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「なーんだ!ウバの実って果物なんだ」
アレスから、改めてウバの実が果物だと知り、ほっと胸を撫で下ろす玲だった。
「はい、我が国プルートーでは、とても栄養価の高い果物として、ウバは人気があるんです」
ネタバラシをされた為、ディアブロも今度は玲が誤解を招かないように丁寧に説明をしていく。
「メルル様もサトシと巡り合うまでは、このウバの実を主食としてお食べになられていました」
玲の腕の中で、お代わりを欲しがるメルルに、玲は大皿に乗っているウバの実を一つ手に取ってメルルに渡す。芋虫でないと解れば、蠢いていようと芋虫の様なフォルムであろうと何も怖くない。落ち着いて見れば、尻尾のように見える部分は、木になっていた時のフサであり、顔のように見えた部分はヘタを取った跡だと解った。
「野郎ども!待たせたな」
大きな声で台所から出てきたのは、立派な上腕二頭筋が目立つように大皿を二枚両手に持ったアーシェで、その後ろから娘のアフィとアンジュも一緒に鍋や大皿を持って出てきた。
ドカン、ドカンとテーブルの上に料理を並べていく三人。大きな鍋には、野菜っぽいものや肉っぽいものがぐつぐつと煮込まれたスープのようで、大皿には分厚くスライスされたステーキのような肉?と棒が口から突き刺された焼き魚?が山盛りに乗っている。
「アーシェは、料理を作るのは好きなんですが、出来上がる料理は全て豪快なんですよ」
「サトシ、お前ひょろっこいんだから、しっかり食えよな。メルル様の食糧なんだから、体力が必要だからな。ガハハハハ!」
「アーシェさん、せめてお食事係と言ってほしい…です」
食事は、各自が食べたい物を欲しい分だけ自分の皿に取るシステムのようだ。玲の横に座ったアレスは、取り皿に玲の分を装っていく。アレスは、臆することもなく甲斐甲斐しく玲の世話をするつもりらしい。
「あ、ありがとう?」
玲がお礼を言うとアレスは、ほんのりと頬を染めて笑った。
「人見知りが激しい、アレス兄が懐いている…」
アフィとアンジュが珍しい物を見たように目を丸くさせた。ディアブロは、玲に警戒させない様にアフィとアンジュに微笑み釘を刺すことにした。
「アレスにとって、サトシは良い親友となってくれました。アレス、これからもサトシを頼みますよ」
「はい。父上!俺は、何があってもサトシを守って見せます」
「アフィ、アンジュ。(私の観察対象なのだから)兄さんを揶揄ったりして(警戒されたら楽しみが減ってしまうので)遊んだら駄目ですよ」
「ヒュ~。そう言うことか。サトシ様、アレス兄を頼みますね」
「アレス兄に春!私からも兄をよろしくお願いします!」
この親にあって、この子あり。蛙の子は蛙。ディアブロも自分の真意を正しく理解してくれたアフィとアンジュに満足気に微笑んだ。その父に対して、アフィとアンジュは親指を突き出し、バチンとウィンクをして見せた。
アレスも新しい使命を与えられたと解釈し、両手の拳を握り締め、心の中で玲への揺るがらざる誓いをたてる。
当の玲は、どこ吹く風。メルルにウバの実を渡してアレスの淡い想いに気がつくことはなかった。
「さぁ、サトシ様、母上の手料理ですが……。どうぞ召し上がってください」
取り皿に乗せられた肉っぽいというか多分肉だと思われる物は、サイコロステーキの様に小さくカットされ、空いたスペースに焼き魚っぽい物、箸休めに野菜っぽいサラダだろう物が乗せられている。スープカップには、いろいろな食材が煮込まれて湯気が立っている。
じっとディアブロの子どもたちに見守られる中、玲はスプーンを手に取った。
「い、いただきます」
好奇心溢れる目で見つめられる中、食べづらいと思いつつスプーンをスープに潜らせる。くるくるとスプーンを混ぜると、白っぽかったクリーム状のスープが、みるみる紫色に変色していく。
毒々しい色合いのスープを掬ったスプーンを恐る恐る口元まで運び、ぎゅっと目を瞑って口の中に入れた。
舌がスープを味わうことを拒否している。鼻腔まで駆け抜けた強烈なエグ味と苦味が、呼吸の妨げになる。スプーンを皿の上でガチャンと音を立てて手放すと、ウバ茶がナミナミと注がれたグラスを傾け、口内を洗浄するかの様に飲み干した。
「け、結構なお手前で」
「母ちゃんは、料理を作るのが趣味なんだ」
「こっちの肉も食べてみなよ」
(えー!もう、お腹一杯です。スープで鼻がおかしな事になってます。というか、お前らも食べろや、オラァ)
玲は、目尻に涙を浮かべながらにっこりと微笑む。心の中でしっかりと悪態を吐くのは、忘れない。
「アストロ君、アガレス君、君たちもお腹減ったと言ってたじゃないか、俺に遠慮せず食べたまえ」
「そっか?じゃ、遠慮なく」
大きな体のアストロとアガレスは、肉っぽい塊に手を伸ばす。そのまま、ガシッと鷲掴みにすると、大きな口の中に放り込んだ。
ガキッ、ゴキッ、ボリッ!
