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1章 絆
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僕は、今とてもドキドキしている。何故なら、いきなりトウちゃんの職場訪問をすることになったからだ。
「トウちゃん、僕なんかが職場に行って、邪魔にならない?」
「大丈夫だ!お前の顔が見たいんだってさ。お礼がてら挨拶しておけ」
トウちゃんは、弁護士事務所に勤める行政書士だ。高校生の時に、国家資格に合格したらしい。そして早くキャリアが欲しいと、高校卒業後に今の事務所に就職した。独立したての若い弁護士さんが、立ち上げた法律事務所で、トウちゃんも飛び込みで面接に行ったらしい。
「大先生、信連れて来た」
事務所に入ると、トウちゃんは大きな声を出した。事務所の奥から、パリッとしたスーツに身を包んだ優しそうな笑顔を浮かべた男性が現れた。
「はじめまして、藤原 大と言います。大きいと書いてマサルと読むので、皆からは、大先生と呼ばれています」
「はじめまして、織田 信と言います。いつも叔父がお世話になっています」
「おじ…間違っちゃいないが…」
叔父という言葉に剥れるトウちゃんをお茶を淹れて運んで来た事務員さんが笑った。
「藤吉君、自己紹介なんだから、当たり前でしょう。私は、この人の妻で陽子と言います。信ちゃんと呼んでも良いかしら?よろしくね」
「ハイ、構いません。こちらこそ、よろしくお願いします」
僕は、トウちゃんと出会う前、父親の親戚に引き取られていた。僕が、未成年であるが為、その親戚が、未成年後見人として裁判所から定められていたらしい。だけど、僕は直ぐに施設に入れられ、実際ほとんど世話をして貰った記憶はない。トウちゃんが成人したと同時に、親戚の後見人の資格をトウちゃんが譲り受け、その手続きをしてくれたのが大先生だと聞いている。
「信君、今は幸せですか?」
「ハイ、トウちゃんが僕の家族になってくれて、毎日がとても幸せです」
「うん、その笑顔が見れて良かった。私も何か有れば、相談に乗るから遠慮なく訪ねて来なさい」
「信ちゃん、遠慮なんてしなくて良いからね、遊びにきてね」
陽子さんは、涙もろいのか目尻にハンカチを当てた。トウちゃんの職場の人は、とっても暖かい優しい人達だった。
だけど、この時僕は、どれだけ大先生達に守られていたか、知らなかった。
「トウちゃん、僕なんかが職場に行って、邪魔にならない?」
「大丈夫だ!お前の顔が見たいんだってさ。お礼がてら挨拶しておけ」
トウちゃんは、弁護士事務所に勤める行政書士だ。高校生の時に、国家資格に合格したらしい。そして早くキャリアが欲しいと、高校卒業後に今の事務所に就職した。独立したての若い弁護士さんが、立ち上げた法律事務所で、トウちゃんも飛び込みで面接に行ったらしい。
「大先生、信連れて来た」
事務所に入ると、トウちゃんは大きな声を出した。事務所の奥から、パリッとしたスーツに身を包んだ優しそうな笑顔を浮かべた男性が現れた。
「はじめまして、藤原 大と言います。大きいと書いてマサルと読むので、皆からは、大先生と呼ばれています」
「はじめまして、織田 信と言います。いつも叔父がお世話になっています」
「おじ…間違っちゃいないが…」
叔父という言葉に剥れるトウちゃんをお茶を淹れて運んで来た事務員さんが笑った。
「藤吉君、自己紹介なんだから、当たり前でしょう。私は、この人の妻で陽子と言います。信ちゃんと呼んでも良いかしら?よろしくね」
「ハイ、構いません。こちらこそ、よろしくお願いします」
僕は、トウちゃんと出会う前、父親の親戚に引き取られていた。僕が、未成年であるが為、その親戚が、未成年後見人として裁判所から定められていたらしい。だけど、僕は直ぐに施設に入れられ、実際ほとんど世話をして貰った記憶はない。トウちゃんが成人したと同時に、親戚の後見人の資格をトウちゃんが譲り受け、その手続きをしてくれたのが大先生だと聞いている。
「信君、今は幸せですか?」
「ハイ、トウちゃんが僕の家族になってくれて、毎日がとても幸せです」
「うん、その笑顔が見れて良かった。私も何か有れば、相談に乗るから遠慮なく訪ねて来なさい」
「信ちゃん、遠慮なんてしなくて良いからね、遊びにきてね」
陽子さんは、涙もろいのか目尻にハンカチを当てた。トウちゃんの職場の人は、とっても暖かい優しい人達だった。
だけど、この時僕は、どれだけ大先生達に守られていたか、知らなかった。
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