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第十一章 先へ、なう

266話 チームバトルなう

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「行くぞ! 美沙、タロー。援護お願いね!」

「任せて!」

「了解した」

 俺は走り出すと同時に魔昇華を発動させる。冬子は魂を、美沙も魔昇華を……って、いつの間に魔昇華を普通にコントロールできるようになってるんだ。

「まあ、いいか。それ!」

「おっしゃ来……うおおおおおおお!?」

 俺が飛んで槍を振り下ろそうとした瞬間、三桁近い矢が辺り一面に降り注いだ。ご丁寧に女性陣にだけ当たらない軌道で。

「な、何しやがるタロー!」

「ってか俺にも当たりそうになったんだけどタロー!」

「わっはっは、元気がええなぁタロー」

「だから私はアトラだ!」

 ズドドドドド! とスコールのように降る矢を何とか躱し、俺は風の刃をマルキムとアルリーフに飛ばす。

(まあでも、タローも俺と同じ読みなのかな)

 十中八九マルキムかアルリーフが『当たり』だ。それなら最初からリャンとシュリーに攻撃しないのも理解出来る。単にあいつが女好きってだけかもしれないけど。
 ……とはいえ、リャンとシュリーは怒るだろうなぁ。

「ムカつきました!」

「ヨホホ……ぶっ飛ばす、デス!」

 そう叫んだ次の瞬間、リャンの姿が消える。タローの背後を取り、その心臓にナイフを突き立てた。
 ――が。

「そこ!」

 パァン! と弾け飛ぶタローの形をした木偶人形。リャンが別の方向にナイフを投げると、そこからタローが飛び出してきた。

「毒ナイフとは、模擬戦で殺意が高すぎやしないかね?」

「殺しても死なないでしょう、貴方は」

「私はアンデッド系の魔物じゃないんだが……おっと!」

 さらに投げられるナイフを躱すタロー。追撃しようと走り出したリャンの前に、冬子が立ちはだかる。

「放っておいても死なないだろうが、一応な」

 そんな露骨に庇ったらバレそうだけど、まあいいか。
 相手がリャンならお互い手の内を知り尽くしている。大きくやられることも無いだろうが、すぐに倒すってわけにもいかないだろう。
 意識の端に彼女らの戦いを入れつつ、俺はこの二人に集中しないと――

「ねっ!」

 ――キィン! とマルキムの剣を受け止める。その隙をついてアルリーフの拳が飛んでくるが、首を傾けて回避する。
 空を割く音が聞こえたのでバックステップすると、マルキムとアルリーフの心臓に矢が飛ぶ。
 あっさり防ぐ二人だが、じろっとタローの方を睨んだ。

「厄介やな」

 その隙をついて、俺は『パンドラ・ディヴァー』を解放。同時にストームエンチャントを付与する。

「これでスピードも負けないよ」

「おうおう、言いよるわ」

 ボボボ! と空気が振動する音。アルリーフの方から聞こえてくるな――なんて思っていると、キラリと何かが閃いた。
 あっ、と思う暇もない。マルキムの一撃が俺の腹をぶち抜いていた。

「げふっ……!」

 咄嗟に風の結界を張ってガード。同時に後ろに吹っ飛んで距離を取る。

「いやぁ、これは結構きついね」

 そこに飛んでくるシュリーの炎は、美沙が凍らせてくれる。しれっと炎を凍らせるとか、マジで美沙は何なんだ。

「うら!」

 タローとアルリーフが俺の方へ突っ込んでくる。流石に二人を捌くのはしんどいが、タローが援護してくれているので何とか助かっている。
 アルリーフからの攻撃の時だけ、タローがいやに警戒して矢を撃ってるのは……何か、あるんだろうなぁ。あの空気の振動する音に。

「っとと」

 俺の手がいきなり燃えそうになり、魔力を奪って霧散させる。シュリーは美沙が妨害しているはずだが、彼女の方が|巧い(・・)。冷静に考えたら――何のチートも無いのに十代でBランク魔法師になった女傑だ。そうそう抑えられるはずもないね。

