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第五章 ターニングポイントなう

102話 魂なう

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 周囲の木々を破壊しながら、マルキムは覇王と打ち合っていた。
 否、打ち合っているという表現は正しくないかもしれない。
 何故なら――

「どうした! マルキム!」

「ハッ――ぬるい攻撃ばっかしてんじゃねえぞ覇王!」

 徐々に、覇王の攻撃がマルキムへ通るようになってきたからだ。
 しかしそれはこの戦いを始める前から分かっていたことだ。
 キョースケが逃げる体力を得るまで、援軍が来るまで――時間を持たせられればこちらの勝ち、その前に二人ともやられたらこちらの負け。そういう闘いだと。

「ハッ――」

「クハハッ!」

 マルキムの三連斬りの全てを躱す覇王。さらに追撃の突きは完全に受け止められる。
 さらに横から斬りつけると、覇王はそれを『こん』のエネルギーでガードし、腹を蹴り上げてくる。
 深々と突き刺さったそれで上へさらに押し上げられるが、剣から出した『魂』の衝撃波で覇王に反撃をする。
 さらに連打。それを覇王はまた同じものを出して相殺しようとするが――上空にいる分マルキムの攻撃がやや強く、覇王が圧され苦し気な顔をする。
 そこに連撃――覇王は一気に地面へと押し付けられ、今度は地上戦が始まる。
 地上ではお互いの攻撃の重さが違う。上空では速く鋭い攻撃だったが、地上では重く、力強い攻撃をお互い繰り出す。
 覇王の蹴りを躱し、マルキムは覇王の軸足を踏みつける。覇王が一瞬ギョッとするがマルキムは肩で覇王の顎をかち上げる。
 そして怯んだところに――腹部への斬撃。綺麗に入ったそれのおかげで覇王が後方へと吹き飛ばされる。

「クハハッ! いいな! いいなぁ、マルキム!」

 余裕のある声、言い換えるなら多少の慢心がある声。
 この油断があるうちに倒さねば――!

「うるせえぞ、覇王!」

 さらに剣戟を繰り返す。
 はぁっ……と息継ぎをした瞬間、覇王の拳がギリギリのところを掠める。一瞬たりとも油断できない戦い。相手と息継ぎのタイミングを合わせないと、満足に息を吸うことすらできない高次元での斬り合い。
 ――そろそろ、ヤバいな。
 覇王の一撃を躱し、蹴りを見せつつ本命の振り下ろしを食らわせるが――ギリギリ躱される。

(躱されるってのは……本当に体力を奪われるモンだな)

 フッと心の中で笑ってから、さらに斬撃を加える。
 持っている『職スキル』は粗方食らわせた。しかしその中で唯一惜しかったのは『三連斬り』くらいのもので、他の『職スキル』ではかすりもしない。

「うおおお!」

 声を張り上げ、右下から斬り上げるが――それが防がれることを直前で悟る。
 それではどうすればいいか――

(途中で……軌道を、変える!)

 ――ひゅん、と覇王が防ぐために腕を出してきたタイミングで、『魂』のエネルギーによって強引に軌道を変えてボディから顔へと狙いを付ける。
 覇王は一瞬驚いた顔をして――額でマルキムの剣を受け止めた。
 ビリビリ……と、まるで岩壁を斬ったかのような衝撃が腕に走る。なんて石頭だ。


『職スキル』、『飛燕斬り』を習得しました


 久々に――何年振りか分からない程久々に『職スキル』を新しく習得した。そんなホイホイ習得できるモノでもない『職スキル』を習得してしまうとは――やはり、これはそれほどの相手ということか。
 覇王は額から血を滲ませながら――神速の廻し蹴りを繰り出してきた。
 咄嗟にそれを防ぐが、空中であるが故に速度を殺しきれず地面へと叩きつけられてしまう。
 地面に激突する瞬間になんとか『魂』で衝撃を相殺するが、決してダメージが無いとは言えず腹から何かがこみあげてくる。

「……マズいな」

 フラリ、と立ち上がり口の中にたまった血を地面に吐き捨て覇王を睨みつける。
 スタ、と覇王は目の前に着地すると――やはり少しだけ、寂しげな顔をした。

「クハハッ……マルキム。テメェにも期待してたんだがな」

「どういう意味だ?」

「どういう意味もこういう意味もねーよ」

 覇王は少しだけ体に力を入れる仕草をすると――轟! と身にまとうオーラをさらに肥大化させた。
 あまりのエネルギーに、マルキムは少しだけ後ずさる。

「……手を、抜いてやがったのか?」

 なんとなく……そう、思ってはいた。自分が遊ばれているとは思わない。覇王にだって「遊ぶ」余裕はなかったはずだから。
 だがしかし――かといって全力全開だったかと言われると疑問が残る。
 そう思ったマルキムが問いかけると、つまらなそうに覇王は右腕部分だけ『魂』を強める。まるで太陽のような輝きに思わずマルキムは目を細めた。

「そんなわけねえだろ。アレはアレで全力だ。己が王として使っていい――全力だ」

 そして、と覇王はさらに力を籠めていく。

「テメェは王の己を満足させてくれた。だが――戦士の己にはまだ遠い」

 ガン! と覇王は己の両こぶしを打ち合わせると、大きな衝撃波が奔り空気が撓む。
 ただの一挙動だけでこの威力。果たして――どれほどの力を持っているのだろうか。目の前の男は。

「まさかもう勝ったつもりか?」

「ああ」

 居丈高に言う覇王。しかしそれだけで分かる。
 先ほどまでとは格段に強いということが。

「テメェは、今の一撃で決めなくちゃならなかった。己に攻撃を入れられる最後のチャンスだったんだ。アレが」

 今の一撃、というのは――あの『飛燕斬り』のことだろう。たしかにアレを決められなかったのは痛いが――。

「テメェの攻撃はもう見切った。見切れちまったんだよマルキム」

 残念そうに、しかしどこか「やっぱりな」という空気を纏って呟く覇王。
 戦士としての、と本人は言ったがまさにその通りだな、と思う。先ほどまであった、慢心や油断が全て消えている。

「……昔己が戦った頃のテメェは、もっと強かった。いや、もっと容赦が無かった。まさかとは思うがテメェ……己のことを殺すつもりがないとか言わないだろうな」

 落胆したような声を出す覇王。マルキムはその問いかけに苦笑いをしながら首を振る。

「そんなわけねえだろ。殺す気満々だ」

「そうかい。じゃあ……」

 覇王はマルキムの後ろ――キョースケがいる方を指さして目を細める。

「アレを守るために戦う――なんて、思ってるんじゃねえだろうな」

「……それの、何が悪い?」

「悪いに決まってるだろうが」

 侮蔑するように、呆れたように――覇王は吐き捨てた。

「テメェは、守るために力を出せる男じゃねえ。敵を殺すために――憎しみが力になるタイプだ。そんなテメェが赤の他人を守るため……? 笑わせる!」

 言葉の覇気だけで周囲に暴風が吹き荒れ空間を「殺気」でなく純粋な「怒り」が支配する。

「――だから、弱くなったんだテメェは。昔のテメェならもっとギラついてたぜ」

 ニヤリ、とマルキムは嗤ってから剣を正眼に構える。

「オレはな……憎しみで人を殺すのはやめにしたんだ。憎しみを力に変えて戦う『金色』のレオンハルトはもういない。今のオレは! アンタレスを、大切な人を守るために戦うBランクAGマルキム・レオンハルトだ!」

 纏う『魂』をさらに強める。高まった『魂』を剣に乗せ、一点集中させる。

「オレは……守るもののために負けるわけにはいかない!」

「うるせえ! 弱くなったお前に興味はない!」

 先に動いたのはマルキムだった。全身に纏っていた『魂』を足に集め、瞬時に加速して覇王の懐に飛び込む。
 そしてその足に集めていた『魂』を流れるような動作で剣に集中させ――『職スキル』を発動させる。
 それは嘗て戦争時代、何度も敵将を屠ってきた技であり、もう二度と使うまいと決めていたマルキムの最強剣技。
 この技を出す時は防御はいらない、回避はいらない、呼吸も、色も、嗅覚も、触覚も、味覚も、聴覚も、心臓の鼓動も何もかも要らない。
 この剣を振るう時はたましいと、剣さえあればいい。
 ――さあ魂を研ぎ澄ませ。

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」

 裂帛の気合を込めた最大級の一撃。
 速く、速く、速く、ただ速く!
 渾身の力を籠めろ、心を籠めろ、燃えるたましいを全て注ぎ込め!

