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第十一章 先へ、なう

271話 ダンジョンスタート! なう

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271話


「それで……なんで冬子はそんなに疲れてるの?」

「聞かないでくれ……お前にだけは知られたくない……」

 諸々を終えて皆と合流すると、何故か冬子がやつれていた。今からダンジョンに行くっていうのに、大丈夫だろうか。

「いや、本当に何でも無いんだ……ただ、ちょっとイケない扉を開きかけただけで……」

「京助君、今冬子ちゃんとギルドに行けば凄い光景がみられるよ」

「美沙! やめろ!」

 半泣きで美沙の口を塞ぎにかかる冬子。マジで何があったんだ……。

「大丈夫ですよ、マスター。トーコさんがドS開眼しただけですから」

「開眼してない! テキトーなことを言わないでくれ!」

 冬子がドS開眼……?
 脳内でボンテージを着て鞭を持っている冬子を思い浮かべるが……顔を真っ赤にしてモジモジしている姿しか想像できない。
 ああでも、そういえばクラスでも『踏まれたい女子ナンバーワン』とか言われてたっけね。

「えっと……俺、冬子がどんな趣味でもちゃんと受け止めるから安心してね。でも、俺、あんまりMっけは無いっていうか……」

「お前があんな風になったら私本気で泣くぞ……私にあんな趣味は無い。どっちかというと……いや、うん、とにかくそんな趣味は無い」

 冬子は一度大きなため息をつくと、リセットしたようにグッと胸を張った。

「よし! それで集めた情報なんだが……」

「深部まで行ったAランクチームが五組、消息不明らしいですー。基本的にはモンスターダンジョンで、一層目で罠は確認されていないらしいですねー。でも二層目に行って帰ってきた人はいないらしいので、何とも言えないですー」

