ギルドを追放された【ぼっち】だけど、スキル【自動生成ダンジョン】がSSSランクの魔剣や友人を生み出してくれました。

お茶っ葉

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19話 俺の名は!

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「何、ですか、この……重圧は。……余裕をかましている場合では、ありませんネ」

 骸骨の反応が変わる。ふざけた様子も遊びも無くなった。
 杖の先端に闇を集めて強固な防御結界を、俺の攻撃を警戒している。

「フラン、あの結界が厄介だ。奴の動きを止めるぞ。同時に攻める!!」
「はい! 炎帝の剣――フランベルクの名に恥じぬ働きをしてみせます!」
「炎帝、カッコいい冠じゃねぇか。今、考えたのか?」
「マスターの勇姿を見ていたら。少しだけ思い出したんです。過去にそう呼ばれていた気がします!」
 
 二手に分かれて、奴の集中を掻き乱す。
 チャンスは一度だけでいい。一撃さえ与えられれば勝負は決する。
 俺の腕に掛かる重みが教えてくれるのだ。力の変貌を。希望の灯火を。

「死人よ。盾となれ。我の詠唱の時間を稼ぐのです」

 街中の死人たちが四方から集まって来る。
 フランが手にした石を投げつけた。闇の結界に阻まれ弾かれる。
 
「こ、このおチビちゃんは。詠唱の邪魔を……悪戯っ子が過ぎますゾ……!!」
「わわっ……!」
「させません!」

 フランを狙った黒い炎を、クレルが結界で防いでくれる。

「――皆さん、目を覚ましてください!! 例え、邪悪なる闇に取り込まれていようと。それでも、今、目の前で戦っている戦士の姿が見えているはずです! どうか忘れないで。貴方たちに救いの手を差し伸べている人がいる事を。負けてはいけません。戦うのです!!」

 クレルは想いを詩に乗せる。
 透き通る美しい声が闇の霧に覆われた街を包み込む。

 死人たちの動きが止まる。数人が骸骨の身体に纏わりつく。
 その中にはベールの姿もあった。死して尚。支配者に抗う。

「な、何故だ、何故死人たちが我に歯向かう!? その忌々しいエルフの詩がそうさせたのか!?」
「それだけではありません! カイルさんの彼らを無念に想う気持ちが、心が。彼らに本当の敵が誰なのかを知らしめたのです!!」

 好きでこんな奴に操られている人間はいない。
 俺にはハッキリと見えた。一人一人の生前の姿が。
 ああ……救ってみせるとも。こんな俺を信じてくれてありがとう。

「おのれ……計画が台無しではないか。こうなればやがて危険分子になり得る貴様だけは消しておかねバ!」

 完全にこちらに矛先が向いている。
 凄まじい殺気。魔力の塊が可視化され。たった一人を滅ぼす為に生み出される。

「我が最大の魔術シャドウフレア。魂ごと消して差し上げましょう」
「カイルさん! くっ、これ以上の詩は……フラン! どうかカイルさんを……!!」

 クレルが叫ぶ。俺には彼女のような攻撃から身を護る術がない。
 フランのような身体能力も無い。一撃に賭けている現状、魔剣の力を無駄にできない。

「オヤオヤ、打つ手無しですか。諦めるとは潔いですね」

 勝利を確信して骸骨が嗤う。

 俺は動かない。
 立ち止まり。迫り来る魔力の塊を睨み続ける。

 何故なら――逃げる必要なんてないからな!!

 シャドウフレアが直前で消失した。

「ば、馬鹿なぁ!? 我が最大の魔術を相殺しただと!?」
 
 骸骨の顎が驚きで外れる。

「……今日はいつにも増して大きな穴だな。普段は鬱陶しいだけだが。今回ばかりは助かったぞ」
「カイル……さん? 今のは一体……!」

 俺の目の前に浮かぶのはダンジョンへの入り口だ。
 コイツは俺の周囲に無数に定期的に湧き続けるのだが。
 地面や壁。天上から何もない空間に至るまで。場所もこちらの都合も関係ないのだ。

 奴の魔術は先程、ダンジョンの奥へと吸い込まれていった。そうなるよう誘導した。
 そしてそれが見えているのは俺とフランだけ。穴は限られた人物にしか見えないらしい。
 これは推測だが。穴の存在の認知と、俺との関係性が重要なのだろう。

 クレルにはそういえばまだ話していなかったな。彼女も目を見開かせて驚いている。

「いい事を教えてやる骸骨! 今しがた俺が使った秘術は吸い込んだ魔力をそのまま倍にして返す反射技だ! これからお前はお前自身の魔術で滅びるんだよ!!」
「それは誠か!?」

 もちろん嘘だ。
 だがそれを否定する材料を骸骨は持たない。
 目の前で最大技を消したという結果だけが残されている現状。
 
 奴は俺の言葉を鵜呑みにするしかない。

「ムムム……結界を前方に集めなくては……! 流石に二倍は受け止め切れる気がせヌ」
 
 骸骨が素直に杖を前にして、全方位の結界を指向性のあるものにすり替えた。
 反射を恐れて前だけに集中しており、当然、背中ががら空きだ。

「後ろはもらいました!」

 すかさずフランが足元を目掛けて蹴りを放つ。
 俺ばかりに気を取られていたのが運の尽き、奴はもう一人の人物を忘れていた。
 その剥き出しになった骨でフランの怪力を防げるはずがない。後方に姿勢が崩れる。 

「いい加減にしなさい! このおチビ――――」
「おいおい、お前の敵は一人じゃないだろう!?」

 フランベルクを握り。奴の懐に滑り込む。
 気合一閃。足を踏み出し。この一撃に全てを乗せるつもりで。
 
 死人たちもそれに従う。
 四肢を拘束され骸骨が慌てて俺を視界に入れる。
 だがもう遅い。その表情が、恐怖に引き攣っているようにも思えた。

「しまっ……た……!?」
「犠牲になった人たちの無念を、その身に味わいやがれええええええええええ!!」

 引き絞った剣先を死を超越せし者の胸に押し込む。
 紅蓮の炎が遅れて咲き乱れた。腐り果てた肉体の内側から怨念をも焦がす。

「グオオオッ……こ、この炎は。これまでの比では無い……き、希望に、満ち溢れておる!!」
「当然です。マスターの歩む道はフランが照らします。この程度の闇などに塗り潰せるほどヤワなものではありません!」
「……貴様は……一体……何者なのだ……!? もしや、英雄か……? それとも……!」

 死を超越せし者が問いかけてくる。
 冥土の土産だ。そんなに知りたきゃ教えてやる。
 
「俺は、俺の名はカイル・バートル!! 魔剣、炎帝フランベルクの使い手にして、ただのしがない――――旅人だ!!」
「ぐ…オオオオオオ……まさ……か……我が……旅人風情に……敗れる……とワ……だが……その名、魂に刻み付けたぞ。そして……後悔するがよい……必ずや我が主君が……貴様を……!!」
「それはこちらの台詞だ。冥府でテメェの大将に、首を洗って待っていろと伝えて来い!!」
 
 剣を引き抜き、回転。刹那に骸骨の首を弾き飛ばした。
 地面を転がっていき。そして眼の奥の輝きが徐々に失われていく。

「愚か、な……我が主は……洗う首など……無い」

 くだらない捨て台詞を吐いて。奴は怨念と共に消滅した。
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