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とぷ、とぷ、とぷ。
玲は、グラスに皮袋の中の液体を注いでいく。
「それが、アウズンブラの乳なのですか?」
「キュウ?」
白い液体ではあるのだが、ドロドロとした状態で、アレスが知っているアウズンブラの乳とは、全く異なる緩く固まりかけた液体だった。
メルルも小さな鼻を近づけ、クンクンと匂いを嗅いでは、小さな頭を傾げる。玲は、その液体をスプーンで掬って、ポタリ、ポタリと器の中に落としていった。
「見た目は……合格点かなぁ?」
「何だか酸っぱい匂いがするのですが……」
「キュウ」
玲は、液体に小指を突っ込み、そして口に含んで味見をした。
「このままでは、甘味が足りないな……」
食材保存箱から、通称【悪魔の誘惑】と呼ばれているリンゴのような果物を一つ取り出して、皮を剥き半分をざく切りに残り半分をすりおろした。
それらを白い液体にざっくりと混ぜ合わせていき、少量スプーンで掬い、再度味見をする。その様子をアレスとメルルは、じっと伺っている。
「ん~!これこれ!この酸味と甘味!いける!いけるぞ!」
大きく目を見開き両手の拳を握り締め小さくガッツポーズをする玲。
「実験は、成功したのですか?」
「キューキュー?」
「おう、ヨーグルトの完成だ!!」
試食用にと、浅いグラスにそのりんごを和えた白い液体を装い、アレスにスプーンと一緒に手渡す。メルルには、浅い小皿に取り分けてやった。
「よおぐると……ですか?」
「キューキュィキュ?」
「そう、ヨーグルト!胃腸に優しい乳製品!それが、ヨーグルトだ。ちょっと試食してみてよ、感想が聞きたいからさ」
アレスは、差し出されたスプーンを手に取りヨーグルトが装わられたグラスを持った。メルルも、小皿に鼻を近づけ、まずはクンクンと匂いを嗅ぐ。
甘酸っぱい匂い。最初に匂いを嗅いだ時は、酸味のきつい匂いだけだったが、リンゴの果汁とざく切りにされた実と混ぜたことで、爽やかな清涼感を感じさせる香りに変化していた。
アレスは、そっとスプーンを差し入れ、リンゴの実と共に口に運んだ。メルルもペロリと赤い舌を出してピチャピチャとヨーグルトを試食する。
シャクシャクとざく切りされたリンゴの食感。酸味と果汁によるほのかな甘味。咀嚼するたびにアレスとメルルの瞳が、大きく見開いていった。
「これは、美味い!【悪魔の誘惑】の食感に加えて、果汁の甘味がよおぐるとによく合っています」
「キューキューキュー!!」
思いのほか好評価!玲は、ほっと表情を緩ませ笑った。
「あぁ、良かった。……うん、イケる!イケるぞ。やっぱり、予測した通り【腐敗】と【発酵】は、同じ操術なんだ!」
「よく理解出来ないのですが、このようぐるとは、サトシの操術で作ったということですか?」
「あぁ、【腐敗】の応用かなぁ?」
「凄い!凄い発見ではないですか!!アウズンブラの乳は、腐るとこんなに美味になるなんて!あぁ、今まで古くなった乳を廃棄していたなんて、もったいないですね。こっちは、腐った乳!どんな味なのか是非味わってみたいです!」
「イヤイヤ、腐った牛乳は、処分するべきだよ」
感激のあまり、腐った牛乳まで飲もうとするアレスを慌てて止めた。残念そうにするアレスを笑ってやるしかなかった。
「でも、どうやって乳をようぐるとに変化させたんですか?」
「物質が、腐るってのは、時間や温度などの影響によって、物質そのものを変質させられた状態のことなんだよ。腐った食糧って、異臭を放っていたり、間違えて食べたりしたら、お腹壊したりするんだけど、それは体にとって有害な物質変化してしまったからなんだ」