「あと、とにかく平面として広いらしいんだ。山にあるからなのか、少なくとも二百メートルは探知できる魔法師が一層目を隅々まで探知出来なかったらしい」

 平面に広いダンジョンは往々にして浅い傾向にあると聞いたことはあるが……

「そんなことも無いんだろうね」

「相当深いと考えても良いぢゃろうな。……ふむ、どれくらいかかることやら」

 持久戦の様相を呈してくるかもしれない。そう考えると補給や、脱出の方法を考えておいた方がいいかもしれないね。

「……待てよ? 確か、転移丸薬ってのが支給されるんだよね。なのに全滅したの? AランクAGが?」

「話を総合するとそういうことになるな。EXダンジョンは伊達じゃないということか」

 AランクAGが逃げる間も無く……か。

「後は、一層目にはスケルトン系の魔物と、ゴーレム系の魔物が出てくるらしい。魔物じゃなくて、ダンジョンモンスターだったか」

「D・D・Mってやつだね!」

「それはダンジョンダ〇スモンスターズ。なんで微塵も流行らなかった遊〇王のゲーム知ってるの? 美沙」

「実は私たちよりもさらにディープな趣味してるよな、美沙は。ちなみに私は兄が買って持ってたぞ、GBA版のD・D・M」

「よくそんなの持ってるね……まあ、それは置いておいて」

 殆どの人を置いてけぼりにしている会話を切り上げ、俺はマリルから受け取った報告書をさらに読み進める。

「……なるほど、一層のマッピングすら出来て無いと」

「はい。Sランクダンジョンだと良くあることなんですがー、どうも入る度に通路が変わるらしいんですよねー」

 いわゆるラビリンス的な感じになっているわけか。益々面倒だね。

「ただー……第一層で一度だけ宝箱が出たことがあるんだそうですー。それがAランク並みの業物だったらしくて―」

「へぇ……ん?」

 ダンジョンへ行くために街を歩いていくと、その前に四人の男が立ち塞がった。金髪が二人、茶髪が一人、そしてオールバックのおっさんが一人。

「テメーらが『頂点超克のリベレイターズ』か?」

「そうだけど?」

 俺が答えると、オールバックのおっさんはフンと鼻を鳴らす。

「ってことはお前が『流星』だな。今はテメーに用はねぇ。トーコってのはどいつだ」

 何故か冬子をご指名のオールバックのおっさん。なんでだろう――と思って俺が少し困惑していると、冬子が俺の前にズイッと出てきた。

「ということは、お前が『鬼の頭髪』のリーダーか?」

「おう。オレが『鬼の頭髪』のリーダー、AランクAGのオルバクだ」

 見れば、後ろの金髪の坊主は顔を腫れあがらせ、茶髪のカーリーヘアは大きなたんこぶを作っている。そして金髪のロン毛は顔にブーツの跡が……。
 よく分からないが、冬子はこの状況を把握しているらしい。それなら彼女に任せた方がいい、のかな?
 そう思って一歩引くと――何故か、金髪のロン毛がバッと冬子に向かって駆けだした。

「ああ! トーコ様! 是非またそのおみ足でわたくしめを踏んでくださがいあっ!」

 そのロン毛を槍で殴り飛ばし、俺はオルバクを睨む。

「そっちのチームでは、人のチームメイトにわけわからないことを叫びながら突っ込めって教えてるの?」

「『流星』テメーは引っ込んでろ。これはうちのチームとそこのトーコとの問題だ」

「そうはいかない。俺はこのチームのリーダーだからね。喧嘩売ってるなら――」

「まあ待て、京助。今回は私に任せてくれ。私がこのチームの看板を少しでも背負おうとして戦っただけなんだ」

 そう言った冬子は、キリッとした表情で俺の方を向いた。覚悟の決まった表情と言うべきか。どことなく精悍な顔つきになっている。

「私は、お前が不在の間はリーダーとしてすべきことをしただけなんだ。だから、この戦いは私に任せてくれ、京助」

 フッ……とニヒルに笑う冬子。ますますよく分からず、俺は首をかしげる。

「冬子、何したのさ」

「何をしたってそりゃお前、トーコがロンの金玉踏みつけて思いっきり見下した目で見たせいで、あいつがドMに目覚めちまっしゅ!」

「なんで全部言うんだ!」

 冬子のハイキックが後ろのカーリーヘアに突き刺さる。おおう、ナイスキック。そして冬子は一体何をしてそんなことに……?

「ち、違うんだ京助。私はそんなことのために戦ったんじゃなくて、その」

「ってわけだ。うちのチームメイトをドMに調教して骨抜きにした責任は取ってもらおうって話だ。ロンは確かに女好きだが、ここまで入れ込むことは滅多に無いからな……」

「調教とか言うな! わたっ、私が誤解されるだろう!?」

 顔を真っ赤にした冬子は俺の方を振り向くと、ガシッと肩を掴んだ。

「違うんだ、違うんだ京助……! 私をそんなはしたない女だと思わないでくれ……! わ、私はお、お前が、その……!」

「あー、冬子、冬子。落ち着いて。うん、大丈夫大丈夫。俺は気にしてないから、うん」

「私の目を見て言ってくれ!」

 冬子が調教したっていうのはよく分からないけど、たぶん彼女のことだから何か誤解されてそんなことになったのだろう。
 俺は彼女の手を掴み、優しく微笑んだ。

「大丈夫、俺は冬子のことを信じてるから」

「うう……京助……!」

「の、脳が破壊される……なのに、何故か心から湧き上がるものが……目を離せない……こ、これが寝取らおるてがぁっ!」

「何が寝取られだ。……一度だってお前に冬子を渡したことは無い」

 俺は何故か背後で頭を抑えてうずくまっていた金髪の坊主頭を風でぶっ飛ばし、冬子の方を見る。

「……ねぇ、京助君がぶっ飛ばしちゃったから、もう冬子ちゃんだけの問題じゃなくなってない?」

「ヨホホ……ま、まあお相手もキョースケさんとは対峙したくないでしょうデスから……見て見ぬフリをするんじゃないデスかね……」

 後ろで美沙とシュリーがひそひそとそんなことを言ってる。あ、そういえばぶっ飛ばしちゃダメじゃん俺。
 しかし冬子とオルバクは他の連中がぶっ飛ばされたことは気にしていないようで、ジッとにらみ合っている。

