ
上 下
22 / 26

22話 休息

しおりを挟む
 小さな泉の前で馬車が止まる。御者が馬の手入れをしていた。
 俺たちも地上に足を下ろして水筒の中身を補充していく。綺麗な水だ。
 魔物の気配もないし、まだ新しい焚火の跡も残っている。安全が保障された空間だ。

「すまないね。急ぎの旅かもしれないが、馬にも休息が必要なんだ」
「別に構わないぞ。乗せてもらえるだけで十分だ。ここで一晩泊まるのか?」
「そうだね。でも安心しな。もしもの時は後ろの冒険者さんが守ってくれる。旅人さんたちはゆっくりしていけばいいさ」
「俺たちも一応、自衛はできるが。そうか、後ろの馬車には護衛も乗っていたのか」

 三台あるうちの一つから二人組の冒険者が降りてくる。
 見た目は若い二人組の男女だ。装備からしてそれほど高いランクでは無さそうだが。
 まぁGランクの俺がこんな事を言うのは偉そうだが。馬車の護衛は大体低ランクの仕事だ。
 
 名の知れた行商人たちは専属の護衛を持っているし。
 わざわざ当たり外れの激しい冒険者に依頼するのは、金に余裕が無い個人事業主に多い。 

「クレルお姉ちゃん! 水が冷たいです、ひんやりしています! えいっ!!」
「あっ、んっ……もうっ! フランは悪戯っ子なんですから!」
 
 水を掛け合い二人がはしゃいでいる。
 素足になって濡れた服を手で絞りながら。絵になるな。ずっと見ていたくなる。
 ……羨ましい訳じゃないぞ。姉妹仲の良さに見とれているだけだ。

「へぇ。可愛い乗客たちだな。この子たちは兄さんの家族かい?」
「いいだろう。俺の”友人”だぞ?」
「や、やけに強調してくるな……。若いのに小さい子を連れて旅をしているなんて訳アリかな?」
「夜逃げしているように見えるか?」
「いや全然」

 隣に立って自然に声を掛けてくる短髪の男。
 市販で流通されている装備を身に着け。嫌味のない笑顔を向けてくる。
 もう一人の人物も近付いてくる。見たところ武器を持っていないが余裕だな。

「そういえば道中で旅人さんを拾ったって聞いたけど。一応挨拶しておくわね。私はカミア。この人はラック。見ての通り冒険者よ。これからしばらくの間よろしくね」

 手を前に出してきたので握手に応じる。
 最近まともな冒険者と会っていなかったので新鮮だ。
 
「俺たちは護衛で雇われているんだ。ランクはD。まっ、気楽に行こうや」
「Dランクで馬車の護衛を引き受けるだなんて珍しいな。そういうのはEランクの連中に任せるものだが」
「兄さん詳しいな。まあ確かに物好きに思われるかもしれないが、俺たちも王都に用事があってな。馬車に乗せて貰えれば足になるし。多少は金も貰えるから悪くないかなって」
「装備も道具もタダじゃないし。運悪く戦闘に巻き込まれたら損するからあまり引き受けたくはなかったんだけどね。これも何かの縁だと思って」
「人が良いんだな。そうハッキリと言ってくれる方が雇用主も安心できるだろうな」

 護衛と偽り実は盗賊団と通じていたとか。別段珍しい話でもない。
 ギルドなんて仕事を斡旋するくらいで安全の保証をしてくれる訳じゃないから。 
 俺ですら冒険者になれるのだ。低ランク帯は荒くれ者が多くそれなりのリスクが生じる。 

 実入りが少ないのに危険を顧みず承諾するくらいだ。人柄は悪くないのだろう。
 高ランクほど装備の質を求めるだろうし。安い仕事は引き受けるだけで赤字なのだ。

「兄さんは旅人らしいけど。もしかして元冒険者なのか?」
「まぁ……そんなところかな」

 ギルドに追放されたとは言いにくい。
 犯罪を犯した訳ではないが。そういう目で見られそうだ。

「馬鹿ね。彼らは護衛も連れずに旅人をしているのよ。元冒険者で腕にも相当な自信が無ければ無謀でしょ?」
「それもそうだよな。もしかすると、俺たちの護衛は必要なかったかもな」
「…………」

 勝手にハードルを上げないでくれ。Gランクとも言い辛くなったじゃないか。
 考えてみれば、Gランクの男一人に女二人連れの旅って他人から見て正気の沙汰じゃないな。

「そうだ兄さん。せっかくこうして同伴する事になったんだ。スキルを教えてくれよ」
「私も気になるわ。是非、見せてもらえないかしら?」
 
 ――でた。冒険者の悪い癖だ。
 彼らは神から祝福されているから。自分のスキルに誇りを持っている。
 そしてすぐに他人のスキルを知りたがるのだ。俺はこれを自慢合戦プライドバトルと呼んでいる。

 ランクというものは、その気になれば幾らでも簡単に偽れるものだ。
 毎回ギルドに照会してもらう訳にもいかないし。装備に気を遣えば素人ぐらいは騙せるだろう。
 だがスキルは誤魔化せない。目の前で披露しろと言われて拒否すれば当然、怪しまれる。

