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第14話 一方ヴェルディーレ家では➀
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さて、場所は変わり、ヴェルディーレ家では食卓に家族5人が揃って席に着いていた。
夕陽はすっかり沈み、カーテンを開けた窓からは欠けた月が大きく空に浮かんでいる。
「‥‥マリー。あんな事が起こった手前言うべきではないかもしれないが、試験合格おめでとう。無事でいてくれて本当にありがとう」
すっかり白けてしまった空気の中、ダンドールが固く閉ざしていた口を開けた。
本来ならば、明るく盛大に彼女を祝う為に色々な用意をコッソリしていたのだが、それらの出番はなさそうだった。
ダンドールが食べよう、と言うまでは料理にも皆手を付けておらず、ギルガルドも仕方なくそれに合わせていた。
勿論ギルガルドは何が外で起こっていたのか知っている。
あれ程大騒ぎすれば聞きたくなくても聞いてしまう、というものだ。
マリアンナが遠慮がちに料理に手を付けたことを皮切りに、やっと食事が始まった。
とはいえ、いつもよりむしろ静かなのだが。
けれども、フィリーネが何とか場を明るくしよう、とこれからの学園の話をマリアンナに優しく話し初め、少しずつではあるが、空気が明るくなっていった。
皆、先ほどの事件については、彼女をまた傷つけてしまわないように、マリアンナの前では一言も触れなかった。
食事が終わり、ダンドールに今日は早く寝なさい、と言われたマリアンナは席を立ち、入浴前に一度部屋に戻ることにした。
側に控えていたメイに、先に風呂場に向かい入浴の準備をするよう申し付けて。
そして彼女は廊下に出てメイと別れた直後、目を細めて口を不吉に歪めて密やかに嗤った。
ギルガルドが本日の主役が出て行ったのを見て席を立つと、ダンドールが珍しく彼に話しかけた。
「ギルガルド。マリアンナ抜きで家族と話したいことがあるんだ。今日は悪いが座ってくれないか」
「今更何を言うんですか。先程の事件のことでしょう?私には関係ないことです。私も忙しいのです。明日には別件で用もあるので失礼させて頂きます、伯爵様」
それを聞いて何か言葉を紡ごうとするダンドールの手の甲にルアンナがそっと手を乗せて首を振った。
これ以上は止めましょう、とルアンナの目が言いたげに彼を見た。
結果的にダンドールの説得も虚しく、ギルガルドはさっさと部屋を出て行ってしまった。
「‥‥‥気を取り直して、さっきの続きを話し合いましょう?旦那様」
「あ、あぁ‥‥。」
社交界では毅然としたダンドールの弱々しい姿を見て、ルアンナが少し間をおいてから仕切り直し始めた。
すると、真っ先にフィリーネが声を上げた。
「先ほど兄様が申したこともあるでしょうが‥‥。
マリーの属性について、ですわよね?お父様?」
「その通りだ、フィーネ。マリーが光属性だったことは彼女が言わずとも、受け取った指輪を見ればすぐ分かる。‥‥学園在籍時は証明書としても利用される故、必ず装着しなくてはならぬのだ。『光』ともなれば、少なからず悪意を持った者が彼女に近づくことだろう」
「だから、マリーを側で護れる存在が必要、ということですね?」
「‥‥‥そうだ」
「それで闇属性の者に狙われた‥‥‥」
フィリーネがダンドールの思惑を察し、ふたり頭を悩ましていると、急なルアンナの発言によって、空気が張り詰めた。
ーー闇。それは光とは真逆に位置する属性であり、不吉の象徴。
存在そのものが忌み嫌われ、
呪いを生み、人々を苦しめると言われる属性。
そして、唯一『光』のみがそれに対処できる、とも言われている。
即ち、マリアンナが狙われたのはただの偶然ではなく必然であったのかもしれない。
彼らはピリついた空気の中、息を静かに呑んだ。
これから小さなことだけでなく、何かとんでもない事件が起こるのかもしれない、と予感めいたものが感じられて。
そして、その渦中にはマリアンナが巻き込まれるのだろう、と確信して。
◆
その日、食事を終えたギルガルドが廊下に出た時に、離れたところを歩くマリアンナの背中をじっと見て呟いた。
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥闇?」
食事の際、マリアンナの周りに軽く見られた程度の靄のようなモノは、彼女を襲った者が闇属性だったからであろう、とギルガルドは考察していた。
しかし、今。彼が背中越しに見た靄は、内面から溢れ出ているかのようにマリアンナを覆っている。
(以前見たときは急に光が感じられて驚いたが‥‥。考えてみればえばあれも可笑しい。生まれ持った属性がそう簡単にころころ変わるなど有り得るのか?それとも 、 、 、)
ギルガルドが歩を進めながら頭を回転させていると、再び闇属性の少女のことを思い出した。
今日マリアンナを襲い、家にまで来たという少女である。
ある一つの考えに至ろうとした時、ギルガルドは丁度彼の部屋の前まで着いていた。
其処は授業を受ける場所とは違い、彼以外入ることの出来ないよう魔術が施された部屋だ。
(果たして、そんなことが出来るのか‥‥‥)
彼はドアを閉めると、立ち上がったまま魔術を小さく唱え、もう一人の自分に似たモノを作り出し、何かを命じた。
ソレは頷くと直ぐに姿を消した。