(相手は結構やりそうだけど……)

 Aランク、というのは嘘じゃ無さそうだ。冬子が負けることは無いだろうが、かといって楽に勝てる相手でも無いだろう。ダンジョンアタックに行く前にやるには重たい相手だ。
 冬子が任せろと言ってるから、横やりは入れない方がいいのかもしれないけど……大丈夫だろうか。
 その後も十秒ほど睨み合ってから、冬子が口を開いた。

「私たちは今からダンジョンに挑戦するんだ。用があるならさっさとしてくれ」

「ダンジョン? ……じゃあ、落とし前はそれが終わってからでいい。ただよ」

 さっき俺が吹っ飛ばしたロン毛がピクピクしながら、こちらへ迫ってきている。ゾンビかな?

「あいつがもう一回お前に踏まれるまでクエストに行かねえとか言い出してよ……それじゃあどうしようもねえから、一回踏んでやって欲しくてな」

 ええ……。
 冬子も、もちろん他の皆も流石にドン引いた顔をしている。そんなヤバい奴、現実にいるんだ……。

「京助……えっと、踏んでも、いいか?」

「ダメ」

 俺は冬子がドン引きしているのを見て、キッパリと答えるが――リャンがにゅっと後ろから現れ、俺の頬をつまんだ。

「マスター、それは何故ですか?」

「……別に冬子がやってあげる必要無いでしょ」

「そうですね。ですがマスターが止める権利も無いと思います。トーコさんはやってもやらなくてもいい。であれば、本人に決めさせる――それがマスターの普段の考え方では?」

 リャンに指摘されて、はたと思う。そういえばそうだ。
 普段の俺なら、自分で決めろって言うはずなのに――なんで俺は、ダメって言ったんだ?
 そんなの、人の自由を制限する行動じゃないか。

「ご、ごめん冬子。それはそうだ。俺からは何も……いや……」

 俺は自分の発言を撤回しようとして……何故か、胸にモヤモヤが残ることに気づく。別に彼女の勝手なはずなのに、冬子がそれをあのロン毛にやるのは……嫌だ。
 嫌だが、リャンの言う通り、俺に止める権利はない。冬子が俺に聞いてきたのだって意味がある行為じゃないだろう。
 自由は、その人のもの。誰もその権利を害しちゃいけない。
 なのに――何故――。

「いい、京助。お前の言う通りにする」

「と、冬子? なんで?」

「……私は、チームのために責任をもって行動したつもりだ。その結果、なんか酷い惨状が出来上がったがそこはそれ。……だから京助」

 冬子は俺の頬からリャンの手を外し、ちょっと寂しそうに笑った。

「だから京助。ちゃんと、責任を持ってくれよ? 私はお前の言う通りにするんだから」

「えっ、いやだから冬子」

「お前の言う通りにするのは、私の意志で自由だ。だが、少しは……そうだな、口出して欲しいし、口出した責任も持って欲しい。それだけだ」

 責任?
 そりゃ、責任なんていつだって取るつもりで動いている……ん、だけどな。

「そういうわけだ。文句はダンジョンが終わってからにしてくれ」

「……そうか、じゃあまあそれまで我慢すっか」

 オルバクはそう言うと、自身の剣をこちらに見せてきた。

「ちなみに、これはあのダンジョンで出た剣だ。……俺をAランクに上げてくれた凄い武器だぜ」

 オルバクはそう言った後に、ニヤリと笑う。

「二層に気をつけな。……俺の先輩AGは、二層に入った瞬間、一切の反応が消えた。俺とカーリーはその時点で逃げ出したから生きている」

 なるほど、彼が例の一層で強力な武器を手に入れたAGか。チラッと見るだけでは、どんな剣かは分からない。だが、確かにそこに異様な魔力が込められているのは分かる。
 あの時見た、セブンの大剣と同じだ。

