33 / 59
33
しおりを挟む
「米キター!!」
玲は、手のひらの上に乗せた稲穂のかけらを握りしめて、歓喜した。
「探していた食材でしたか?」
「おう!おう!俺が探していた作物のひとつだ!」
満面の笑みでガッツポーズを繰り返し、玲は小躍りをしている。コカトリスは、クビを傾げたり、「ゴゴッ」と野太い鳴き声を出したりしながら、玲の周りを徘徊していた。
「ゴブリンさーん!ちょっとお話聞いても良いですかー」
玲は、柵の中に入っても良いと許可してくれたゴブリンの元へ駆け寄った。
「おー。何じゃい?どないしたんじゃい?」
大きな麦わら帽子を被り、額には大粒の汗をかいている。自身も忙しいだろうに、ニッカリと笑って手を止めて玲に返事を返してくれる。
「俺、サトシって言います。料理の材料を探していて、この、コカトリスのご飯になっている【ライス】?のことを教えてほしくて……お時間いただけますか?」
「おーおー、ゴンゾウの言っておったお客人じゃな?オイラは、ゴースケじゃ。………時間ちゅっても作業しながらじゃけどもええじゃろうか?」
「ゴースケさん!ありがとう!俺もお仕事手伝うよ!」
屈託ない笑顔を見せ手伝いを申し出た玲に、ゴースケは、ありがたく作業を手伝ってもらうことにした。
「アレスは、他に用事あるんだったら、そっちに行っていいよ?」
「俺は、サトシの守護として付いてきているので、一緒に作業を手伝いますよ」
「うへぇ、アレス殿も手伝ってくれるんかい?ありがたいのう」
コカトリスの餌やり、小屋の掃除、餌の搬入などを手伝ったのだが、なかなか重労働だった。
ヘッピリ腰ではあるが、一生懸命に荷物を運ぶ玲を見て、ゴースケは、力の入れ方や荷物の持ち方など丁寧に教えていく。玲も嫌な顔を一つもせずに、素直にゴースケのアドバイスを聞いていた。
「そっか【ライス】も【もろもろこし】もコカトリスの餌としてしか利用してないんだ」
「そうじゃのう、サトシや?もしかして、あれらを食べるつもりなんか?」
「うん、食べるよ。だから、【ライス】も【もろもろこし】も分けて欲しいんだ」
小屋の掃除をしながら、傍らに置いてあった米袋と乾燥させたトウモロコシを見つけ、玲は事情を説明し分けて欲しいと願い出た。
「分けてやるのは構わんぞ。好きなだけ持っていけ」
「あ、ありがとう!ゴースケさん」
無事米を手に入れることができ、玲の笑顔が綻んでいく。米は主食として食することもできるが、発酵食品としても多種多様に利用ができる。
「じゃけども、殻は、どないするんじゃ?」
「殻…あ、籾殻か!確か……石臼かなんかで脱穀するんだったよなぁ……」
玲は、歴史の授業で習った稲作について顎を撫でながら、思い出そうとする。
「収穫した稲を乾燥させ…千歯扱きで籾を脱穀して……石臼と杵でついて籾殻を落として精米するんだったかな?」
玲も専門的に学んだわけではないため、中学生レベルの知識しかない。
「ブハッ!サトシは、飛んだ田舎者じゃのう」
「い、田舎者!?」
玲からすれば、ど田舎の農村風景の中で、大きな麦わら帽子帽子を被った、ど田舎の住民そのもののゴースケに田舎者呼ばわりされ、驚きを隠せない。
世界は違えども、日本は、高層ビルが建ち並び、文明も化学も発展した先進国だ。
「おまえさん、全部、人の手で作業するつもりでおるんじゃろ?」
「あ……!操術」
「そうじゃ、聞いていれば、精米とまでの作業は、風の操術一つで終わる内容じゃねぇか。それを手間暇かけて作業するって時点で、ど田舎者じゃわい。カカカカカカ」
ゴースケは、小さな子供をあやすように玲の頭をくしゃくしゃっと撫でた。22歳ではあるが、ゴースケから見れば、少年にしか見えないため、どうしても子供のように扱ってしまう。
「ゴースケさんも操術使えるんだ」
「そうじゃ、オイラたちゴブリン族は、土と風の属性を使えるぞ。精米とやらは、風属性の操術で対応できるかのう」
「風属性……メルル様の属性の一つでもありますね」
「キュイ!」
