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「ふんぬ」
根っこを使ってカニのように横に歩くトレントを大きなバトルアックスを振り翳し、伐採していく。別名『迷いの森』と呼ばれる森の入り口でアレスたちは、トレントを伐採していた。
トレント自体は、一体程度であれば、脅威となる魔獣ではない。根っこが脚のようになって移動するため、対策もせずに森の奥へ足を踏み入れてしまうと、必ず森の中を迷い彷徨う運命となる。
大事なのは、森の入り口にロープを貼り、そのロープを道標に奥へ進んでいくことだった。
アレスが、討伐し、討伐したトレントを木材として解体班が、枝などを切り落とし解体。解体されたトレントは、運搬班が、荷馬車へと運んでいく。
「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ。ワシらだけであれば、数人がかりで討伐せにゃ成らんが、さすがアレス殿というか、なんというか。頼りにさせてもらいますのじゃ」
「かまいませんよ。休み休み斧を振ってるので、大丈夫ですよ。それよりも、ゴンゾウさんたちも無理はしないでくださいね」
傍で、五人がかりでトレントに相対し幹に斧を打ち込むゴブリン衆。根と幹にを切り離す為に、ドカドカと斧を打ち込んでいた。
◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇
「さてと、アタシらは、焚き出しの準備ね」
「私とキキは、食材と薪の確保。ココは、釜戸の作成。サトシ殿は、お水を汲んできてくれるかしら?」
「了解!!」
「キュゥ?」
「もちろん、メルル様には、一番重要な役割が、ありますよ。サトシ殿の護衛です。出来ますか?」
「ギュギュ!!!」
玲は、上手いなと思った。カカにミッションを言い渡され、やる気に満ち溢れるメルルは、小さく拳を握りしめる。
「俺を守ってくれよ。メルル」
「キューキュィキュ」
実際、守護される立場であるのは、メルルなのだが、自分にも役割を与えられたことが、嬉しかったらしい。
玲は、カカの長女としての掌握術をここに見たのだった。
本日は、三十人近くいる大所帯。食事も大量に必要となる。かといって、人数分のきっちり人数分の食糧を用意するのは、弁当では、正直しんどい。
食材の現地調達は、重要なミッションの一つだった。
カカとキキは、狩猟の心得も有るらしく、弓矢を背負って森へ向かう。ウサギや鳥などを狩ってくると張り切って行った。
ココは、土属性の錬成が出来るらしく、煉瓦を作成して、簡易的な釜戸を作ってくれる。ポコン、ポコンと土から生み出される煉瓦を組んでいき、釜戸を作り上げていった。
「じゃあ、俺たちは、水を汲みに行こうか」
「キューキュー」
皮袋を持って、川沿いを上流へと歩いて行く。カカより、少し上流へ向かったところに、湧水が汲める水飲み場があるらしい。
玲は、川を覗きながら、てくてくと歩いて行った。
「結構、魚も生息してるんだな」
浅瀬に魚の背鰭が覗き見える。河原の石の大きさを確認して、玲は幼少時のことを思い出していた。
「ひょっとすると、ひょっとするかもな」
「キュイ?」
皮袋を水辺に置き、ズボンの裾を捲り上げるとジャブジャブと川の中に入って行く。
「キューキューキュー!」
「へへへ。危ないことは、しないから」
いきなり川に入っていった玲を嗜めるメルルを、指で撫でて宥めた後、足元の石をキョロキョロと見渡すと、川底の石を拾い小さな石だまりを作った。
「入り口を小さく、そして逃げられないようにっと」
仕上げに木の枝を乗せ、陰を作る。
「これでよしっと。こうしておくと、川魚が獲れたりするんだよ」
「キュイ、キュー………キュウ?」
「ん?どうしたんだ」
玲が、川魚捕獲罠を設置し終わった頃、メルルが首を伸ばして川の上流をじっとみつめ出した。
メルルが見つめる方向を額に手を当てて目を凝らして見る。
「なんだ?」
「キュッキュキュキュー」
「え?水飛沫?……水飛沫が、見えるって?何かが流れてくる?」
小さな水飛沫と共に何か声も聞こえてくる。
「け……て……アブッ……だれ……か」
水飛沫の中から見え隠れする影。玲は、川の中をバシャバシャと水飛沫の方へと走っていった。
「誰か、溺れている!」
小さな手がもがきながら、バシャバシャと水面から見え隠れし、今にも沈みそうな状態だ。
水に足を取られ、もつれそうになりながら、玲は走った。
「けて……アガッ……ボガッ」
「ガンバレ!沈むな!持ち堪えろ!」
バシャバシャともがく溺れている者へ、声をかけながら走った。玲の膝丈くらいの深さ、大人であれば溺れる深さではない。甲高い声から、小さな子供じゃないのだろうか?
