30 / 50
第30話 オブライエン公爵家からの招待状
しおりを挟む
その日、カイルはオブライエン家の紋章が入った、正式な手紙を、オブライエン公爵から受け取った。
それは、個人的なお茶会の招待状だった。
参加者はカイル、オブライエン公爵、そしてアレキサンドラのみ。
「ついに直接、カイル様にアレキサンドラ様とのご結婚を申し入れられるおつもりなのでしょうね」
「おそらくは」
カイルはうなづいた。
「アレキサンドラは私の幼なじみでもある。彼女には酷だが、ここで正式に断るしかないと思う」
「使者の方がご返信を待っています。ご出席で返しておきましょう」
「頼む」
カイルはひとつ深呼吸をすると、執務室の窓へ向かった。
もう彼の新しい習慣のようになっている。
この窓から外を見ていると、神殿に行き来するアレシアの姿が見えるのだ。
農園でアレシアと過ごした1週間はとても楽しかった。
アレシアとは本音で話せる、そうカイルは感じている。
夜会でのアレシアの様子は、痛快でもあった。
そして今、アレシアが自分のために皇家の呪いを解こうと動いてくれているのを知っている。
自分のために祈ってくれていることも。
アレキサンドラとの婚姻を正式に断ったら、オブライエンはすぐアレシアの排除に向かって動くだろう。
アレシアの安全を第一に考えなければいけない。
カイルはアレシアと連絡し合うことを避けていた。
ことさらにアレシアに興味がない、という冷たい態度を取っているのも、そうすることでアレシアから視線を逸らし、アレシアを守るためだった。
しかし、アレシアが正式な婚約者である以上、オブライエンから守り切れる保証はない。
カイルはアレシアの兄である、クルス・リオベルデに手紙を書いた。アレシアの安全について注意を促す秘密の手紙だ。
ネティへの警告は、エドアルドからサラに伝えてもらえばいいだろう。
それは、個人的なお茶会の招待状だった。
参加者はカイル、オブライエン公爵、そしてアレキサンドラのみ。
「ついに直接、カイル様にアレキサンドラ様とのご結婚を申し入れられるおつもりなのでしょうね」
「おそらくは」
カイルはうなづいた。
「アレキサンドラは私の幼なじみでもある。彼女には酷だが、ここで正式に断るしかないと思う」
「使者の方がご返信を待っています。ご出席で返しておきましょう」
「頼む」
カイルはひとつ深呼吸をすると、執務室の窓へ向かった。
もう彼の新しい習慣のようになっている。
この窓から外を見ていると、神殿に行き来するアレシアの姿が見えるのだ。
農園でアレシアと過ごした1週間はとても楽しかった。
アレシアとは本音で話せる、そうカイルは感じている。
夜会でのアレシアの様子は、痛快でもあった。
そして今、アレシアが自分のために皇家の呪いを解こうと動いてくれているのを知っている。
自分のために祈ってくれていることも。
アレキサンドラとの婚姻を正式に断ったら、オブライエンはすぐアレシアの排除に向かって動くだろう。
アレシアの安全を第一に考えなければいけない。
カイルはアレシアと連絡し合うことを避けていた。
ことさらにアレシアに興味がない、という冷たい態度を取っているのも、そうすることでアレシアから視線を逸らし、アレシアを守るためだった。
しかし、アレシアが正式な婚約者である以上、オブライエンから守り切れる保証はない。
カイルはアレシアの兄である、クルス・リオベルデに手紙を書いた。アレシアの安全について注意を促す秘密の手紙だ。
ネティへの警告は、エドアルドからサラに伝えてもらえばいいだろう。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
Blue Bird ―初恋の人に再会したのに奔放な同級生が甘すぎるっ‼【完結】
remo
恋愛
「…溶けろよ」 甘く響くかすれた声と奔放な舌にどこまでも落とされた。
本宮 のい。新社会人1年目。
永遠に出来そうもない彼氏を夢見つつ、目の前の仕事に奮闘中。
なんだけど。
青井 奏。
高校時代の同級生に再会した。 と思う間もなく、
和泉 碧。
初恋の相手らしき人も現れた。
幸せの青い鳥は一体どこに。
【完結】 ありがとうございました‼︎
【完結】誰にも相手にされない壁の華、イケメン騎士にお持ち帰りされる。
三園 七詩
恋愛
独身の貴族が集められる、今で言う婚活パーティーそこに地味で地位も下のソフィアも参加することに…しかし誰にも話しかけらない壁の華とかしたソフィア。
それなのに気がつけば裸でベッドに寝ていた…隣にはイケメン騎士でパーティーの花形の男性が隣にいる。
頭を抱えるソフィアはその前の出来事を思い出した。
短編恋愛になってます。
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
極上の一夜で懐妊したらエリートパイロットの溺愛新婚生活がはじまりました
白妙スイ@書籍&電子書籍発刊!
恋愛
早瀬 果歩はごく普通のOL。
あるとき、元カレに酷く振られて、1人でハワイへ傷心旅行をすることに。
そこで逢見 翔というパイロットと知り合った。
翔は果歩に素敵な時間をくれて、やがて2人は一夜を過ごす。
しかし翌朝、翔は果歩の前から消えてしまって……。
**********
●早瀬 果歩(はやせ かほ)
25歳、OL
元カレに酷く振られた傷心旅行先のハワイで、翔と運命的に出会う。
●逢見 翔(おうみ しょう)
28歳、パイロット
世界を飛び回るエリートパイロット。
ハワイへのフライト後、果歩と出会い、一夜を過ごすがその後、消えてしまう。
翌朝いなくなってしまったことには、なにか理由があるようで……?
●航(わたる)
1歳半
果歩と翔の息子。飛行機が好き。
※表記年齢は初登場です
**********
webコンテンツ大賞【恋愛小説大賞】にエントリー中です!
完結しました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる