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その場に力無く座り込んだディアブロは、顔面蒼白でいつもの余裕ある雰囲気を全く感じさせない状態だった。
「ディアブロ!大丈夫か?目が窪んでいるぞ!!」
「サ、サトシ……君だけが、頼りなんです……助けてください」
駆け寄った玲の胸に、ふらふらと倒れ込むディアブロ。その表情は、正気が全く感じられない。
「父上!何が起きたんですか!?」
「キュイ?」
アレスとメルルも、尋常じゃない様子のディアブロに心配して声をかける。ハラハラと玲の胸の中で、ディアブロは、涙を流し始めた。
「俺に、俺に出来ることがあったら言って?何が合ったの?」
「う、うぅ……あ、ありがとう……サトシ」
ディアブロは、そのまま玲を抑え込むように押し倒して足を絡めた。両手を玲の頬に添え、そのまま玲の唇に齧り付く。
「んんーーーーーー!」
玲が抗議の言葉を出そうとするが、唇を割ってディアブロ舌が入り込み、玲の言葉を飲み込んでいく。
ディアブロを押し退けようともがくが、足はガッチリと絡め取られ、自分より大きいディアブロが上に乗っているため、逃げ出すことは出来ない。
ちゅばちゅばと遠慮なく台所に響き渡る、玲とディアブロの舌が絡み合う音。突然の出来事に、アレスもメルルも呆然としてしまう。
ディアブロに翻弄され、徐々に玲の手の力が抜けていく。尚もディアブロは、玲の生気を吸い尽くすように唇を貪り続けた。
「な、何やってんだあーーーーーーー!」
「んぐっ」
正気に戻ったアレスが、ディアブロを玲から引き剥がした。玲は、涙を浮かべ頬を紅潮させハアハアと荒い息を上げている。背後首を掴まれて引き剥がされたディアブロの表情は、台所に現れた時とは異なり、いつもの飄々とした雰囲気に戻っていた。
「ごちそうさま?」
首根っこを掴まれたディアブロは、濡れた唇を指先で拭い、怒りを露わにするアレスに微笑み返した。
「ギュギュギュー!!!」
「アデッアダッ!んが!!ご、誤解です!待ってください!」
「父上!誤解も糞も無いだろうが!!」
メルルは、ディアブロの顔面に飛び掛かり羽や脚を使って引っ掻き捲り、アレスは胸ぐらを掴み、いつもの丁寧な言葉も忘れるほど怒りを露わにする。
「俺の二回目が…」
二度も悪魔神官に唇を奪われ、好き勝手に翻弄された事にショックを隠せず落ち込む玲だった。
◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇
「それで、誤解って何?」
ディアブロは、台所に正座をさせられ、その背後には怒りが収まらないアレスが仁王立ちしている。
メルルは、玲の胸に張り付き、ディアブロをシャーシャーと猫のように威嚇していた。
二人の怒りが収まらないため、一番の被害者である玲が、冷静になるしか他なかった。
「誤解というのは、アーシェがですね。あの日依頼、お仕置きと言って私にお預けをするのですよ……」
「お預けって?」
「私は、ほら、デーモン族じゃないですか。日に一回は、人から生気をいただく必要があるのですよ」
「正気?」
「父上は、毎晩母上と身体を重ねることで、母上から正気をもらっていました。最近夜が静かな理由は、そういうことだったんですね。だけど、それがサトシの唇を奪って良い理由にはならない!!!」
ダンと作業台を拳で殴りつけるアレス。今だに怒りは収まっていない。
「消去法ですよ。いくらなんでも娘や息子を頂く趣味はないですし、メルル様はもっての外。娼館なんか行った日には、アーシェの怒りは、さらに炎上するでしょうし、それこそ目も当てられなくなります」
「で、残るは、俺だったと……」
「わ、私だって背に腹はかえられなかったんですよ」
「そんな引っ掻き傷だらけで、爽やかに微笑まれても……ハァ」
