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第十二章 混迷なう

287話 上履きなう

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287話



 京助がどこかに連れていかれてしまったので、冬子たちは先にチェックインするために宿に来ていた。

「ここか……なんか、だいぶ和風だな」

「そうだねー」

 ちゃんとした観光地の温泉宿とは一体どういうものなのか――冬子と美沙はかなり気になっていたのだが、何というかだいぶ肩透かしというか変な感じだった。
 木造の二階建ての建物、庭と石づくりの道……これで松の木なんかが生えていたら、まんま日本旅館だ。

「ワフウとは?」

「私たちのいた国――日本には、こういう建築物がよくあったんだ」

 特に、冬子の家は道場をやっていた兼ね合いで、こんな木造の平屋だった。京助を家に招いた時は『都会のど真ん中にこんな家ある?』と失礼なことを言われたものだ。

「うちはマンションだったからあんまり懐かしい感じはしないけど……ううん、嘘。なんだろうね、この気持ち。里心?」

「さぁな」

 じわり、と美沙と冬子の目が――少しだけ潤む。ホームシックなんてとうの昔に克服したと思っていたのに。
 そんな冬子の腰に、スッと手が回される。

「トーコ、大丈夫ですか?」

「ああ、平気だ」

「ミサちゃん、大丈夫デスか?」

「大丈夫だよ。……ちょっとだけ、なんか思い出しちゃっただけだから」

 美沙も笑みを作り、冬子と目を合わせる。
 切ないのは、お互い同じだろう。
 冬子はそう思いながら、首を振った。

「さ、早くチェックインしてしまおう。ダンジョンの疲れは、正直取れて無いんだ」

「キアラさんに傷は治してもらえますが……逆に言ってしまえば、それだけですからね」

 前衛二人がそう言うと、後衛の二人は少しだけ申し訳なさそうに冬子たちの手を取った。

「ヨホホ……いつもお疲れ様デス」

「やっぱり京助君がいないと前衛二人の負担大きいよねー。やっぱり私ももうちょっとベルゲルミルを自由に操りながら、自分の魔法を使えるようになりたいなー」

 美沙の言う通り、京助がいれば冬子とピアの負担はそこまで大きくならないだろう。あいつは前衛中衛後衛、全てを自力でこなす万能兵だから。
 しかし、本来のあいつは槍使いであり――武器の適正で言うなら中・近距離から遊撃的に敵にトドメを刺していく役目のはず。

「もっと、役割を細分化して京助には自由に敵を粉砕していってもらえるようにしたいな」

「っていうか、私たちもSランカーになりたいねー。それで、京助君とガンガン一緒に戦いたい」

「我々がSランクか……なかなか難しそうだが」

 とはいえ、いずれは目指したい高みではある。京助と並び立つには、やはり同じ立場に行くことが必要だろう。

「取りあえずチェックインだな」

 気を取り直して皆で宿屋の入口の方へ。庭園を歩いていると何だか本当に日本の観光地に来たような気分になる。
 引き戸(こちらの世界では珍しい)から中に入ると……

「……土足じゃ、無い!?」

「板張りだし、これもしかして畳もある感じ?」

「あら、お客様ですか。ようこそいらっしゃいました」

 中から和服の女将……ではなく、普通にロングスカートの三十代くらいの女性が現れる。緩いパーマのかかった肩くらいまであるブロンドの髪を揺らしながら、冬子たちの分のスリッパを並べてくれる。

「こちら、内履きでございます。お客様には大変申し訳ないのですが、この玄関で靴を履き替えていただいてもらうことになっております」

「ねぇ、冬子ちゃん。スリッパまで出て来たよ」

「人族は土足文化だったと思いますが……」

 日本人である冬子と美沙、そして靴を脱ぐ文化のあった獣人族であるピアが少しポカーンとしていると……土足文化ながら、現在の自宅は靴を履き替えることが常識になっているリューとマリルの方はさくっと履き替えている。