「『斬命雷桜閃』――――ッッッッッッッ!!!!」

 音を置き去りにした最強の剣。右下から振り上げるようにして覇王の首を狙う。
 その首、貰った――ッ!

「阿呆」


 ゴッッッッッッッッッッッッッッッ!


 衝撃が走る。最初に顔面、そして背中。何本も何本も木をへし折ってやっと止まる。『魂』が無くて防御の薄いところを狙われた。捨て身の攻撃が仇となったらしい。

「が……は……っ」

「さすがの己も――今の一撃を貰ってたら死んでただろう。……前言は撤回しねぇ。が、己の思っていたよりは錆び付いちゃなかったみてえだな」

 剣は……手から離れていない。凄まじい衝撃だったが放しはしなかった。
 ならば、まだ戦える。

「……久々に、戦士だったころの気持ちを取り戻せた。そのことにだけは感謝するぜ、マルキム」

 剣を杖にして立ちあがろうとするが……足に力が入らない。腹から血がせりあがってくるせいで呼吸が出来ない。
 ゴバッ、と口から血を吐き、なんとか息を吸い込んだ。

「ガハッ、ガハッ……。な、に……終わった風な空気出してやがる。まだまだオレは戦えるぜ」

「クハハッ! マルキム。テメェは本当におもしれえ奴だ。だからせめてもの敬意だ。苦しまず逝かせてやる」

 覇王が拳を振り上げるが――体が、動かない。それに気付けていてももう体が追い付かない。
 戦え、と身体に命令する。だが言う事を聞かない。

(確かに今まで散々無茶させてきたが――もう少し、もう少し無理をしてくれ。もうこれで終いでもいい、だから、だから頼む! 指一本でいい! 動け、動け、動いてくれ! オレの身体――!)

 グワングワンと視界が歪んでいる中――ふと、気配を感じた。
 それは先ほどまで死ぬ寸前だった気配であり、今のマルキムよりも希薄な気配だったはずだ。
 それが、立ちあがっている。

「やめ……ガハッ! やめ、ろ……ガッ、ぐふっ……キョー、スケ……」

 キョースケの名前を呼ぶが、聞こえているような様子は無い。
 いや……。

「あ?」

 覇王も少し不思議そうな顔をしている。
 それもそうだろう。
 キョースケがあの怪我で立ち上がっているから――ではない。
 

(どういう……ことだ!?)

 基本的に、『職』の進化くらいでしか人族は魔力が増えることはない。
 魔力を回復することは出来ても、最大値が増えることはない。
 なのに。
 なのに。

「……キョー、スケ」

 あふれ出る魔力は――かつて、一度戦ったことのあるSランク魔物のそれと遜色ない。
 魔族でなら、まだ分かる。
 しかし人族のキョースケが――っ!?

「A、a、aaaaaaaa……」

 ザク、ザク、と一歩一歩キョースケがこちらへ近づいてきている。
 常人ならば中てられただけで失神する――それほどの魔力を纏いながらキョースケは口から何か音を出している。

「O、o、oooooooo……」

 まるで――まるで、喉から直接音を取り出したらこうなりました、とでも言わんばかりの音。アレを声と言うには余りにも耳障りで、しかし雑音と言うには――あまりにも悲哀が伝わってくる音。

「Aaaaa――Ooooooooo!!!!!!!」

 ビリビリと空気が震える。『音』だけでこれほどの威力を出すとは――果たして、一体何があったというのか。

「魔人……」

 魔族でもなく、人族でもなく、無論獣人族でもなく――。
 マルキムが呟いた瞬間、驚くべきことが起こった。
 姿

「なっ……」

「Aaaaaaaa!!!! Oooooooo!!!!」

 ゴッ! と風よりも音よりも速く覇王が飛んでいく。
 先ほどマルキムとキョースケがやられたように――木々をめきめきとへし折りながら。

「おい、キョース――」

「AOOOOOOOOOAAAAAAOOOO!!!!!」

 そしてまたキョースケは瞬間移動したかのように刹那の間に覇王へ間合いを詰める。
 そして轟音――!