正座こそさせられているが、全く悪怯れる様子も見せないディアブロに、玲は、ため息を吐くしかできなかった。
「父上は、インキュバス系のデーモン族なので、他の者からの生気の供給が必要不可欠なんです。サトシ、俺の両親の夫婦喧嘩に巻き込んでしまい、すみません」
「インキュバス……ハァ。どおりで、さっきから身体が、どうしようもないくらい怠いのは、ディアブロに生気を吸われてしまったからなんだ……ハァ」
悪魔神官は、実はインキュバスだったとは、毎晩隣りの部屋から聞こえてくる悩ましい声を考えれば、納得だなと玲は思った。
「ところで、作業台に置かれている白いどろりとした液体は、何ですか?」
「ヨーグルトのことか?食べてみるか?」
玲は、ヨーグルトの入った器とスプーンを手渡した。スプーンを手に持っているが、ディアブロはスプーンではなく、直接指を突っ込んだ。
ディアブロの指に絡みつくヨーグルトは、白くテラテラと指先を光らす。うっとりとした表情で自分の指先を眺める表情は、どこかしら恍惚としていた。
「サトシ…私の指先を舐ってください」
「やだよ……気色悪い…」
「残念ですね……仕方がない」
アレス、メルルと視線を送るが、二人とも首を左右に振って、ディアブロの申し出を断る。
「この『よおぐると』で濡れる唇を見たかったんですが……」
「お前、本当に碌な事考えねぇな」
「父上!食べないのなら、返してください。俺が食べます!」
「ギィ!ギュギュッギィ!」
「わかりました!申しません!食べますから……」
食べ物で遊んでしまった事を咎められ、ディアブロは観念しヨーグルトのついた指先を自分で咥えた。
「………………」
無言のまま指先を咥えたまま、全く動かなくなったディアブロ。ちゅばっと音を立てて自分の指先を口から出した。そして持っていたスプーンで、口の中に掻き込むようにヨーグルトを綺麗に平らげた。
「サ、サトシさん……おかわりいただけますか?」
先程から打って変わって、恥ずかしそうに頬を赤らめ、ディアブロは、空になった器をおずおずと玲に差し出した。
「ディアブロ!大丈夫か?目が窪んでいるぞ!!」
「サ、サトシ……君だけが、頼りなんです……助けてください」
駆け寄った玲の胸に、ふらふらと倒れ込むディアブロ。その表情は、正気が全く感じられない。
「父上!何が起きたんですか!?」
「キュイ?」
アレスとメルルも、尋常じゃない様子のディアブロに心配して声をかける。ハラハラと玲の胸の中で、ディアブロは、涙を流し始めた。
「俺に、俺に出来ることがあったら言って?何が合ったの?」
「う、うぅ……あ、ありがとう……サトシ」
ディアブロは、そのまま玲を抑え込むように押し倒して足を絡めた。両手を玲の頬に添え、そのまま玲の唇に齧り付く。
「んんーーーーーー!」
玲が抗議の言葉を出そうとするが、唇を割ってディアブロ舌が入り込み、玲の言葉を飲み込んでいく。
ディアブロを押し退けようともがくが、足はガッチリと絡め取られ、自分より大きいディアブロが上に乗っているため、逃げ出すことは出来ない。
ちゅばちゅばと遠慮なく台所に響き渡る、玲とディアブロの舌が絡み合う音。突然の出来事に、アレスもメルルも呆然としてしまう。
ディアブロに翻弄され、徐々に玲の手の力が抜けていく。尚もディアブロは、玲の生気を吸い尽くすように唇を貪り続けた。
「な、何やってんだあーーーーーーー!」
「んぐっ」
正気に戻ったアレスが、ディアブロを玲から引き剥がした。玲は、涙を浮かべ頬を紅潮させハアハアと荒い息を上げている。背後首を掴まれて引き剥がされたディアブロの表情は、台所に現れた時とは異なり、いつもの飄々とした雰囲気に戻っていた。
「ごちそうさま?」
首根っこを掴まれたディアブロは、濡れた唇を指先で拭い、怒りを露わにするアレスに微笑み返した。
「ギュギュギュー!!!」
「アデッアダッ!んが!!ご、誤解です!待ってください!」
「父上!誤解も糞も無いだろうが!!」