「二人とも、驚かないのか?」

「……あ、なんか家で慣れ過ぎてて違和感なかったですー」

「ヨホホ、そういえば我が家以外では初めてデスね」

 よく分からないが、二人は特に気にしていないらしい。
 冬子たちも履き替えて入口に上がると……女将さんは少しだけ眉をひそめた。

「あ、あの……亜人族奴隷は……」

「彼女は私たちの家族だ。……タローの紹介だったが仕方ない、別の宿を探そう」

 てっきりタローが話を通しているものだと思っていたが、そうで無いなら仕方がない。そう思って冬子たちが回れ右をしたところで――女将さんがポンと手を打った。

「タロー……あ、アトラ様。ということは……あ、あの……もしかして、キョースケ・キヨタ様の奥様達ですか!?」

「え? あ、はいそうですが」

「た、大変申し訳ございません! ええ、ええ。確かにアトラ様から聞き及んでおります! ささ、こちらへどうぞ!」

 冬子がうなずくと、女将さんはいきなりニッコニコの笑顔になり、中へ入るように促した。
 なるほど、そもそも誰か分かっていなかったのか。いや冬子たちも名乗っていないから、気づかなくても仕方が無いか。

「改めまして、ようこそ夢枕亭へ」

 笑顔の女将さんに促されるまま、京助の名前を書いてチェックイン。ガラスの引き戸が並ぶ板張りの廊下を歩きながら、庭の方を見る。
 庭自体は非常に綺麗で、かなり日本のそれに近い――のだが、引き戸のデザインが妙に洋風でミスマッチなせいで、ゲームで和風建築をしようとして失敗したみたいになっている。 

「あのー、この辺の宿屋ってみんなこんな感じなんですか?」

 美沙が歩きながら女将さんに問うと、彼女はかんらかんらと笑い出した。

「いえ、こちらの宿は義父が作ったものなんです。当時、懇意にしていたアトラさんのお父様からアイデアをいただいて今の形になったとか」

 タローの父から?
 美沙と冬子で顔を見合わせる。『この世界に無い文化』を持ち込んだのが、タローの父ということは……

「タロー……太郎?」

「いやそれずっと思ってたけど……ええっと、タローさんのお父さんってなんてお名前だったんですか?」

「ええっと、確か……ケン・クロモリとか――」

「そこまでだ、ミスミノン」

 フッ、と。
 唐突に後ろから黒衣の男性が現れ、女将さん――ミノンさんの口を塞いだ。胡散臭い笑みを浮かべるイケメン……アトラ・タロー・ブラックフォレストだ。

「きゃあっ! あ、ああああアトラ様!? ど、どうしてここに!?」

「私も客だ。彼女らに――正確には、彼女らの夫に用があってね」

「はわわわわ……顔が良い……はふぅ」

 ガクッ、とタローの腕の中で気絶するミノンさん。推しにファンサされたヲタクみたいになっている。
 ミノンさんを抱えたタローがこちらを向くので、冬子は腕を組んでから彼の眼を睨む。