「ようぐるとは、違うのですか?」
「ヨーグルトってのは、牛乳の中に存在している乳酸菌や酵母を使って発酵させた食品何だ。発酵ってのは、腐敗と同じで、体に良い物質に変化させる状態のことだよ」
「ようするに、サトシは腐敗を使い分けているということですか?」
アレスの質問に、どう答えたものかしばし考える玲。実際に、操術を使い分けているかどうかまで、操術に精通しているわけではない。
「ディアブロがさ、イメージが大事って言ってたろ?。俺は、ヨーグルトを知っている。ヨーグルトの作り方は、知らないけど、乳酸菌と酵母で発酵して作られることを知っている」
「知っているからこそ、イメージが出来たってことですか?」
「そう!それそれ!!俺、乳酸菌、酵母、発酵、ヨーグルトできるって皮袋を振りながらずっと呪文のように唱えていたんだ」
アレスは、玲が確かに皮袋を振りながら何かを呟いていた事を思い出した。小さな声ではあったが、確かに『よおぐると』『乳酸菌』と言った言葉を口にしていた。
「あれは、呪文だったのですか?」
「うーん、どちらかと言うとイメージトレーニング……ヨーグルトをめちゃめちゃ想像して、ヨーグルトのことばかり考えてたかな?ほら、言葉にして想像するとイメージしやすいじゃん」
「確かに、武術の鍛錬であれば、攻撃してくる相手を考えて次の防御や攻撃を考えることはありますが、それをサトシは、操術に取り入れた…ということなのですね」
アレスは、嬉しそうにヨーグルトをパクリと食べる玲を見て、これからも誰もが驚く料理を産み出してくれるのだろうと思った。
「サ、サトシ……」
「ディアブロ!ど、どうした?」
玲たちが、ヨーグルトを試食していると、台所にヨロヨロと足取りの覚束ないディアブロが、現れた。
そして、玲たちの姿を見た途端、ふらふらとその場に座り込んだ。
玲は、グラスに皮袋の中の液体を注いでいく。
「それが、アウズンブラの乳なのですか?」
「キュウ?」
白い液体ではあるのだが、ドロドロとした状態で、アレスが知っているアウズンブラの乳とは、全く異なる緩く固まりかけた液体だった。
メルルも小さな鼻を近づけ、クンクンと匂いを嗅いでは、小さな頭を傾げる。玲は、その液体をスプーンで掬って、ポタリ、ポタリと器の中に落としていった。
「見た目は……合格点かなぁ?」
「何だか酸っぱい匂いがするのですが……」
「キュウ」
玲は、液体に小指を突っ込み、そして口に含んで味見をした。
「このままでは、甘味が足りないな……」
食材保存箱から、通称【悪魔の誘惑】と呼ばれているリンゴのような果物を一つ取り出して、皮を剥き半分をざく切りに残り半分をすりおろした。
それらを白い液体にざっくりと混ぜ合わせていき、少量スプーンで掬い、再度味見をする。その様子をアレスとメルルは、じっと伺っている。
「ん~!これこれ!この酸味と甘味!いける!いけるぞ!」
大きく目を見開き両手の拳を握り締め小さくガッツポーズをする玲。
「実験は、成功したのですか?」
「キューキュー?」
「おう、ヨーグルトの完成だ!!」
試食用にと、浅いグラスにそのりんごを和えた白い液体を装い、アレスにスプーンと一緒に手渡す。メルルには、浅い小皿に取り分けてやった。
「よおぐると……ですか?」
「キューキュィキュ?」
「そう、ヨーグルト!胃腸に優しい乳製品!それが、ヨーグルトだ。ちょっと試食してみてよ、感想が聞きたいからさ」
アレスは、差し出されたスプーンを手に取りヨーグルトが装わられたグラスを持った。メルルも、小皿に鼻を近づけ、まずはクンクンと匂いを嗅ぐ。