ゴースケの話を聞き、玲の肩にちょこんと座っていたメルルが、片方の翼を上に上げて返事をした。
「メルル様も、覚える気まんまんなんじゃな」
ゴースケは、可愛らしく返事をしたメルルに笑顔で答えた。
ゴースケの作業がひと段落した後、精米についてゴースケが風の操術を教えてくれると願い出てくれた。
「ゴンゾウにも、出来る限り協力してくれと頼まれとるし、気にすんな。どうしても、お礼がしたいというんなら、オイラにも【ライス】で作った料理を食べさせてくれや」
「喜んで!ゴースケさん、好き」
「あ!サトシ!!」
玲は、ゴースケの首に抱きつき抱擁をした。ゴブリンたちの容姿は、皆丸顔で、円な黒目の瞳。大きな麦わら帽子を被り、皆が皆、あるポテトチップスの表装に描かれているキャラクターに似ている。その為、玲からすれば、可愛らしい者に分類され、距離感が、崩壊した状態だった。
ゴースケに抱きついた玲を見て、慌てたアレス。ゴースケは、例の背中をぽんぽんと叩き、アレスを見た。
「アレス殿も、心配が尽きぬのう」
「………」
全てを見透かされたアレスは、頬を染めた。
玲は、手のひらの上に乗せた稲穂のかけらを握りしめて、歓喜した。
「探していた食材でしたか?」
「おう!おう!俺が探していた作物のひとつだ!」
満面の笑みでガッツポーズを繰り返し、玲は小躍りをしている。コカトリスは、クビを傾げたり、「ゴゴッ」と野太い鳴き声を出したりしながら、玲の周りを徘徊していた。
「ゴブリンさーん!ちょっとお話聞いても良いですかー」
玲は、柵の中に入っても良いと許可してくれたゴブリンの元へ駆け寄った。
「おー。何じゃい?どないしたんじゃい?」
大きな麦わら帽子を被り、額には大粒の汗をかいている。自身も忙しいだろうに、ニッカリと笑って手を止めて玲に返事を返してくれる。
「俺、サトシって言います。料理の材料を探していて、この、コカトリスのご飯になっている【ライス】?のことを教えてほしくて……お時間いただけますか?」
「おーおー、ゴンゾウの言っておったお客人じゃな?オイラは、ゴースケじゃ。………時間ちゅっても作業しながらじゃけどもええじゃろうか?」
「ゴースケさん!ありがとう!俺もお仕事手伝うよ!」
屈託ない笑顔を見せ手伝いを申し出た玲に、ゴースケは、ありがたく作業を手伝ってもらうことにした。
「アレスは、他に用事あるんだったら、そっちに行っていいよ?」
「俺は、サトシの守護として付いてきているので、一緒に作業を手伝いますよ」
「うへぇ、アレス殿も手伝ってくれるんかい?ありがたいのう」
コカトリスの餌やり、小屋の掃除、餌の搬入などを手伝ったのだが、なかなか重労働だった。
ヘッピリ腰ではあるが、一生懸命に荷物を運ぶ玲を見て、ゴースケは、力の入れ方や荷物の持ち方など丁寧に教えていく。玲も嫌な顔を一つもせずに、素直にゴースケのアドバイスを聞いていた。
「そっか【ライス】も【もろもろこし】もコカトリスの餌としてしか利用してないんだ」
「そうじゃのう、サトシや?もしかして、あれらを食べるつもりなんか?」
「うん、食べるよ。だから、【ライス】も【もろもろこし】も分けて欲しいんだ」
小屋の掃除をしながら、傍らに置いてあった米袋と乾燥させたトウモロコシを見つけ、玲は事情を説明し分けて欲しいと願い出た。
「分けてやるのは構わんぞ。好きなだけ持っていけ」
「あ、ありがとう!ゴースケさん」
無事米を手に入れることができ、玲の笑顔が綻んでいく。米は主食として食することもできるが、発酵食品としても多種多様に利用ができる。
「じゃけども、殻は、どないするんじゃ?」
「殻…あ、籾殻か!確か……石臼かなんかで脱穀するんだったよなぁ……」
玲は、歴史の授業で習った稲作について顎を撫でながら、思い出そうとする。
「収穫した稲を乾燥させ…千歯扱きで籾を脱穀して……石臼と杵でついて籾殻を落として精米するんだったかな?」
玲も専門的に学んだわけではないため、中学生レベルの知識しかない。
「ブハッ!サトシは、飛んだ田舎者じゃのう」
「い、田舎者!?」
