未完成のロボット

りんくま

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ガチャン、ガチャン、ガチャン。
ブリキでできたロボットが、真っ直ぐな道を歩いて行く。

ガチャン、ガチャン、ガチャン。
ただ、真っ直ぐに、前を向いて歩いて行く。

ガチャン、ガチャン、ガチャン。
右手、左手を振って、一歩一歩歩いて行く。

一人の博士が、ロボットを作った。
だけど、博士はロボットを完成させる事が出来なかった。だけど、ロボットは、なぜ未完成だと言われるのか意味が判らなかった。

「お前は、手も足も動かせる。だけど今はまだ完成しているわけではないんだよ」
「博士、私は手も足も動かせます。命令に従って仕事をする事も出来ます。なのに未完成だと言うのですか?」
「そうだ、未完成だ」

ロボットは、毎日仕事をした。博士の指示を守って、いろんな仕事をした。

「博士、荷物を届けてまいりました」
「博士、小屋の屋根の修理が終わりました」
「博士、手紙を送ってきました」
「博士、材料を集めて買ってきました」

何も失敗をしたことはなかった。任された仕事は、いつも通り完璧に終わらせていた。

「博士、いつになったら私は完成するのですか?」

博士が、ロボットのカラダを整備する度に聞いていた。博士の答えは、いつも同じだった。

「まだ、完成していないよ」

1年たっても答えは一緒だった。
2年たっても答えは一緒だった。
3年、4年、5年………10年たっても答えは変わらなかった。

ただ一つ変わった事もあった。
博士の身体が年数を重ねるごとに年老いていった。病気に何度もかかった。
遂に、博士はベッドの上で寝たきりになってしまった。

「博士、いろんな事ができるようになりました。いろんな事を覚えました。私は、まだ未完成なのでしょうか?」
「まだ、完成していないよ」

ロボットは、博士に残された時間がもうない事が理解できた。だけど博士の答えは、変わらなかった。

「博士、私はいつ完成するのでしょうか?」

博士は、だんだんと起きている時間が少なくなった。起きている時に博士に尋ねても、答えは教えてくれなかった。

「お前の完成まで、生きていることは難しいようだ。私が眠りについたら、この道を真っ直ぐに進みなさい」

そう言うと博士は眠くなったと目を瞑る。

「真っ直ぐに進んでどこに行けば良いのですか?」

眠そうな博士に問いかけるが、なかなか返事が返ってこない。

「博士、行先を教えてください」

何度も問いかけ、博士は眠たそうにゆっくり答えた。

「そのうち…どこに…行けば………わか…る……」

そう言って、博士は眠りについた。
行先を教えて欲しかったけれど、博士はもう教えてくれることはなかった。

どこまで続く道なのかも解らない、目的地も解らない、いつまで歩いて行くのかも解らない。だけど、博士から言われた仕事だから、行かなくてはいけない。

ガチャン、ガチャン、ガチャン。
ガチャン、ガチャン、ガチャン。

ロボットは、一本の道を歩き始めた。道は続く、どこまでも続く。ロボットは、一人道を歩いて行く。










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