「それで、タロー」

「私はアトラだ。『黒』のアトラ」

「――お前のお父さんは、何者なんだ?」

 冬子の問いに――ふっ、とキザに笑うタロー。舞台俳優のような、芝居がかった演技で肩をすくめた。 

「気になるのかね? 聞けば、引き返せないぞ」

 引き返せない。
 女将さんはじゃあもう引き返せないところにいるのか――と一瞬思った物の、その言葉が持つ重みに冬子は少しひるむ。

「……あまり多くの人に話したいわけでは無いが……」

 タローが涼やかな笑みのまま口を開く。

「殆ど記憶にない父だ。だが、いやだからこそ――知りたいんだ。私は父の故郷を。……君たちと共有できる情報が増えたこのタイミングで、招かせてもらった」

 招いた、まぁ、招いたか。
 京助に紹介したのはタローなのだから、彼は最初からそのつもりだったのだろう。
 冬子は頷き、背筋を伸ばした。

「京助が来てから、あいつに確認する。その後でいいか?」

「ああ、いいとも。……そうだ、君たちの部屋で待っていていいか? その話以外で――話したいことがあってね」

 冬子と美沙とリューとマリルがさっと自分の体を抱いて距離を取る。タローは涼やかな笑みを少しだけ引きつらせながら、咳払いした。

「いや、あのだね」

「もし万が一、我々に指一本でも触れたらマスターにチクります」

「ほっほっほ、タローよ、お主の甘いマスクはこ奴らには通用せんのぅ」

 コロコロと笑うキアラさん。タローは苦笑しつつ、肩をすくめた。

「決して手を出そうなんて話じゃない。……ミス冬子、君の変化について、ね」

 冬子の変化。心理的なものでは無いだろう、それを察されるほど彼と関係が深いわけでは無い。
 であれば、冬子の新しい『職スキル』についてでは無いだろうか。

「実力的な話か」

 頷くタロー。

「ふむ……皆、いいか?」

 冬子が振り返って問うと、反論は無いのか皆頷いた。タローが気絶していたミノンさんをペシペシ叩いて起こす。

「ミスミノン、彼女らを部屋へ案内してあげたまえ」

「へ? あ、はい! 大変申し訳ございません、お客様の前で気絶するなど……! た、ただいまご案内いたします!」

「わかりました」

 大慌てで立ち上がるミノンさん。半泣きになっている彼女の案内についていきながら、冬子は思う。

(自分たち以外の異世界人、か)