「シッ!」

「させん!」

 ガギィン! とマルキムの剣が止められる。冬子だ。

「あれ? リャンは――っと」

 俺のテグスのような細い糸が巻かれる。瞬時に炎で焼き切ったが、同時にガシッと腰を掴まれた。リャンだ。
 俺は即座に『ハイドロエンチャント』に切り替え、リャンを弾き飛ばす。あのままだと何されてたか分からないからね。
 マルキムの剣を槍で受け、水柱で自分を打ち上げる。『ストームエンチャント』に切り替えて、空中から風弾の爆撃だ。

「それ――って、え?」

 太陽が隠れた。何故――と思う間も無く咄嗟にその場から飛びずさると、物凄いチョップが俺のいた空間を切り裂く。

「空飛べるんは、ええなぁ」

「いやそっちも飛んでんじゃん……」

 なんで当たり前のように飛んでるんだよ。Z戦士かよ。
 真っ青なオーラ、恐らく『職スキル』によるものであろうそれを纏ったアルリーフ。ジャックやタローといった現役の連中と遜色ない迫力。何でこんな化け物がギルドマスターやってんだよ!

「『丑光怒気』!」

 蒼白いオーラと共に、アルリーフの拳が飛んでくる。咄嗟に『パンドラ・ディヴァー』でガードするが――拳が触れた直後、とんでもない衝撃が俺の全身を貫いた。

「ぐあぁ!」

 吹っ飛ばされ、地面にたたきつけられる。そこに間髪入れずマルキムの剣が俺の心臓を狙うが、『ハイドロエンチャント』に切り替えてそれを素手で受け止める。

「うおりゃあ!」

 そのままぶん投げようとマルキムを持ち上げたが、あっさりと剣から手を離して俺の腹に蹴りを入れてきた。
 冬子が割って入り、更にそこに矢が飛んでくる。尋常じゃない精度で射られたそれは、マルキムの額に突き刺さった。

「って、マルキム!?」

「いてぇぞタロー! 死ぬかと思ったじゃねえか!」

「何故刺さってるのに生きているんだ!」

 どうも魂でギリギリのところでガードしたようだが、その後も一本だけ額から矢が生えている状態で剣を振るうマルキム。絵面が面白すぎて集中できない。
 というかマルキムの剣が速過ぎる。『ストームエンチャント』じゃないとこれ追いつけない!

「やっぱSランクって化け物しかいない……!」

「なんでオメー、Sランク最速だった俺と同じくらい速いんだよ!」

 カキキキキキキキキキキキン!
 剣と槍がぶつかり合い、衝撃波で周囲の木々が吹っ飛ぶ。ああ、湖を作っただけでも怒られたのに、さらに自然破壊したらオルランドから説教される。
 着地したアルリーフがそれに参戦してくるが、こちらも冬子が入ってくる。彼女は魂を武器の強化には使わず、スピードを上げることにのみ特化しているようだ。

「な、なんかその剣! 触ると物凄い痛いんやけど!」

「Sランク魔物の討伐部位で作っている刀ですからね! 丈夫ですよ! はぁあああ! スコルパイダーインパクト!」

 何その技名。
 冬子が叫んだ瞬間、三日月状の衝撃波が刀から飛び出る。とんでもないエネルギー波で、マルキムとアルリーフを吹っ飛ばした。

「おおおお!? な、なんだこの技!」

「はっはっは、ええ武器持って……ぬおおおお!? た、タロー! お前、不意打ちが過ぎるやろ!」

 相変わらずどこにいるか分からないタローの狙撃がマルキムとアルリーフを襲う。むしろあの二人は何で死角から放たれる狙撃を簡単に防いでるんだ。

「冬子の刀、バッチリそう?」

「ああ、大分馴染むぞ。……王都動乱の時はこれを使うシーンがあまりなかったからな」

 まあ俺達が来た頃は、もう大物は食われた後だったしね。
 そんなことを言っていると、後ろの方で魔力がいきなり増大した。

「……邪、魔……!」

 轟々と美沙の魔力が吹き荒れている。いきなり何でこんなことになっているんだろうか。

「京助君の……サポート……! 任された、のに……! なんで……なんで……邪魔……する、の……! リューさん……!」

「ヨホホ……そ、それが模擬戦というか、役割というか……デス」

「京助君に……フォロー、お願いされたのに……! なんで、なんで……! ああああ、ああ! 『サモン・ザ・ベルゲルミル』!!!!」

 轟!
 無茶苦茶な魔力と共に、二十メートル級の|氷の鬼(ベルゲルミル)が彼女の背から背後霊のように顕現する。あ、なんか美沙がキレてるな――と思った次の瞬間、巨大な拳が振り下ろされた。

