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第35話 アレシアの脱出
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「庭に出るテラスのドアを開けておいたわ」とアレキサンドラが言う。
「だから、庭伝いに台所に行って、勝手口から出て。その方が見張りが少ないわ。これが鍵よ。勝手口から通用門はすぐなの。物資の搬入にも使う所だから」
アレキサンドラはアレシアにうなづきかけた。
「さあ、行って」
アレシアは自分の非力さを知っている。
祈ることはできても、自分で何かをする力はない。
だからこそ、子供の頃から、様々なことを『自分の手で』やってみることに拘ってきたのだ。
少しでも、自分を鍛え、自分の力を高めたくて。たとえ、変わり者と言われても。
今こそ、自分の力で動く時だ。
アレシアは頷くと、その場で手早く麻の長衣に重ねている絹のチュニックを脱ぎ、丁寧に畳む。帝国に発つ前に、カイルから贈られた絹刺繍の飾り帯も外して重ね、両方ともアレキサンドラに預けた。
「信じています。再会した時に、返してくださいね」
アレシアはニヤリと笑う。
「あなたがこの衣装に興味がないのを知っているから、とても安心していられるわ」
アレキサンドラも、ふふん、と笑い返した。
「姫巫女とはいえ、あなたも若い女性。わたくしのような美しいドレスも欲しいでしょうから、今度お店をご紹介しましょう。……まあ、1枚か2枚はあなたでもなんとか着れるものがあるでしょうからね」
アレシアは麻の長衣姿になると、手早く袖を折り、裾も折り返して、隠しボタンで止めると、あっという間に動きやすい姿になった。
アレキサンドラは部屋からアレシアを出すと、再びドアに鍵をかけた。その鍵をドレスのポケットに忍ばせる。
そして、アレシアは脱出を試みる。
「アレシア。右に進んで、階段を下まで降りなさい。テラスへのドアに出るわ」
アレシアが廊下を進もうとした瞬間に、アレキサンドラが声をかけた。
「無事を……あなたと、カイル様の無事を祈っているわ」
アレシアはこくん、とうなづくと、注意深く姿を消した。
「だから、庭伝いに台所に行って、勝手口から出て。その方が見張りが少ないわ。これが鍵よ。勝手口から通用門はすぐなの。物資の搬入にも使う所だから」
アレキサンドラはアレシアにうなづきかけた。
「さあ、行って」
アレシアは自分の非力さを知っている。
祈ることはできても、自分で何かをする力はない。
だからこそ、子供の頃から、様々なことを『自分の手で』やってみることに拘ってきたのだ。
少しでも、自分を鍛え、自分の力を高めたくて。たとえ、変わり者と言われても。
今こそ、自分の力で動く時だ。
アレシアは頷くと、その場で手早く麻の長衣に重ねている絹のチュニックを脱ぎ、丁寧に畳む。帝国に発つ前に、カイルから贈られた絹刺繍の飾り帯も外して重ね、両方ともアレキサンドラに預けた。
「信じています。再会した時に、返してくださいね」
アレシアはニヤリと笑う。
「あなたがこの衣装に興味がないのを知っているから、とても安心していられるわ」
アレキサンドラも、ふふん、と笑い返した。
「姫巫女とはいえ、あなたも若い女性。わたくしのような美しいドレスも欲しいでしょうから、今度お店をご紹介しましょう。……まあ、1枚か2枚はあなたでもなんとか着れるものがあるでしょうからね」
アレシアは麻の長衣姿になると、手早く袖を折り、裾も折り返して、隠しボタンで止めると、あっという間に動きやすい姿になった。
アレキサンドラは部屋からアレシアを出すと、再びドアに鍵をかけた。その鍵をドレスのポケットに忍ばせる。
そして、アレシアは脱出を試みる。
「アレシア。右に進んで、階段を下まで降りなさい。テラスへのドアに出るわ」
アレシアが廊下を進もうとした瞬間に、アレキサンドラが声をかけた。
「無事を……あなたと、カイル様の無事を祈っているわ」
アレシアはこくん、とうなづくと、注意深く姿を消した。
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