必死で駆けつけ両手を伸ばし、水飛沫の中沈みそうになる者を胸に抱きかかえた。
「ハァ、ハァ、ハァ」
「ゴホッ、ゲホッ、ブハッ」
「大丈夫、だ、大丈夫………ん?」
玲の胸の中、咳き込みながら飲んだ水を吐き出しているが、溺れていたのは、どうやら人の姿ではないということが、腕の中の感触でわかった。
ハァ、ハァと息を整えつつ、溺れていたソレを抱えたまま川岸へと足を運ぶ。
「ハァ、ハァ、だ、大丈夫か?」
「ゲホッ……だ、だずが……だ……ゲホッ」
ゆっくりと降ろし、玲も隣にどかりと腰を降ろした。助けたそれを横目で見る。ほんのり肌色、丸いフォルム。お尻にくるんと丸まった短めの尻尾。
「あ、あり…がと……」
「そ、どういたしまして……子豚が言葉を喋ってる……」
「あ!……プギ?」
子豚は、溺れていた事で、自分の姿が人の姿ではなかった事を思い出したのか、子豚らしい鳴き声をあげて誤魔化そうとした。
「イヤ、さすがに遅いから」
思わず、子豚にツッコミを入れる玲だった。
根っこを使ってカニのように横に歩くトレントを大きなバトルアックスを振り翳し、伐採していく。別名『迷いの森』と呼ばれる森の入り口でアレスたちは、トレントを伐採していた。
トレント自体は、一体程度であれば、脅威となる魔獣ではない。根っこが脚のようになって移動するため、対策もせずに森の奥へ足を踏み入れてしまうと、必ず森の中を迷い彷徨う運命となる。
大事なのは、森の入り口にロープを貼り、そのロープを道標に奥へ進んでいくことだった。
アレスが、討伐し、討伐したトレントを木材として解体班が、枝などを切り落とし解体。解体されたトレントは、運搬班が、荷馬車へと運んでいく。
「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ。ワシらだけであれば、数人がかりで討伐せにゃ成らんが、さすがアレス殿というか、なんというか。頼りにさせてもらいますのじゃ」
「かまいませんよ。休み休み斧を振ってるので、大丈夫ですよ。それよりも、ゴンゾウさんたちも無理はしないでくださいね」
傍で、五人がかりでトレントに相対し幹に斧を打ち込むゴブリン衆。根と幹にを切り離す為に、ドカドカと斧を打ち込んでいた。
◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇
「さてと、アタシらは、焚き出しの準備ね」
「私とキキは、食材と薪の確保。ココは、釜戸の作成。サトシ殿は、お水を汲んできてくれるかしら?」
「了解!!」
「キュゥ?」
「もちろん、メルル様には、一番重要な役割が、ありますよ。サトシ殿の護衛です。出来ますか?」
「ギュギュ!!!」
玲は、上手いなと思った。カカにミッションを言い渡され、やる気に満ち溢れるメルルは、小さく拳を握りしめる。
「俺を守ってくれよ。メルル」
「キューキュィキュ」
実際、守護される立場であるのは、メルルなのだが、自分にも役割を与えられたことが、嬉しかったらしい。
玲は、カカの長女としての掌握術をここに見たのだった。
本日は、三十人近くいる大所帯。食事も大量に必要となる。かといって、人数分のきっちり人数分の食糧を用意するのは、弁当では、正直しんどい。
食材の現地調達は、重要なミッションの一つだった。
カカとキキは、狩猟の心得も有るらしく、弓矢を背負って森へ向かう。ウサギや鳥などを狩ってくると張り切って行った。