 それを知って、自分はどうするのだろうか、と。


~~~~~~~~~~~~~~~~~


「おー、広くていい部屋デス」

「畳……は、無かったのかぁ、残念。でも何か、それっぽい見た目だね」

「だがこれは……畳では無いが、なんだこれ。カーペットでも無いぞ」

 見た目は赤く、帯の無く畳だ。色は変な感じだが、触ってみた感触は畳と遜色ない。

「そちらはリッカーと呼ばれる床材ですね。名前の通り、リッカーという木からとれる皮をなめして編んだもので板材を覆ったものになります。独特な柔らかさと、温かみが特徴です」

 ミノンさんが解説してくれる。どうも本家の畳とは作り方がまるっきり違うようだ。

「ベッドも無いですねー」

「ということは布団か?」

「おや、オフトゥンもご存じなんですか? あちらのクローゼットに入っております」

 オフトゥン……オフトゥン?
 取りあえず指さされた方を見ると、そこには襖のパチモンが。触ってみると、木の上から紙が貼られていることが分かる。惜しいんだけど、何か違う。
 ビルトインクローゼットになっているので、からりと開けると……布団、にしては分厚いものが入っていた。マットレス、だな。

「これの上にシーツを敷くのかな」

「なんだろう、修学旅行みたい」

 美沙と二人で困惑しているが、それを華麗にスルーしてミノンさんは説明を続ける。

「えーと、こちらにタオルとお着替えは入っていますので、お使いください。あと当宿の温泉ですが……男湯と女湯に分かれていまして、水着ではなくそのまま入っていただく形になっています」

 まさかの日本方式。

「……タローのお父さん、相当こだわったんだろうな」

「それでも惜しいの域を出てない気がするけどねー」

 それはそうなんだが、それでも凄い。

「ではマスターと一緒に入れないのですか?」

 ピアがミノンさんにそう問うと、彼女は苦笑して首を振った。

「いえ。こちらは十人部屋ですので、お部屋に広めの露天風呂がついておりますのでご安心ください。旦那様とご一緒に入りたければそちらへお願いします。大浴場の方が広いですが、部屋付きの露天風呂もそこそこ広いですよ」

 何故か水着無しで混浴する前提で話している二人の会話を聞きながら冬子は少しだけ頬を赤らめる。
 その後も宿のルールを一通り説明してもらい、女将さんは退散していった。

「日暮れには晩御飯も出るらしいし、なんかホントに日本旅館って感じだね」

「ところどころ変だが、その通りだな。クラスメイト達もここに来たら喜ぶんじゃなかろうか」

「ああ、木原ちゃんとかは来た方がよさそうだよねー。あの子、外には出られるようになったみたいだけど、まだ本調子じゃないっぽいし」

「あー、キハラさんですかー。たまにうちに見えられますけど、なんかだいぶお淑やかな方ですよねー」

「昔は金髪のバリバリだったのにな」

 取りあえず備え付けの大きいテーブルの周りに座布団をしいて座り、お茶を淹れてまったりする。

「凄いですねー、このお湯を沸かす魔道具。うちにも欲しいですー」

「京助に今度聞いてみようか」

「マスターのことですから二つ返事なのでしょうけど」

 どうも京助はもう少し時間がかかるようなので、先にタローを招くことにした。

「それで、話とは?」

「話しと言うか、祝福というかね。ともあれ、ミス冬子。『覚醒』おめでとう」

 覚醒?
 聞きなれない言葉だ――そう思っていると、窓際でボケッとしていたキアラさんがじろりとタローを睨んだ。

「相変わらず、目ざといのぅ」

「女性の変化に気づけないようでは、プレイボーイ失格なのでね」

 プレイボーイの自覚はあったのか。

「この宿で落ち着いたタイミングでキョースケと一緒に話すつもりぢゃったが……先に話すのも良かろう。後でトーコたちからキョースケに伝えれば良い」

 キアラさんはそう言って、またのんびりと窓辺で煙管を吹かしている。いつの間にか酒を用意し、とくとくと自分のお猪口に注いでいる。

(……冷静に考えたら――キアラさん、なんでミニスカ和服なんだ)

 艶やかな雰囲気と風貌によく似あっているので忘れていたが、彼女はこの世界の人間のはず。なんでこんな格好を。
 少し頭に浮かんだ疑問を「まぁキアラさんだし」で一旦追い出し、冬子はタローの顔を見る。

「『覚醒』とは?」

「簡単なこと。君たちも一度見ているだろう? ミスター京助とミスタージャックの戦いを」

 確か、シリウスで行われた天覧試合。その時に京助と戦ったSランクAGがジャック・ニューマンだったはずだ。
 あの京助が本気で戦って尚、辛勝しか出来なかった最強の武道家の一人。

「『魔物拳法モード』と、彼は言っていたかな」

 そういえば京助と戦った時にそんなことを言っていたか。そして冬子はフッと、自分が新たに覚えた『職スキル』の名前を思い出す。

「……『サムライモード』」

「そうか、君の『覚醒モード』は『サムライモード』と言うのか」

 うっかり冬子が『職スキル』の名前を言ってしまうと、タローは少しだけ眉を上げた。

「サムライ……聞き覚えの無い単語だが、君の故郷の言葉かね?」