「アンタ、若いからな。退かないでここまでこれたと思う。だが……マズいと思ったら退けよ?」

「忠告ありがとう」

「AGの心得、習わなかったか? 利害が食い合わないなら情報を共有すべし、だ」

 習ったような習ってないような。しかし今まで俺が他のAGとやってきたことだし、これからもやっていくことだろう。

「ありがとう、オルバク」

「おう。そしてトーコ。Aランクチームに喧嘩売ったんだ、ダンジョン終わったらキッチリ落とし前つけさせてもらうからよ」

 冬子はオルバクの方を見ると、グッと胸を張った。

「ああ。いつでもかかってこい。Sランクチームに喧嘩を売ったことを後悔させてやる」

「はっはっは! うし、おら! テメェら起きろ! 今から無茶苦茶にしごいてやる!」

 後ろで伸びてる三人を引きずり起こし、頭を叩くオルバク。そのまま連中を連れて、街の中に消えていった。
 ……凄くAGらしい人間だったな。

「メンツを重んじるのがAGデスが、それは同時に相手のメンツも立てる時は立てるという意味デス。アンタレスには高ランクでAGらしい荒くれさを残している人は少ないデスからね。ああいうタイプは久々デス」

「うん、そうだね。……徹頭徹尾、俺じゃなくて冬子を見てた。一人のAGとして」

 俺はずっと蚊帳の外。ま、いいんだけど。
 冬子は去っていくオルバクの方を見ながら、ふうと息を吐いた。

「なあ京助。私が戦ったらあの人に勝つと思うか?」

「そりゃ勝つでしょ。物が違う」

 持っているエネルギー……俺なりの言い方をするなら『圧』。ちゃんとAランクに相応しい物を揃えているだろう。相手を舐めない、ちゃんと実力を感じ取れる目も持っている。
 しかし同時に、本人も言っている通り自身の持つ剣に大分自信を依存している雰囲気があった。

「俺と同じで、能力が武器依存って感じ。それじゃあ冬子には勝てないよ」

 冬子は前の世界でも、今の世界でもキッチリ技術を下支えにしている。努力家でもある。土台がしっかりしている。
 しっかりした土台の上に積み増しとしてチートが乗ってるんだ。そりゃ冬子の方が強くなる。

「さ、行こうか。ダンジョン踏破……いつも以上に、真剣に」

「そうですね。一応、もう少し情報に目を通しますか?」

「うん」

 マリルが貰ってきてくれた書類に目を通しながら、ダンジョンのことを考える。さて、どれほど厄介なダンジョンなんだろうね。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「神殿……みたいだね。世界ふ〇ぎ発見! とかで見たみたいな」

「ギリシア神殿とかこんな感じ、か?」

 さて、例のダンジョンの前にやってきていた。山のふもとにあるのだが、神話の世界に出てきそうな荘厳な真っ白な柱が二本、その間に奥へ続く深い通路が続いていた。
 見る者を圧倒するオーラがあり、否応なく緊張感が高まっていく。そもそも何というか、『圧』が異様に感じられる。明確な『死』のイメージがヒシヒシと伝わってくる。
 ミノタウロスが幽閉されていたラビリンスっていうのは、こんな感じだったのだろうな。

「しかしいくら『EXクラスダンジョン』とはいえ、名前が無いのは厄介だね」

 一つ息を吐いて、『死』を振り払うようにそんなことを言ってみる。他の皆も少し圧倒されていたようだが、すぐにいつも通りの雰囲気に戻った。

「クリアしないと名前がつかないデスからねー」

『っていうか、大丈夫なんですか本当にー。あと、私だけ家にいるの納得いかないんですけどー』

 ちなみにマリルは宿屋……ではなく、今だけ家に出戻っている。流石に立場上奴隷である彼女が、俺がいない状況で街にいたら何をされるか分からないからね。


「そうそう、マスター、皆さん。これを。先ほどマリルさんがギルドから借りてきてくださりました」

 そう言ってリャンが取り出したのは、手のひらにすっぽり収まるサイズの立方体。金属みたいな手触りなのに、透明で内部が見える。……初めて見る材質だね。
 横には赤と青のボタンが。そして内部に、この立方体にピッタリ収まるサイズの球体が入っている。
 球体の中には……細長い針が浮かんでおり、立方体と水平で直径に当たるであろう部分にびっしりと目盛りが書かれている。
 一目見た限りではイマイチ何か分からないそれを、リャンは人数分取り出して俺達に配った。

「何これ」

「これは『常に一定の方向を刺し続ける魔道具』です。名前は『羅針盤』ですね」

 羅針盤だったのか、これ。

「この羅針盤は全ての物が常に一定の方向を刺し続けます。基本的には六つでワンセットとなっており、赤いボタンを一度押すと……」

「「「「カリカリカリ」」」」

 くるくると全員の持つ羅針盤の針が回る。

「赤いボタンを押すと、このようにセットの羅針盤が全て音を立てて回ります。誰が押したかによって音が変わりますので、仮にバラバラになっても誰が生きているか確認しやすいです」

 俺達には志村が作ってくれたケータイがあるからいらない……と一瞬思ったけど、常に一定の方角を指すのは嬉しい。

「そして青いボタンを押すと、押した人の持つ羅針盤に向かって指針が一度動きます。これだけでは誰の方に針が向いたか分かりませんが、その直後に赤いボタンを押せば、誰の方に向いたか明確になります」

 丁寧に説明してくれるリャン。彼女が下のボタンを押すと、手の中の羅針盤が彼女の方へ一度向いてから、また元に戻った。
 その後、すぐにリャンが上のボタンを押す。するとやはり同じように、

「「「「カリカリカリ」」」」

 と、全員の羅針盤が同時に音を立てた。
 なるほど、これは便利だ。

「この針は横だけでなく、縦にも回ります。そのため、仮に分断されて別の階層に行ってしまったとしても、少なくともどちらが上か下かは把握出来ます。ラビリンス系のダンジョンと聞いて、急いで用意していただきました」

『大変だったんですよー? 何回キョウ君の名前を出して無理を通したことか』

「ヨホホ、結構強引でしたデスね」

「ありがとね」

「仮に離れ離れになったら、まずこの羅針盤を起動してください。そして合流出来そうになければ、出口を目指しましょう。今回はラビリンス系ダンジョンということですので……壁や床、天井はぶち抜いて大丈夫です。ただマスター、貴方がやりすぎるとダンジョンが壊れる恐れがありますので、その辺は加減してください」

 俺をなんだと思ってるんだ。
 そして壁や床をぶち抜いて大丈夫、か……普通のダンジョンはマッピングしなくちゃいけないから絶対にやっちゃダメだけど、ラビリンス系、つまりマッピングが無意味だからぶち抜いていいのか。
 ありがたいが、そんな簡単にぶち抜けるかな。

「まあ、そもそも離れないのが一番なんですが」

「いや、ちゃんと説明してくれてありがとう。えっと食料は皆三日分持ったよね?」

 個々人に今回は三日分の食料と、そして野営セットを持ってもらっている。ラビリンス系のダンジョンは、分断される可能性が高くなるらしいから。
 そしてそれとは別に、俺たちのアイテムボックスには一か月分の食料と水が入っている。これで長期戦になっても安心だ。

『でもそんなに長引かせないでくださいねー。いざとなったらクリアよりも命を大事にですよー』

「分かってるよ」

 マリルの言葉に苦笑し、俺達は良しと前を向く。

「それじゃあ、行こうか」

「「「「了解!」」」」

 俺達は覚悟を決めてダンジョンへ足を踏み入れる。
 ――それが地獄への入口だとも知らずに。
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