甘酸っぱい匂い。最初に匂いを嗅いだ時は、酸味のきつい匂いだけだったが、リンゴの果汁とざく切りにされた実と混ぜたことで、爽やかな清涼感を感じさせる香りに変化していた。
アレスは、そっとスプーンを差し入れ、リンゴの実と共に口に運んだ。メルルもペロリと赤い舌を出してピチャピチャとヨーグルトを試食する。
シャクシャクとざく切りされたリンゴの食感。酸味と果汁によるほのかな甘味。咀嚼するたびにアレスとメルルの瞳が、大きく見開いていった。
「これは、美味い!【悪魔の誘惑】の食感に加えて、果汁の甘味がよおぐるとによく合っています」
「キューキューキュー!!」
思いのほか好評価!玲は、ほっと表情を緩ませ笑った。
「あぁ、良かった。……うん、イケる!イケるぞ。やっぱり、予測した通り【腐敗】と【発酵】は、同じ操術なんだ!」
「よく理解出来ないのですが、このようぐるとは、サトシの操術で作ったということですか?」
「あぁ、【腐敗】の応用かなぁ?」
「凄い!凄い発見ではないですか!!アウズンブラの乳は、腐るとこんなに美味になるなんて!あぁ、今まで古くなった乳を廃棄していたなんて、もったいないですね。こっちは、腐った乳!どんな味なのか是非味わってみたいです!」
「イヤイヤ、腐った牛乳は、処分するべきだよ」
感激のあまり、腐った牛乳まで飲もうとするアレスを慌てて止めた。残念そうにするアレスを笑ってやるしかなかった。
「でも、どうやって乳をようぐるとに変化させたんですか?」
「物質が、腐るってのは、時間や温度などの影響によって、物質そのものを変質させられた状態のことなんだよ。腐った食糧って、異臭を放っていたり、間違えて食べたりしたら、お腹壊したりするんだけど、それは体にとって有害な物質変化してしまったからなんだ」
「ようぐるとは、違うのですか?」
「ヨーグルトってのは、牛乳の中に存在している乳酸菌や酵母を使って発酵させた食品何だ。発酵ってのは、腐敗と同じで、体に良い物質に変化させる状態のことだよ」
「ようするに、サトシは腐敗を使い分けているということですか?」
アレスの質問に、どう答えたものかしばし考える玲。実際に、操術を使い分けているかどうかまで、操術に精通しているわけではない。
「ディアブロがさ、イメージが大事って言ってたろ?。俺は、ヨーグルトを知っている。ヨーグルトの作り方は、知らないけど、乳酸菌と酵母で発酵して作られることを知っている」
「知っているからこそ、イメージが出来たってことですか?」
「そう!それそれ!!俺、乳酸菌、酵母、発酵、ヨーグルトできるって皮袋を振りながらずっと呪文のように唱えていたんだ」
アレスは、玲が確かに皮袋を振りながら何かを呟いていた事を思い出した。小さな声ではあったが、確かに『よおぐると』『乳酸菌』と言った言葉を口にしていた。
「あれは、呪文だったのですか?」
「うーん、どちらかと言うとイメージトレーニング……ヨーグルトをめちゃめちゃ想像して、ヨーグルトのことばかり考えてたかな?ほら、言葉にして想像するとイメージしやすいじゃん」
「確かに、武術の鍛錬であれば、攻撃してくる相手を考えて次の防御や攻撃を考えることはありますが、それをサトシは、操術に取り入れた…ということなのですね」
アレスは、嬉しそうにヨーグルトをパクリと食べる玲を見て、これからも誰もが驚く料理を産み出してくれるのだろうと思った。
「サ、サトシ……」
「ディアブロ!ど、どうした?」
玲たちが、ヨーグルトを試食していると、台所にヨロヨロと足取りの覚束ないディアブロが、現れた。
そして、玲たちの姿を見た途端、ふらふらとその場に座り込んだ。
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