「……まぁ、そんなものだ」

「そうか」

 タローは一度言葉を切ると、マリルさんが淹れてくれたお茶を一口すすった。

「『職』は通常、一度決まったら変化しない。その変化こそが『職』の進化だ。そして二段階進化した後にあるものは……敢えて言うのならば『深化』だろうか」

 進化の先にある深化。

「『職』の二段階進化後は、今までの進化とは違い固有の名称になっているものが多い。有名どころで言えば、ミスターセブンの『巨大剣士』などだな」

 セブンといえば、最初に出会ったSランクAG。あの巨体をさらに巨大化させて敵と戦うという話だったが、そんな『職』だったのか。

「『職』が進化した時、そこまでステータスに変化が無かったことが不思議では無かったかね?」

「ああ、言われてみれば私も天川君も、他のメンバーもそうだったね」

「確かに、身体能力強化の『職スキル』だけゲットした感じだったな」

「『覚醒』してから、見たかね? 自分のステータスプレートを」

 言われてみれば見ていない。冬子はアイテムボックスからステータスプレートを取り出し、ステータスを見てみる。


ステータス
名 前:佐野冬子
『職』:侍
職 業:王室付き騎士
攻 撃:1600
防 御:350
敏 捷:1600
体 力:800
魔 力:700

職スキル:一刀両断,居合い斬り,刀剣乱舞,飛斬撃,飛斬撃・二連,剣蹴撃,サムライモード,三連斬り,刀身捌き,飛竜一閃、寸勁斬、断魔斬、飛翼連裏、刃逐ノ勢、魔力変換、侍之波動
使用魔法:無し


「……消えている」

 冬子の持っていた肉体強化系のスキル――『激健脚』という脚力強化のスキルが、『サムライモード』に変わっている。

「それが『覚醒』だ。自分の持つ『職』の真の力を発揮する|状態(モード)に入る。そうなって初めて、人知超越の世界に入門できる」

 人知超越の世界――。
 目の前にいる|人知を超えた男(Sランク)の言葉に、冬子たちはゴクリと息をのむ。

「二段階進化した『職』を自らの物としてやっとスタートラインに立てる。……おめでとう、ミス冬子。君は我々の世界の門扉に立った」

「ってことはじゃあ、トーコちゃんはもうSランカーくらいの強さってことですかー!?」

 マリルがぴょこんと冬子に飛びついてくる。冬子はそんな彼女をしっかりとキャッチしてから、タローの目を見た。
 涼やかで、緩やかで――その奥に猛禽のような鋭さを漂わせる目を。

「私の見立てでは……『条件次第』と、付くのではないかな?」

「……まぁ、そうだろうな」

 冬子はタローの言葉に反論せず、苦笑を返す。

「相性が悪い敵が出てきたら、どうしようもないからな私は」

 冬子の新しい『職スキル』に斬れない物はない。しかし、再生する魔物のように斬っても倒せない敵が来たらどうなるだろうか。
 相性が良くなければ敵を倒せないのでは、まだまだSランクとは言えないだろう。
 京助のように様々な敵にも対応出来るようにならないと。

「ミス冬子の新しい能力がどういうものかはわからないが――ミスター京助のように戦う必要もない。君は君で、相性の悪い敵に対処する方法を磨けばいい。私のように敵が何もできないような物量で押す、みたいにね」

「貴重なアドバイス、感謝する」

 冬子が軽く礼をすると、タローは少しだけ切なげな笑みを浮かべる。

「私たちSランクAGとは、言ってしまえば特権階級のようなものだ。我々を縛るのは、我々自身だけ。……だから、君たちが羨ましいと思うよ。自分以外に、ストッパーがいる。それはどれだけ気が楽になることか」

 ……仮にタローが道をたがえた時には、他のSランカーが止めるのだろう。しかしそれは、お互いに殺し合った結果『止まる』ことになるはずだ。
 でも、冬子たちが願えば……きっと、京助は踏みとどまってくれる。止まらないなら、冬子たちが納得する理由を伝えてくれる。
 だから、安心できる。

「ただのぅ……それでも妾は、キョースケは縛られ過ぎていると思うがのぅ。どこぞの誰かが、釘を刺し過ぎてくれたせいでの」

「はは、耳が痛いな、ミスキアラ。その通り……確かに、彼はあまりに自分を縛り過ぎている気がするな。もう少し、『世界』に我儘を言っても良いんじゃ無いだろうかと思うよ」

 世界に、我がまま。
 その言葉の意図を測りかねていると、窓際のキアラさんが煙管の煙を吐き出した。

「お主も似たようなものぢゃろう、タロー」

「……まぁ、私は少しだけ柵もあるのでね」

 キアラさんの言葉は曖昧にはぐらかし、タローは立ち上がった。

「さて、ミスター京助ももう少しかかるみたいだし……一度私は部屋に戻ろうと思う。せっかく慰労に来ただろうに、部外者がいるのも嫌だろう?」

「あ、待ってください」

 立ち上がろうとしたタローを呼び留めた美沙。彼がくるっと振り返ると――美沙はいつものポワポワした笑みのまま、変なことを言いだした。

「あのー、せっかくなんで京助君をハーレム堕ちさせる方法を教えてもらえませんか?」

「……は?」

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