「ヨホ?」

「ばっかお前、避けろ!」

 尋常じゃないスピードでシュリーを庇うマルキム。しかし次の瞬間、湖が凍り――同時に地面が全て凍り付いた。
 美沙はその凍った地面をアイススケートの要領で走り、手に持った氷の剣とベルゲルミルでマルキムたちに斬りかかっていった。

「……今のうちにアルリーフをやっつけるか」

「そんな簡単にやられへんで!」

「私を忘れられては困ります」

 アルリーフに狙いをつけた俺と冬子の間に、リャンが割り込んでくる。俺が一撃でぶっ飛ばそうと突きを入れるが、超短距離転移で躱されてしまった。
 二対二の状況が作られる。でもこっちはタローの援護があるだけ有利だ。

「冬子、左から。リャンの邪魔をお願い」

「了解」

 簡単に指示を出し、二人でアルリーフとリャンに斬りかかっていく。アルリーフの振動する拳に触れるとマズいので、回避を中心に戦っているが……むこうに防御されてもこっちの手がしびれる。これ、近接戦闘していい相手じゃないな。
 いっそ美沙があの二人をやっつけてくれたら――

「きゃあ!」

「ヨホホ~……!」

 ――なんて、思っていたら。
 美沙の氷がシュリーの心臓につきささり、マルキムの剣が美沙を吹っ飛ばしていた。美沙は一対二でシュリーを倒したのか。大健闘だ。

「うう~……京助君、ごめん……」

「ドンマイ! むしろナイス!」

「も、申し訳ないデス。レオさん」

「しゃあねえさ」

 ああ、そうか。ベルゲルミルでマルキムをコンマ数秒抑えているうちに、シュリーの懐に入ってしまったみたいだね。
 シュリーがいくら魔法師にしては動けると言っても、本職は魔法師。氷の鎧と魔昇華で身体能力を強化出来る異世界人と近接戦闘すれば、流石に勝てないか。
 マルキムがこっちに戻ってくる前にアルリーフを倒したかったんだけど、仕方ないね。

「冬子、一回距離を取るよ!」

「させません!」

 俺が冬子と同時にバックステップをしようとしたところで、リャンが雷刺の転移を発動させた。全方位どこから現れてもいいように風の結界で自分と冬子の身を包むと、真上にリャンが現れる。
 距離が近い、俺は下に沈み込みながら、回転させた槍でリャンを横からぶっ叩く。彼女はしっかりガードしたようだが、吹っ飛ばされた空中では回避運動が出来ない。俺の風弾とタローの矢が同時に襲い掛かる。

「Sランカー二人がかりはズルすぎませんか!」

 そんな悲鳴をあげてリャンの腕輪が光る。これで二人落とした――そう思って気が抜けそうになった瞬間、冬子の身体から尋常じゃない魂が迸った。

「うおおおおおおおおおお!」

「甘い! 『辰魔鬼』!」

 アルリーフの肉体が真っ青に輝いたかと思うと、回転する拳が俺の結界を貫いて冬子を捉える。
 冬子は全身の魂をさらに増大させてそれを受けるが、衝撃を殺しきれていない。たたらを踏み、後退する。今ので大分魂を消耗したのか、冬子からあふれる黄色いエネルギーがガクッと減少する。マズいね。