玲からすれば、ど田舎の農村風景の中で、大きな麦わら帽子帽子を被った、ど田舎の住民そのもののゴースケに田舎者呼ばわりされ、驚きを隠せない。
世界は違えども、日本は、高層ビルが建ち並び、文明も化学も発展した先進国だ。
「おまえさん、全部、人の手で作業するつもりでおるんじゃろ?」
「あ……!操術」
「そうじゃ、聞いていれば、精米とまでの作業は、風の操術一つで終わる内容じゃねぇか。それを手間暇かけて作業するって時点で、ど田舎者じゃわい。カカカカカカ」
ゴースケは、小さな子供をあやすように玲の頭をくしゃくしゃっと撫でた。22歳ではあるが、ゴースケから見れば、少年にしか見えないため、どうしても子供のように扱ってしまう。
「ゴースケさんも操術使えるんだ」
「そうじゃ、オイラたちゴブリン族は、土と風の属性を使えるぞ。精米とやらは、風属性の操術で対応できるかのう」
「風属性……メルル様の属性の一つでもありますね」
「キュイ!」
ゴースケの話を聞き、玲の肩にちょこんと座っていたメルルが、片方の翼を上に上げて返事をした。
「メルル様も、覚える気まんまんなんじゃな」
ゴースケは、可愛らしく返事をしたメルルに笑顔で答えた。
ゴースケの作業がひと段落した後、精米についてゴースケが風の操術を教えてくれると願い出てくれた。
「ゴンゾウにも、出来る限り協力してくれと頼まれとるし、気にすんな。どうしても、お礼がしたいというんなら、オイラにも【ライス】で作った料理を食べさせてくれや」
「喜んで!ゴースケさん、好き」
「あ!サトシ!!」
玲は、ゴースケの首に抱きつき抱擁をした。ゴブリンたちの容姿は、皆丸顔で、円な黒目の瞳。大きな麦わら帽子を被り、皆が皆、あるポテトチップスの表装に描かれているキャラクターに似ている。その為、玲からすれば、可愛らしい者に分類され、距離感が、崩壊した状態だった。
ゴースケに抱きついた玲を見て、慌てたアレス。ゴースケは、例の背中をぽんぽんと叩き、アレスを見た。
「アレス殿も、心配が尽きぬのう」
「………」
全てを見透かされたアレスは、頬を染めた。
0
お気に入りに追加
66
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界起動兵器ゴーレム
ヒカリ
ファンタジー
高校生鬼島良太郎はある日トラックに
撥ねられてしまった。そして良太郎
が目覚めると、そこは異世界だった。
さらに良太郎の肉体は鋼の兵器、
ゴーレムと化していたのだ。良太郎が
目覚めた時、彼の目の前にいたのは
魔術師で2級冒険者のマリーネ。彼女は
未知の世界で右も左も分からない状態
の良太郎と共に冒険者生活を営んで
いく事を決めた。だがこの世界の裏
では凶悪な影が……良太郎の異世界
でのゴーレムライフが始まる……。
ファンタジーバトル作品、開幕!

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~
味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。
しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。
彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。
故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。
そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。
これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。

【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?

もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる