とうちゃんのヨメ

りんくま

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1章 絆

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初めて履いたヒールのせいか、トウちゃんの目の前で足がもつれてしまった。そのまま、トウちゃんにダイブしてしまった。とっても恥ずかしくってたまらないんだけど、このままずっと抱きついているわけもいかず、顔を上げた。

「藤吉君、お迎えに来たよ?」

雪ちゃんからは、トウちゃんの顔を見上げて、目をしっかりと合わせて声をかけるようにと言われてたけど、ちゃんとできただろうか?

「ちゃんと、藤吉君って呼ぶんだよ」

雪ちゃんは、トウちゃんっていつものように呼ばないようにと注意してたっけ?

トウちゃんの瞳が、大きく見開いていくのがわかる。変な格好してるよね、解ってるんだ僕も。雪ちゃん曰く、男の娘と書いておとこのこって言うんだよって言ってたけど、いつもの僕じゃないのは解ってるんだ。

トウちゃんの顔がだんだん近づいてきて、おでこに唇が触れた。何、何なの?今、トウちゃんチュウした?僕に?

お姉さんたちが、もの凄い怖い顔で僕を睨んできた。思わずトウちゃんの腕の中で身をすくめた。

「俺のヨメなんで」

トウちゃんは、僕の事をお姉さんたちにヨメって言い切ってしまった。ヨメ…ヨメ…。何度も言葉の意味を考える。ヨメってお嫁さんのこと?パニックになる僕の肩を抱き寄せ、雪ちゃんの方に向かって歩き出した。ちらりとお姉さんたちを見ると、悔しそうな顔をして僕を見つめていた。トウちゃんを見上げ、満面の笑顔だったから、僕も笑ってみせた。

あぁ、これって僕もわかる。優越感って感じだ。トウちゃんの一番は、僕だって言ってもらったんだ。燻っていた心のモヤモヤが晴れていった。

「雪、お前良い仕事してるな」
「だろう?」

トウちゃんは、僕の頬にも唇を近づけてチュウをしてきた。ちょっとだけ恥ずかしいけど、僕も嬉しかった。調子に乗るトウちゃんに、雪ちゃんがキレてゲンコツをトウちゃんに落とした。

「あのねぇ、俺も信君とイチャイチャしたいの!藤吉ズルイよ」

ホテルから離れた途端に、雪ちゃんも僕の手を差し出して僕の手を握る。トウちゃんと雪ちゃんの間は、とても心地良かった。改めて、僕の居場所は、ここ何だと実感した。

「さて、宿に戻ってまったりしますか」

トウちゃんは、そう言って車に乗り込む。雪ちゃんが後部座席の扉を開け、僕を先に車に乗せ、そのまま一緒に乗り込もうとしたので、トウちゃんが慌ててストップをかけた。

「雪、お前は助手席だ」
「エェ!」
「えぇじゃねぇ!旅館までのナビをお前がするのは、当たり前だ。俺、宿までの道知らん。それとも、お前が運転するか?」

唇を尖らせて、仕方ないと雪ちゃんは、助手席に乗り込んだ。
窓を少しだけ開けると、気持ち良い風が車の中に入ってきた。

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