ココは、土属性の錬成が出来るらしく、煉瓦を作成して、簡易的な釜戸を作ってくれる。ポコン、ポコンと土から生み出される煉瓦を組んでいき、釜戸を作り上げていった。
「じゃあ、俺たちは、水を汲みに行こうか」
「キューキュー」
皮袋を持って、川沿いを上流へと歩いて行く。カカより、少し上流へ向かったところに、湧水が汲める水飲み場があるらしい。
玲は、川を覗きながら、てくてくと歩いて行った。
「結構、魚も生息してるんだな」
浅瀬に魚の背鰭が覗き見える。河原の石の大きさを確認して、玲は幼少時のことを思い出していた。
「ひょっとすると、ひょっとするかもな」
「キュイ?」
皮袋を水辺に置き、ズボンの裾を捲り上げるとジャブジャブと川の中に入って行く。
「キューキューキュー!」
「へへへ。危ないことは、しないから」
いきなり川に入っていった玲を嗜めるメルルを、指で撫でて宥めた後、足元の石をキョロキョロと見渡すと、川底の石を拾い小さな石だまりを作った。
「入り口を小さく、そして逃げられないようにっと」
仕上げに木の枝を乗せ、陰を作る。
「これでよしっと。こうしておくと、川魚が獲れたりするんだよ」
「キュイ、キュー………キュウ?」
「ん?どうしたんだ」
玲が、川魚捕獲罠を設置し終わった頃、メルルが首を伸ばして川の上流をじっとみつめ出した。
メルルが見つめる方向を額に手を当てて目を凝らして見る。
「なんだ?」
「キュッキュキュキュー」
「え?水飛沫?……水飛沫が、見えるって?何かが流れてくる?」
小さな水飛沫と共に何か声も聞こえてくる。
「け……て……アブッ……だれ……か」
水飛沫の中から見え隠れする影。玲は、川の中をバシャバシャと水飛沫の方へと走っていった。
「誰か、溺れている!」
小さな手がもがきながら、バシャバシャと水面から見え隠れし、今にも沈みそうな状態だ。
水に足を取られ、もつれそうになりながら、玲は走った。
「けて……アガッ……ボガッ」
「ガンバレ!沈むな!持ち堪えろ!」
バシャバシャともがく溺れている者へ、声をかけながら走った。玲の膝丈くらいの深さ、大人であれば溺れる深さではない。甲高い声から、小さな子供じゃないのだろうか?
必死で駆けつけ両手を伸ばし、水飛沫の中沈みそうになる者を胸に抱きかかえた。
「ハァ、ハァ、ハァ」
「ゴホッ、ゲホッ、ブハッ」
「大丈夫、だ、大丈夫………ん?」
玲の胸の中、咳き込みながら飲んだ水を吐き出しているが、溺れていたのは、どうやら人の姿ではないということが、腕の中の感触でわかった。
ハァ、ハァと息を整えつつ、溺れていたソレを抱えたまま川岸へと足を運ぶ。
「ハァ、ハァ、だ、大丈夫か?」
「ゲホッ……だ、だずが……だ……ゲホッ」
ゆっくりと降ろし、玲も隣にどかりと腰を降ろした。助けたそれを横目で見る。ほんのり肌色、丸いフォルム。お尻にくるんと丸まった短めの尻尾。
「あ、あり…がと……」
「そ、どういたしまして……子豚が言葉を喋ってる……」
「あ!……プギ?」
子豚は、溺れていた事で、自分の姿が人の姿ではなかった事を思い出したのか、子豚らしい鳴き声をあげて誤魔化そうとした。
「イヤ、さすがに遅いから」
思わず、子豚にツッコミを入れる玲だった。
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