どうぞ、お召し上がりください。魔物の国のお食事係の奮闘記

りんくま

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 どうも、サトシです。
 俺は、ただいま囚われたお姫様のように、ドデモスというオッさんに軟禁された生活を送っています。

 どうやら俺は、瞬間的に操られてしまったらしい。赤い石のついたチョーカーを首に巻かれた瞬間、俺の頭は「ドデモス様、バンザーイ!超大好き」って訳わからなくなってたもん。

 オッさんに命じられるまま、ドーリンに、何度もちゅうをしてたし、俺の黒歴史がまた一つ増えてしまったよ。

 俺を守ろうと耳元で泣き叫ぶドーリンの声を聞きながら、唇に髭の感触で意識が覚醒し正気に戻った俺。あの状態で飛び退かなかった俺の判断を誉めて欲しいと思う。

 冷静になるため、俺はドーリンに抱きついたまま、状況を整理したさ。

「ドーリン……俺、なんでお前にちゅうしてんの?」

 バレたらやばいと思ったから、ドーリンにしか聞こえないように顔を擦り寄せ耳元で囁いた。がっくりと力なく下を向いたドーリンは、俺が正気に戻った事に気がついてくれたさ。

「サトシ、正気に戻ったのか?」
「うん、俺操られていたみたい」

 俺の表情は、オッさんに見えないから俺の肩でドーリンの口元を隠すように抱きついてさらに距離を縮める。

「そのまま操られたフリをして、私の今からすることを黙って聞いておくのだぞ」

 うん、状況把握は大事だもんね。頬を擦り寄せ、「了解」と呟いた。

 俺の首に巻かれたチョーカーは、相手を支配する魔術具らしい。ということは、ドミニクさんも操られているってこと?現場のおっちゃんたちも?

 監視係の理不尽な暴力にも逆らえなかったのは、そういうことなのね。ふーん。

 俺も操られはしたけど、お腐れ様スキルのお陰で、魔術具が壊れたから正気に戻ったってことか。なるほどね。

 ドーリンは、叔父上と呼ぶオッさんに俺を解放してくれるよう頼みつつ、現状報告を取り入れながら俺が理解できるように叫び続けた。

「俺の仲間は、大丈夫!俺も一緒にドーリンと戦うよ」
「……感謝する」

 俺たちはお互い身体を擦り寄せ、意志を確かめ合った。側から見たら男同士のキモイ構図だったろうけどね。

「お、叔父上……サトシの下げ渡しを望みます」

 オッサンが、悩みつつもドーリンに俺の下げ渡しの許可を出した。

 こうして俺の軟禁生活が始まったワケだけど………さてどうしよう。

 無茶はするなとドーリンに釘を刺されたが、アレスたちにも連絡を取りたいんだよね。

 俺を部屋で監視するのは、ドミニクさんだ。彼の首元にも赤い石のついたチョーカーが装着されている。

 物は試しにと俺は立ち上がると、ドミニクさんに近づいた。ピクリと眉を上げるドミニクさんは、黙って俺の様子を見ている。

 無表情、無表情。悟られない、悟られない。

 ドミニクさんの側に立って、そっと赤い石に右手を添える。

 壊れろ、壊れろ、壊れろ、壊れろ。

 破壊、分解、腐敗、解呪、崩壊。

 ありとあらゆる言葉を思い浮かべ、魔術具の破壊を試みる。

「う、うぅ」

 息を荒くして汗だくになるドミニクさんが、呻きながら膝をついた。

 呼吸を整えるように肩で息をしているけど、やり過ぎた?

「サトシ様、いったい何をなさったのですか?」

 顔を上げたドミニクさんの表情は、困惑していた。

「どっち?」

 操られているのか、操られていないのか?前者で有れば、俺の言葉の意味はわからないだろう。

「……悪い夢から覚めた気分です」

 大きく息を吐きながら、ドミニクは笑った。

「正気に戻ってる?」
「……はい。コレはサトシ様のお力なのですか?」

 ドーリン!俺、無茶はしてないからね!取り敢えず、俺たちは、ドミニクさんという味方をゲットした。

 
 
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