とうちゃんのヨメ

りんくま

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2章 楔

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最初は、兄さまに一番近しい人。父さまが気にかける人。そういった印象だった。自分というものを諦めた俺からすれば、羨ましい立場であり、疎ましい存在でもあった。勝手に自分を卑下し、不幸面をしている。俺からすれば、選べる自由が有るにも関わらず、勝手に自分を見下して、かわいそうをアピールしているだけじゃないかと思っていた。

「藍之介君って、お箸の使い方綺麗だね」

当たり前だ。ちゃんとしなかったら母さまに叱られるから。

「今日は、デザートにみかん入りの乳寒作ってみたんだけど、甘いの嫌いじゃないなら是非食べて」

差し出されたスプーンを受け取り、一口掬って口に運ぶ。優しい甘さと冷たさが口に広がってくる。

「この前、コンビニで売ってるのを見かけて、自分で作れそうだから試しに作ってみたんだけど、ちゃんと美味しく出来てよかった」

母さまは、女だから表舞台に立てない。だから、旧家復興の為に自分の血である俺を使ってタニマチに取り入っている。また、自分の女としての慰みに利用する。

タニマチは、母さまの擁護を建前に、世間では許されない欲を俺に求め、俺を使用する。

父さまは、母さまへの謝罪の為に、俺を指導することで贖罪としている。

ただ、みんな俺を道具として使うだけだ。どうして君は、俺に求めない?ただ、側にいてくれるだけ。ただ、隣で笑いかけてくれるだけ。ただ、昼飯を一緒に食べるだけ。何も見返りを求めてこない。

「藍之介君、いつも残さず食べてくれてありがとう」

なぜ、お弁当を作ってくれる、君がお礼を言うの?

「おかずのリクエストって何かある?」
「……ハンバーグ」
「うん、ハンバーグだね。楽しみにしててね」

なぜ、君はそんなに眩しい笑顔で笑いかけてくれるの?
当たり前のように、自然に君は俺の隣にいてくれる。

男に抱かれた翌日、君は俺を見つけ笑顔になる。男を抱いた翌日も、君は笑顔のまま俺に話しかける。母さまと身体を重ねた翌日でさえ、君の笑顔は変わらなかった。

君だけが、俺に見返りを求めない。俺は、与えられている。俺は何を返せば良い?放課後、教室で眠る彼を見つけ、近づいた。頬にそっと唇を落とす。

「うへへ」

幸せそうに可笑しな笑いを浮かべている。ポケットから手に出したキャンディを彼の手のひらに握らせた。

「…いつも、ありがとう」

彼を起こさないように教室を後にした。

「俺、見ちゃった!」

ニヤニヤしながら俺を見る誰かわからない生徒が声をかけてきた。









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