「タロー!」

「ミスターマルキムを抑えるので手一杯だ!」

「クソッ!」

 風の刃でアルリーフを攻撃するが、それよりも速くアルリーフの一撃が冬子の刀を吹き飛ばす。

「『寅射』!」

 ボッ! アルリーフから発射された指弾が、冬子の心臓を貫く。彼女の腕輪が光り、戦闘不能。最後の技はなんだったんだ。

「す、すまん京助!」

「ドンマイ!」

 冬子に声をかけつつ、俺は沈み込むようにして近づいてからアルリーフに斬りかかる。振動でこっちの腕が痺れるなら、もっと風を槍に巻いて振動が伝わらないようにすればいい。

「よくも冬子を!」

「来い!」

 俺は『天駆』を使い、三次元的な動きでアルリーフを攻め立てる。防御するだけで痺れることは無くなったが、打ち合う度に槍に纏わせている風の結界を作り直さないといけないのが厄介だ。
 そんなことをしていると、唐突にタローが俺の横に現れる。いつもの木偶かと思いきや、彼本人だ。
 困惑する暇もない、マルキムが俺の心臓を狙って剣を突き出してきた。

「――ッ!」

「ぼさっとするな!」

 タローがマルキムの剣を弓で受ける。そしてその場から動かず、矢を発射した。こんな至近距離でも弓兵なんだね……タローは。
 凄い技術だ――なんて思いながら、俺は『ハイドロエンチャント』に切り替える。水で思いっきり吹っ飛ばしてやる。

「それ!」

「チィッ! 『子愚去』!」

 掌底を突き出すアルリーフ。俺の津波がそれによって逆に吹っ飛ばされ、水を全身から被ってしまった。
 ――でも、ここまでは想定通り。俺は水で偏光魔法を使って、タローの姿を消す。しかしただ視覚的に消しただけではマルキムもアルリーフも一切動じない。
 気配を探り、タローがいる場所を攻撃する。
 ――が。

「「なっ!」」

 水で消えていたタローの木偶人形が弾け飛ぶ。そして地面の中からタローの狙撃がアルリーフにクリーンヒット。腕輪が光った瞬間、キアラが空間全体を止めた。

「そこまでぢゃ。キョースケ、タローチームの勝利ぢゃ」

 ドン! と手の中の光弾を爆発させるキアラ。試合終了のゴングのつもりなのだろう。
 ふぅ~……と長く息を吐き、その場に座り込む。ああ、良かった。この手が失敗したら間違いなくもっと時間がかかっていた。というか、勝ててたか怪しい。

「うお……さ、最後の何だったんだ?」

 困惑した様子のマルキムとアルリーフ。まあ、俺も逆の立場だったら引っかかっていたと思う。

「タローって土魔法使えたんかいな」

 地面からタローの狙撃が出てきたことでそう思ったのだろう。土魔法でも使わなくちゃ、地面の下には潜れないね。
 地面の下には。

「んー、そんなこと無いと思うよ。美沙! 魔法を解いて!」

「はーい」

 彼女がパンと手を叩いた瞬間、地面に張っていた氷が全て溶け――俺とマルキム、アルリーフは湖にドボンと落っこちた。

「ぶはっ! な、なるほど」

「な、な、ここ湖かいな!」

「イエスだ、ミスターマルキム、ミスターアルリーフ」

 ざばっ、と湖からあがってくるタロー。いつもの髪型が崩れているが、イケメンは水を被っててもイケメンなのはズルいな。

「タローの姿を消すと同時に地面の氷の一部を溶かして、タローを沈めたんだ」

 氷は水だ。術者からの干渉が無ければこっちで操って溶かすことも出来る。流石に『ハイドロエンチャント』状態じゃないと無理だけど。
 そしてタローがいた場所には木偶人形を。めぐるましく状況が変わる高速展開だったせいで、見破れなかったみたいだね。