大きな有り得ない効果音を上げながら、二人は咀嚼していった。そして、ニヤニヤしながら玲を見た。
アレスから、改めてウバの実が果物だと知り、ほっと胸を撫で下ろす玲だった。
「はい、我が国プルートーでは、とても栄養価の高い果物として、ウバは人気があるんです」
ネタバラシをされた為、ディアブロも今度は玲が誤解を招かないように丁寧に説明をしていく。
「メルル様もサトシと巡り合うまでは、このウバの実を主食としてお食べになられていました」
玲の腕の中で、お代わりを欲しがるメルルに、玲は大皿に乗っているウバの実を一つ手に取ってメルルに渡す。芋虫でないと解れば、蠢いていようと芋虫の様なフォルムであろうと何も怖くない。落ち着いて見れば、尻尾のように見える部分は、木になっていた時のフサであり、顔のように見えた部分はヘタを取った跡だと解った。
「野郎ども!待たせたな」
大きな声で台所から出てきたのは、立派な上腕二頭筋が目立つように大皿を二枚両手に持ったアーシェで、その後ろから娘のアフィとアンジュも一緒に鍋や大皿を持って出てきた。
ドカン、ドカンとテーブルの上に料理を並べていく三人。大きな鍋には、野菜っぽいものや肉っぽいものがぐつぐつと煮込まれたスープのようで、大皿には分厚くスライスされたステーキのような肉?と棒が口から突き刺された焼き魚?が山盛りに乗っている。
「アーシェは、料理を作るのは好きなんですが、出来上がる料理は全て豪快なんですよ」
「サトシ、お前ひょろっこいんだから、しっかり食えよな。メルル様の食糧なんだから、体力が必要だからな。ガハハハハ!」
「アーシェさん、せめてお食事係と言ってほしい…です」
食事は、各自が食べたい物を欲しい分だけ自分の皿に取るシステムのようだ。玲の横に座ったアレスは、取り皿に玲の分を装っていく。アレスは、臆することもなく甲斐甲斐しく玲の世話をするつもりらしい。
「あ、ありがとう?」
玲がお礼を言うとアレスは、ほんのりと頬を染めて笑った。
「人見知りが激しい、アレス兄が懐いている…」
アフィとアンジュが珍しい物を見たように目を丸くさせた。ディアブロは、玲に警戒させない様にアフィとアンジュに微笑み釘を刺すことにした。
「アレスにとって、サトシは良い親友となってくれました。アレス、これからもサトシを頼みますよ」
「はい。父上!俺は、何があってもサトシを守って見せます」
「アフィ、アンジュ。(私の観察対象なのだから)兄さんを揶揄ったりして(警戒されたら楽しみが減ってしまうので)遊んだら駄目ですよ」
「ヒュ~。そう言うことか。サトシ様、アレス兄を頼みますね」
「アレス兄に春!私からも兄をよろしくお願いします!」
この親にあって、この子あり。蛙の子は蛙。ディアブロも自分の真意を正しく理解してくれたアフィとアンジュに満足気に微笑んだ。その父に対して、アフィとアンジュは親指を突き出し、バチンとウィンクをして見せた。
アレスも新しい使命を与えられたと解釈し、両手の拳を握り締め、心の中で玲への揺るがらざる誓いをたてる。
当の玲は、どこ吹く風。メルルにウバの実を渡してアレスの淡い想いに気がつくことはなかった。
「さぁ、サトシ様、母上の手料理ですが……。どうぞ召し上がってください」
取り皿に乗せられた肉っぽいというか多分肉だと思われる物は、サイコロステーキの様に小さくカットされ、空いたスペースに焼き魚っぽい物、箸休めに野菜っぽいサラダだろう物が乗せられている。スープカップには、いろいろな食材が煮込まれて湯気が立っている。
じっとディアブロの子どもたちに見守られる中、玲はスプーンを手に取った。
「い、いただきます」
好奇心溢れる目で見つめられる中、食べづらいと思いつつスプーンをスープに潜らせる。くるくるとスプーンを混ぜると、白っぽかったクリーム状のスープが、みるみる紫色に変色していく。
毒々しい色合いのスープを掬ったスプーンを恐る恐る口元まで運び、ぎゅっと目を瞑って口の中に入れた。
舌がスープを味わうことを拒否している。鼻腔まで駆け抜けた強烈なエグ味と苦味が、呼吸の妨げになる。スプーンを皿の上でガチャンと音を立てて手放すと、ウバ茶がナミナミと注がれたグラスを傾け、口内を洗浄するかの様に飲み干した。
「け、結構なお手前で」
「母ちゃんは、料理を作るのが趣味なんだ」
「こっちの肉も食べてみなよ」
(えー!もう、お腹一杯です。スープで鼻がおかしな事になってます。というか、お前らも食べろや、オラァ)
玲は、目尻に涙を浮かべながらにっこりと微笑む。心の中でしっかりと悪態を吐くのは、忘れない。
「アストロ君、アガレス君、君たちもお腹減ったと言ってたじゃないか、俺に遠慮せず食べたまえ」
「そっか?じゃ、遠慮なく」
大きな体のアストロとアガレスは、肉っぽい塊に手を伸ばす。そのまま、ガシッと鷲掴みにすると、大きな口の中に放り込んだ。
ガキッ、ゴキッ、ボリッ!
大きな有り得ない効果音を上げながら、二人は咀嚼していった。そして、ニヤニヤしながら玲を見た。
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