 強いスキルを持っていれば、相応の実力が保証されるから。
 ランクなんて人が定めた曖昧な基準よりも、神から授かった能力に説得力が高いのは当たり前で。

 その人物が何が得意なのか。何を任せればいいのかの指標になり。
 冒険者がパーティを組む時は、大抵最初に得意スキルを確認する作業からになる。

 俺はこの質問が昔から苦手だった。
 自分からスキルが無いと告白しないといけないんだぞ。
 そのあとの凍え切った空気を想像するだけで胃が苦しい。

 俺が長年培ってきた薬草採りのノウハウを生かして【採取】持ちと偽るか?
 だが、薬草以外は専門外だしな。はぁ……しんどい。

「俺の得意スキルは【投擲】だ。少し地味だが。なんと驚くなかれ。レベルは二なんだぜ!」
「へぇ……やるじゃないか」

 【投擲】は武器を投げる際に命中に補正が掛かるスキルだ。
 投げる物によっては相手を無力化したり暗殺にも使える。派手さはないが堅実で使い道が多い。

 そして彼は今レベル二と言っていたが。実はスキルも成長する。
 条件は今のところ諸説あるが。長く使い続けるのが重要なのらしい。
 レベルが上がると、スキルは様々な面で性能が向上するのだ。
 
 歳が若いとスキルを習得する機会が多いが、逆にレベルが上がり辛いと聞く。
 Dランクでレベル二のスキル持ちは、かなり優秀といえるだろう。
  
「私の方は【収納」スキルね。こっちも地味だけど。結構レアなんだから」

 カミアは手を伸ばして空間を裂き、杖を取り出す。
 【収納】はかなりレアなスキルだ。Aランクぐらいか。
 レベルが一だと幅が小さい物しか入れられないが。荷物が減るというのはそれだけで大きい。

 なるほど、武器はいつでも取り出せるから持ち歩いていないんだな。
 それはそれで奇襲に弱そうだが。あえて隙を作るのも立派な戦術と聞く。

「それで、肝心の兄さんは何が得意なんだ?」
「俺か……? 俺は……」

 むむむ。これは逃げられない。
 さて、どうするか。とりあえず目の前にあった石を拾う。
 
 ちょうど近くに穴が湧いている。 
 死を超越せし者との戦いで使ったアレを使うか。
 
 穴に向かって石を投げ捨てる。
 多分、二人には突然消えたように映るはずだ。

「石が無くなった!? これが兄さんのスキルか!」
「わお。もしかして私と似たスキルなのかしら?」
「……かもしれないな」

 このダンジョンを生成する能力がもしスキルだとすれば、かなりレアなのは確かだ。
 【収納】と違うのは一方通行で出し入れができないところか。便利なようで不便も多い能力だ。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

強奪系触手おじさん

兎屋亀吉
ファンタジー
【肉棒術】という卑猥なスキルを授かってしまったゆえに皆の笑い者として40年間生きてきたおじさんは、ある日ダンジョンで気持ち悪い触手を拾う。後に【神の触腕】という寄生型の神器だと判明するそれは、その気持ち悪い見た目に反してとんでもない力を秘めていた。

寝て起きたら世界がおかしくなっていた

兎屋亀吉
ファンタジー
引きこもり気味で不健康な中年システムエンジニアの山田善次郎38歳独身はある日、寝て起きたら半年経っているという意味不明な状況に直面する。乙姫とヤった記憶も無ければ玉手箱も開けてもいないのに。すぐさまネットで情報収集を始める善次郎。するととんでもないことがわかった。なんと世界中にダンジョンが出現し、モンスターが溢れ出したというのだ。そして人類にはスキルという力が備わったと。変わってしまった世界で、強スキルを手に入れたおっさんが生きていく話。※この作品はカクヨムにも投稿しています。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?

桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」  その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。  影響するステータスは『運』。  聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。  第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。  すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。  より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!  真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。 【簡単な流れ】 勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ 【原題】 『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

これダメなクラス召喚だわ!物を掌握するチートスキルで自由気ままな異世界旅

聖斗煉
ファンタジー
クラス全体で異世界に呼び出された高校生の主人公が魔王軍と戦うように懇願される。しかし、主人公にはしょっぱい能力しか与えられなかった。ところがである。実は能力は騙されて弱いものと思い込まされていた。ダンジョンに閉じ込められて死にかけたときに、本当は物を掌握するスキルだったことを知るーー。

無能扱いされた実は万能な武器職人、Sランクパーティーに招かれる~理不尽な理由でパーティーから追い出されましたが、恵まれた新天地で頑張ります~

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)
ファンタジー
鍛冶職人が武器を作り、提供する……なんてことはもう古い時代。 現代のパーティーには武具生成を役目とするクリエイターという存在があった。 アレンはそんなクリエイターの一人であり、彼もまたとある零細パーティーに属していた。 しかしアレンはパーティーリーダーのテリーに理不尽なまでの要望を突きつけられる日常を送っていた。 本当は彼の適性に合った武器を提供していたというのに…… そんな中、アレンの元に二人の少女が歩み寄ってくる。アレンは少女たちにパーティーへのスカウトを受けることになるが、後にその二人がとんでもない存在だったということを知る。 後日、アレンはテリーの裁量でパーティーから追い出されてしまう。 だが彼はクビを宣告されても何とも思わなかった。 むしろ、彼にとってはこの上なく嬉しいことだった。 これは万能クリエイター(本人は自覚無し)が最高の仲間たちと紡ぐ冒険の物語である。

削除予定です

伊藤ほほほ
ファンタジー
削除します

処理中です...