「ああ、疲れた」

 取りあえず全員湖から出たところで、キアラが皆を連れてこちらへやってくる。キアラは俺たちを一瞬で乾かすと、飲み物を渡してくれる。

「反省会の時間ぢゃ。やられた順で行こうかのぅ。まずはミサ」

「あ、はい」

 流れるように反省会が始まった。こちらへやってきたマリルがメモ用紙を渡してくれる。内容は……今回の戦いで自分が何をしたか、のようだ。

「短気が過ぎる。お主の役割はサポートなのに敵将を落としに行ってどうするんぢゃ。自身の役割を考えよ。総じてチームで戦う経験が不足しておる」

「はい、分かりました」

 特に反論もせず粛々と受け止める美沙。疲れててそれどころじゃないのかもしれないが。

「次にリュー。お主は逆に引きすぎぢゃ。デバフや邪魔が得意技と言っても、火力を出せんわけではないんぢゃ。攻め気を忘れぬように」

「ヨホホ。分かりましたデス」

 シュリーは少し照れ臭そうに笑う。どちらかというとマルキムと戦えた嬉しさが今回は勝ったのかもしれないね。

「ピアはまだ新しい武器に慣れておらんのが顕著に出たのぅ。まだ武器と自身の技術が融合しておらん。精進せい」

「かしこまりました」

 この前のソードスコルパイダーの魔魂石で強化されてから、そんなに戦闘をこなしてないもんね。そこは仕方がない。

「トーコ。……体力ぢゃな。燃費が悪すぎる。技の性質上仕方ない故、もっと改良してゆくべきぢゃろうな」

「……はい」

 冬子は魂を全開発動が常だしねぇ。でもああしないとパワーとスピードがついていかないのも理解出来る。
 もっと魂に対する造詣を深める必要もあるってことかな。

「アルリーフ」

「え。ワシも?」

「当たり前ぢゃろう。お主もマルキムもタローもキョースケも、妾からすれば等しく小僧ぢゃ」

 困惑するアルリーフとマルキム。確かに枝神である彼女からすればそうなのかもしれないけど、二十代にしか見えない彼女に言われると混乱するんだろう。

「流石によくまとまっておるが、パワーが足らんのぅ。鍛錬をサボっておったな?」

「あー……いや、せやな」

 アレでパワーが足りない扱いなのか。

「マルキム。お主も良くまとまっておるが、少々自分のスピードに頼りすぎぢゃのぅ。鍛錬をサボっておったわけではないのぢゃろうが、地力の高い相手との鍛錬が最近不足しておったようぢゃな」

「いやぁ……あー、そうだな」

 ポリポリと頭をかくマルキム。マルキムもアルリーフも素直にうなずいている辺り、自覚があるんだろう。言い当てるキアラが凄いのか、それともキアラにすぐ言い当てられるほど彼らがサボっていたのかは分からないが。

「タロー。狙いがブレておる。さては昨夜寝てないのぅ? 大方、女と遊びすぎぢゃろう。精をため込み過ぎるのも良くないが、出しすぎも体に毒ぢゃ。睡眠はしっかりとらんか」

「うっ……む。そう、だな。善処する」

 一人だけ理由が酷い。とはいえさしものタローも大物と戦う時はコンディションは整えるだろうけど。

「キョースケ」

 ついに俺の番。背筋を伸ばして彼女の方を向く。

「言いたいことがありすぎるから一番大きいことを言う。お主は仮にもリーダーぢゃ。もっと周りを見よ。もっと指示を出せ。今のままでは一人で戦っておるのと変わらん」

「……分かった」

 まったくの不意打ち。
 もっと別のことを指摘されるのだと思っていた。
 そしてそれと同時に、確かにこの中でチームを率いているのが俺だけだということを思いなおす。
 それなのに、皆と同じように戦っていた俺は……意識が足りないと言われても仕方がないだろう。
 もっとちゃんと目を配って守らないと。じゃないと、本当なら美沙も冬子も死んでいるのだから。

(……お遊びじゃないのに)

 ぐっと拳を握る。

「ではそれを踏まえてチームを入れ替える。二セット目ぢゃ」

「「「「「はい」」」」

「あ、マルキムたちは予定大丈夫?」

「オレは平気だ」

「私も、幸か不幸か今日は終日フリーだ」

「ワシはかみさんに後で怒られればええ」

 いやそれでいいのかアルリーフ。
 しかし付き合ってくれるのはありがたい。俺達は彼らの厚意に甘えよう。
 そんなことを思いながら二回戦に入っていくのであった。
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