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1章 絆
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藤吉は、牛乳パックにストローを刺して、ジュジュっと一気に飲み干した。骨折を早く治したいという思いから、カルシウムを摂取する目的で選んだだけでもある。藤吉がゴクゴク牛乳を飲んでいる側で、藤原は逮捕された犯人の情報について話し始めた。
「犯人は、軽犯罪請負人だった」
「犯罪請負人って何ですか?」
入院中の藤吉を見舞いに来た藤原は、信が来る前に犯人について藤吉に話しておきたかった。
「刑務所から出ると直ぐに何らかの軽犯罪を犯す。無銭飲食、万引き、窃盗。そして直ぐに逮捕され刑務所に出戻る。これを繰り返しているんだ」
「何でそんな事を?」
「刑務所に入れば、衣食住が補償される。檻の中っていう拘束はあるが、路上生活より楽だろう?わざわざ仕事を探すとしても、犯罪歴が邪魔をして簡単には仕事も見つからない。だけど生活するには金が必要」
「それで、軽犯罪を繰り返す…」
「例え犯罪者であっても、国は非人道的な事はできない。管理された生活であっても、寝床と温かい食事、模範生として過ごしていれば、最低限の娯楽もある。奴らはそれが欲しいんだ」
無銭飲食や万引き、無賃乗車などを繰り返し、刑務所へ収監される。だけど、なぜ今回は、傷害事件を起こしたのか?藤吉には、それが理解できなかった。
「なら、傷害事件なんて犯す必要なんてなかったんじゃないんですか?」
「だから、軽犯罪請負人っと言っただろう。犯人は、既に執行猶予中の身柄だったんだよ」
「どういう事何ですか?」
「刑務所に入れない事が、一番の罰だったんだよ。国も税金で犯罪者を保護したい訳じゃない。だから、一番望まない罰を下した。あのようなタイプは、闇ブローカーにとっては、リスクの少ない手駒だ。軽犯罪程度なら、喜んで請け負う。執行猶予中に、また罪を重ねれば直ぐにでも刑務所へ戻れるからな」
あまりの身勝手な理屈に、藤吉は呆れ返る。
「今は、ペラペラと罪を認めていると警察からも連絡あったよ」
「なら、頼んだ人間については、どう証言しているんですか?」
藤原は、首を左右に振った。
「何も証言をしていない。ただ、楽しそうに信君がしていたから、不幸になれば良いと妬みから突き落としたとだけ。殺意はなかったと、幸せそうだったから、少し怪我をしたら苦しむんじゃないかと思った、そう証言しているそうだ」
「それじゃあ、信の安全はまだ保証されていないじゃないですか」
藤吉は、右腕の拳を握りしめて、持っていた空の牛乳パックを潰した。
「そういう事だ。これ以上の言質は取れない、証言との食い違いもない。警察は単独犯として処理をする」
「くっそう…。大先生、この事信には…」
「ああ、ずべてを伝える気は、無い。だが、雪君には伝えるぞ」
「はい…。わかりました」
藤原も藤吉も、一つ理解できない事があった。
なぜ、織田 久美子が信に執着してくる。
「藤吉、信君の過去について探っても構わないか?」
「信が、傷つくような事がなければ構いません。それが、必要って事ですか?」
藤原は、考え込むように顎を指でさすり、表情を顰める。
「あの織田 久美子の性格から、信君に好意的ではないのは事実だ。でも、自らが動いて接触をしている。これも事実だ。行動に矛盾しているのなら、何か信君で利益が発生する事由があると考えるのが妥当だろ?」
藤吉は、性格が真っ直ぐ過ぎるため、人の裏を読む事が苦手だ。
「わかりました。俺にできる事が有れば、言ってください。信を守るため、ぜひお願いします」
「了解」
藤原は、藤吉に向けて拳をを突き出す。藤吉も、その拳に自分の右腕の拳を突き合わせた。
「犯人は、軽犯罪請負人だった」
「犯罪請負人って何ですか?」
入院中の藤吉を見舞いに来た藤原は、信が来る前に犯人について藤吉に話しておきたかった。
「刑務所から出ると直ぐに何らかの軽犯罪を犯す。無銭飲食、万引き、窃盗。そして直ぐに逮捕され刑務所に出戻る。これを繰り返しているんだ」
「何でそんな事を?」
「刑務所に入れば、衣食住が補償される。檻の中っていう拘束はあるが、路上生活より楽だろう?わざわざ仕事を探すとしても、犯罪歴が邪魔をして簡単には仕事も見つからない。だけど生活するには金が必要」
「それで、軽犯罪を繰り返す…」
「例え犯罪者であっても、国は非人道的な事はできない。管理された生活であっても、寝床と温かい食事、模範生として過ごしていれば、最低限の娯楽もある。奴らはそれが欲しいんだ」
無銭飲食や万引き、無賃乗車などを繰り返し、刑務所へ収監される。だけど、なぜ今回は、傷害事件を起こしたのか?藤吉には、それが理解できなかった。
「なら、傷害事件なんて犯す必要なんてなかったんじゃないんですか?」
「だから、軽犯罪請負人っと言っただろう。犯人は、既に執行猶予中の身柄だったんだよ」
「どういう事何ですか?」
「刑務所に入れない事が、一番の罰だったんだよ。国も税金で犯罪者を保護したい訳じゃない。だから、一番望まない罰を下した。あのようなタイプは、闇ブローカーにとっては、リスクの少ない手駒だ。軽犯罪程度なら、喜んで請け負う。執行猶予中に、また罪を重ねれば直ぐにでも刑務所へ戻れるからな」
あまりの身勝手な理屈に、藤吉は呆れ返る。
「今は、ペラペラと罪を認めていると警察からも連絡あったよ」
「なら、頼んだ人間については、どう証言しているんですか?」
藤原は、首を左右に振った。
「何も証言をしていない。ただ、楽しそうに信君がしていたから、不幸になれば良いと妬みから突き落としたとだけ。殺意はなかったと、幸せそうだったから、少し怪我をしたら苦しむんじゃないかと思った、そう証言しているそうだ」
「それじゃあ、信の安全はまだ保証されていないじゃないですか」
藤吉は、右腕の拳を握りしめて、持っていた空の牛乳パックを潰した。
「そういう事だ。これ以上の言質は取れない、証言との食い違いもない。警察は単独犯として処理をする」
「くっそう…。大先生、この事信には…」
「ああ、ずべてを伝える気は、無い。だが、雪君には伝えるぞ」
「はい…。わかりました」
藤原も藤吉も、一つ理解できない事があった。
なぜ、織田 久美子が信に執着してくる。
「藤吉、信君の過去について探っても構わないか?」
「信が、傷つくような事がなければ構いません。それが、必要って事ですか?」
藤原は、考え込むように顎を指でさすり、表情を顰める。
「あの織田 久美子の性格から、信君に好意的ではないのは事実だ。でも、自らが動いて接触をしている。これも事実だ。行動に矛盾しているのなら、何か信君で利益が発生する事由があると考えるのが妥当だろ?」
藤吉は、性格が真っ直ぐ過ぎるため、人の裏を読む事が苦手だ。
「わかりました。俺にできる事が有れば、言ってください。信を守るため、ぜひお願いします」
「了解」
藤原は、藤吉に向けて拳をを突き出す。藤吉も、その拳に自分の右腕の拳を突き合わせた。
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