メルルは、ディアブロの顔面に飛び掛かり羽や脚を使って引っ掻き捲り、アレスは胸ぐらを掴み、いつもの丁寧な言葉も忘れるほど怒りを露わにする。
「俺の二回目が…」
二度も悪魔神官に唇を奪われ、好き勝手に翻弄された事にショックを隠せず落ち込む玲だった。
◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇
「それで、誤解って何?」
ディアブロは、台所に正座をさせられ、その背後には怒りが収まらないアレスが仁王立ちしている。
メルルは、玲の胸に張り付き、ディアブロをシャーシャーと猫のように威嚇していた。
二人の怒りが収まらないため、一番の被害者である玲が、冷静になるしか他なかった。
「誤解というのは、アーシェがですね。あの日依頼、お仕置きと言って私にお預けをするのですよ……」
「お預けって?」
「私は、ほら、デーモン族じゃないですか。日に一回は、人から生気をいただく必要があるのですよ」
「正気?」
「父上は、毎晩母上と身体を重ねることで、母上から正気をもらっていました。最近夜が静かな理由は、そういうことだったんですね。だけど、それがサトシの唇を奪って良い理由にはならない!!!」
ダンと作業台を拳で殴りつけるアレス。今だに怒りは収まっていない。
「消去法ですよ。いくらなんでも娘や息子を頂く趣味はないですし、メルル様はもっての外。娼館なんか行った日には、アーシェの怒りは、さらに炎上するでしょうし、それこそ目も当てられなくなります」
「で、残るは、俺だったと……」
「わ、私だって背に腹はかえられなかったんですよ」
「そんな引っ掻き傷だらけで、爽やかに微笑まれても……ハァ」
正座こそさせられているが、全く悪怯れる様子も見せないディアブロに、玲は、ため息を吐くしかできなかった。
「父上は、インキュバス系のデーモン族なので、他の者からの生気の供給が必要不可欠なんです。サトシ、俺の両親の夫婦喧嘩に巻き込んでしまい、すみません」
「インキュバス……ハァ。どおりで、さっきから身体が、どうしようもないくらい怠いのは、ディアブロに生気を吸われてしまったからなんだ……ハァ」
悪魔神官は、実はインキュバスだったとは、毎晩隣りの部屋から聞こえてくる悩ましい声を考えれば、納得だなと玲は思った。
「ところで、作業台に置かれている白いどろりとした液体は、何ですか?」
「ヨーグルトのことか?食べてみるか?」
玲は、ヨーグルトの入った器とスプーンを手渡した。スプーンを手に持っているが、ディアブロはスプーンではなく、直接指を突っ込んだ。
ディアブロの指に絡みつくヨーグルトは、白くテラテラと指先を光らす。うっとりとした表情で自分の指先を眺める表情は、どこかしら恍惚としていた。
「サトシ…私の指先を舐ってください」
「やだよ……気色悪い…」
「残念ですね……仕方がない」
アレス、メルルと視線を送るが、二人とも首を左右に振って、ディアブロの申し出を断る。
「この『よおぐると』で濡れる唇を見たかったんですが……」
「お前、本当に碌な事考えねぇな」
「父上!食べないのなら、返してください。俺が食べます!」
「ギィ!ギュギュッギィ!」
「わかりました!申しません!食べますから……」
食べ物で遊んでしまった事を咎められ、ディアブロは観念しヨーグルトのついた指先を自分で咥えた。
「………………」
無言のまま指先を咥えたまま、全く動かなくなったディアブロ。ちゅばっと音を立てて自分の指先を口から出した。そして持っていたスプーンで、口の中に掻き込むようにヨーグルトを綺麗に平らげた。
「サ、サトシさん……おかわりいただけますか?」
先程から打って変わって、恥ずかしそうに頬を赤らめ、ディアブロは、空になった器をおずおずと玲に差し出した。
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