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第2章 アルワーン王国編

第23話 黄金宮殿のウサギ

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「なんだこれは…………?」

 アルファイドは地下牢で絶句した。

 牢の中にいたのは、オークランドからさらってきた少女ではなく、奴隷の着る粗末な貫頭衣にくるまって眠る、1匹の白ウサギだった。

「……なぜ、ウサギが牢にいるのだ……? ふざけているのか!?」

 アルファイドは兵士に牢を開けさせると、中に入った。
 無造作にウサギの耳を掴んで持ち上げると、眠りから覚めたウサギが、ぴーっ、ぴーっと悲鳴を上げて暴れた。

「黙れ」

 ドスの効いた声で脅すと、なぜかウサギはぴたりと鳴き止んだ。

「?」

(なんだ、まるでこちらの言葉がわかるようだな)

 思わずアルファイドはじっとウサギを睨みつけた。

(なぜ、ウサギが牢の中に……)

 その時、アルファイドはウサギの耳に嵌められた、小さな赤い宝石を目に留めた。
 ……見覚えがある。

「お前は何者だ」

 アルファイドが言うと、ウサギはわざとらしく言葉がわからないふりをして(アルファイドにはそう見えた)、後ろ足をぶらんぶらんとさせている。

「その態度、いつまで続くかな」

 アルファイドはイラッとすると、ウサギを貫頭衣でめちゃくちゃにくるみ、まるで荷物のように小脇に抱えて牢から連れ出した。

 ぴきーっ! とまるで抗議するかのように鳴くウサギにの様子に、アルファイドは楽しそうに笑った。

 自分の部屋に向かう途中、行き合った男を掴まえた。
 その若い男は書記だったらしい。
 国王に直接声を掛けられて、目を白黒させていた。
 目が泳いで、布の中から覗く、ウサギの白い耳と国王の顎の辺りを行ったり来たりする。

「後宮に使いを。ザハラを呼べ。私の部屋へ来いと。大至急だ」
「はっ……!!」

「これは面白くなったな、ウサギ? 私は本当に、ドレイクの大切なものを手に入れたのかもしれん」

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