「‥‥‥‥消費が大きいのが何とも不便だな」
彼はそう言って牢獄にいるであろう彼女を思い浮かべ、久々にフッ、と不敵にも笑った。
夕陽はすっかり沈み、カーテンを開けた窓からは欠けた月が大きく空に浮かんでいる。
「‥‥マリー。あんな事が起こった手前言うべきではないかもしれないが、試験合格おめでとう。無事でいてくれて本当にありがとう」
すっかり白けてしまった空気の中、ダンドールが固く閉ざしていた口を開けた。
本来ならば、明るく盛大に彼女を祝う為に色々な用意をコッソリしていたのだが、それらの出番はなさそうだった。
ダンドールが食べよう、と言うまでは料理にも皆手を付けておらず、ギルガルドも仕方なくそれに合わせていた。
勿論ギルガルドは何が外で起こっていたのか知っている。
あれ程大騒ぎすれば聞きたくなくても聞いてしまう、というものだ。
マリアンナが遠慮がちに料理に手を付けたことを皮切りに、やっと食事が始まった。
とはいえ、いつもよりむしろ静かなのだが。
けれども、フィリーネが何とか場を明るくしよう、とこれからの学園の話をマリアンナに優しく話し初め、少しずつではあるが、空気が明るくなっていった。
皆、先ほどの事件については、彼女をまた傷つけてしまわないように、マリアンナの前では一言も触れなかった。
食事が終わり、ダンドールに今日は早く寝なさい、と言われたマリアンナは席を立ち、入浴前に一度部屋に戻ることにした。
側に控えていたメイに、先に風呂場に向かい入浴の準備をするよう申し付けて。
そして彼女は廊下に出てメイと別れた直後、目を細めて口を不吉に歪めて密やかに嗤った。
ギルガルドが本日の主役が出て行ったのを見て席を立つと、ダンドールが珍しく彼に話しかけた。
「ギルガルド。マリアンナ抜きで家族と話したいことがあるんだ。今日は悪いが座ってくれないか」
「今更何を言うんですか。先程の事件のことでしょう?私には関係ないことです。私も忙しいのです。明日には別件で用もあるので失礼させて頂きます、伯爵様」
それを聞いて何か言葉を紡ごうとするダンドールの手の甲にルアンナがそっと手を乗せて首を振った。
これ以上は止めましょう、とルアンナの目が言いたげに彼を見た。
結果的にダンドールの説得も虚しく、ギルガルドはさっさと部屋を出て行ってしまった。
「‥‥‥気を取り直して、さっきの続きを話し合いましょう?旦那様」
「あ、あぁ‥‥。」
社交界では毅然としたダンドールの弱々しい姿を見て、ルアンナが少し間をおいてから仕切り直し始めた。
すると、真っ先にフィリーネが声を上げた。
「先ほど兄様が申したこともあるでしょうが‥‥。
マリーの属性について、ですわよね?お父様?」
「その通りだ、フィーネ。マリーが光属性だったことは彼女が言わずとも、受け取った指輪を見ればすぐ分かる。‥‥学園在籍時は証明書としても利用される故、必ず装着しなくてはならぬのだ。『光』ともなれば、少なからず悪意を持った者が彼女に近づくことだろう」
「だから、マリーを側で護れる存在が必要、ということですね?」
「‥‥‥そうだ」
「それで闇属性の者に狙われた‥‥‥」
フィリーネがダンドールの思惑を察し、ふたり頭を悩ましていると、急なルアンナの発言によって、空気が張り詰めた。
ーー闇。それは光とは真逆に位置する属性であり、不吉の象徴。
存在そのものが忌み嫌われ、
呪いを生み、人々を苦しめると言われる属性。
そして、唯一『光』のみがそれに対処できる、とも言われている。
即ち、マリアンナが狙われたのはただの偶然ではなく必然であったのかもしれない。
彼らはピリついた空気の中、息を静かに呑んだ。
これから小さなことだけでなく、何かとんでもない事件が起こるのかもしれない、と予感めいたものが感じられて。
そして、その渦中にはマリアンナが巻き込まれるのだろう、と確信して。
◆
その日、食事を終えたギルガルドが廊下に出た時に、離れたところを歩くマリアンナの背中をじっと見て呟いた。
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥闇?」
食事の際、マリアンナの周りに軽く見られた程度の靄のようなモノは、彼女を襲った者が闇属性だったからであろう、とギルガルドは考察していた。
しかし、今。彼が背中越しに見た靄は、内面から溢れ出ているかのようにマリアンナを覆っている。
(以前見たときは急に光が感じられて驚いたが‥‥。考えてみればえばあれも可笑しい。生まれ持った属性がそう簡単にころころ変わるなど有り得るのか?それとも 、 、 、)
ギルガルドが歩を進めながら頭を回転させていると、再び闇属性の少女のことを思い出した。
今日マリアンナを襲い、家にまで来たという少女である。
ある一つの考えに至ろうとした時、ギルガルドは丁度彼の部屋の前まで着いていた。
其処は授業を受ける場所とは違い、彼以外入ることの出来ないよう魔術が施された部屋だ。
(果たして、そんなことが出来るのか‥‥‥)
彼はドアを閉めると、立ち上がったまま魔術を小さく唱え、もう一人の自分に似たモノを作り出し、何かを命じた。
ソレは頷くと直ぐに姿を消した。
「‥‥‥‥消費が大きいのが何とも不便だな」
彼はそう言って牢獄にいるであろう彼女を思い浮かべ、久々にフッ、と不敵にも笑った。
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