「どうなってやが……ガハァッ!」

 血を吐き、地面に這いつくばる。
 瀕死のキョースケがSランク魔物並みの魔力を放出しながら復活した。
 ホントに――どうなっているんだ。

「だが……もう少し、もう少しだ」

 もう少し――耐えれば増援が来る。
 助けに来ておいて無様な話だ。マルキムはそう自分を嗤い、木に持たれながら立ち上がった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


『キョースケ! キョースケ!』

 ………………。

『オイコラ、キョースケ! ……チッ、仕方ねぇ……』

 ………………。

「げほっ」

 いきなり、口の中に煙が入り込んできた。ので俺はせき込み目を覚ます。

『チッ、ヤット起きヤガッタ』

 気づけば俺の口に活力煙が咥えられていた。……これ、ヨハネスがやったんだろうか。だとしたらどうやって?
 頭に浮かんだ疑問を尋ねようとしたところで――

「ヨハネス……ッ、は、覇王は……あぐっ」

 ――体の痛みのせいで思考が中断させられた。腕は折れており、あばらも殆ど逝っている。足は……折れてはいないが、打ち付けたせいか力が入らない。

『今はマルキムが戦っテルガ……ダメダナ。モッテ後二分ダ』

 あと二分か……。
 そんな時間じゃ回復するはずはない。俺はこの傷のまま戦えるだろうか。

(…………)

 眼を閉じると、思い出すのは日本での日々、優しかった両親、割と楽しく通っていた高校。勉強は嫌いだったが――それでも努力はしていた。
 ……昔の、日本のことを思い出そうとすればするほど。
 なぜか――思い出されるのは、アンタレスの日々、AGとして働いた日々、そして何より最近の……冬子や、リャン、ついでにキアラと共に旅した日々。

(楽しかったなぁ……)

 この前、冬子と行ったレストランは美味しかった。冬子に着せたドレスはよく似合っていた。
 冬子と一緒に行ったクエストは楽しかったし、共に戦うのも悪くなかった。
 領主はとっちめた、塔で戦った時は助けられたっけ。
 ああ、ああ。

(死んだらもう――二度と、冬子と会えないのか)

 冬子だけじゃない。リャンにも、マルキムにも、リューにも、マリルにも、アンタレスの皆にも会えないのか。
 嫌だな……死ぬのは。
 死ぬのは嫌だ……けど、このままじゃ生きて帰るのは難しい。

「ヨハネス……」

『カカカッ! ……アリッタケノ魔力を回しテヤル。ドウイウ理屈か魔法が通用シテナカッタ。ダッタラ次の手は――』

「うん、槍で戦う」

 それしかない。俺は手札を増やしてはいるが――結局、ある一線を越えたら出来ることは二つしかないんだ。
 魔法を使うか、槍で戦うか。

『カカカッ! ソンナ満身創痍デカァ!』

「そうだね」

 俺はよろりと槍を杖にして立ちあがる。
 ………………。

「アレを……やる。でもそのためには……少し、だけ、力が足りないんだよね」

 だから、と。そう言いながら、俺は活力煙の煙を肺の中に思いっきり吸い込む。
 そして……吐きながら、俺はアイテムボックスからとあるモノを取り出す。この前、レストランで俺たちを襲ってきたバカが付けていた呪いのネックレスだ。
 これは付けると……呪いがかかるが、能力が上がる。藁にも縋る思いだが――別に構うまい。
 俺は主人公じゃない。だから、都合よく覚醒なんかしない。
 だったら――持ちうる全てを使って戦うしかない!
 ネックレスを、風で操り首に付ける。すると――

『クッ、あ、あははははあはははははは!!! これは滑稽です! まさか、ボクのことを殺した貴方が! このネックレスを付けるなんて!』

 頭の中にガンガン響く声。これは……ヨダーンの、声。

『ああ、勘違いしないでください。本体は死んでます。じゃなきゃボクは起動しませんからね。これは残留思念――ボクの残滓のような物です。ボクには貴方を、!』

 本当に楽しそうな声。それはそうかもしれない。

『ですが残念です。ボクが手を出さなくても――死にそうですものね、貴方』

「……ヨダーン、そんなキャラだっけ?」

『何度も言いますがこのボクは呪いのボクです。本体とは似ても似つかぬ偽物、まがい物です。付けた人に呪いを付加するだけの人形です。でもだからこそ――本体がやるわけが無い選択肢をとるんですがね』

 そう言って……ネックレスから、魔力が送られてくる。

『微力ですが、多少お力添えさせていただきますよ。貴方が無様に負けて死ぬ姿を見たいですからね!』

 そして……ドンドン、意識に何かが流れ込んでくる。
 ……殺せ。
 ……殺せ。
 ……キョースケ・キヨタを。
 ……殺せ!

「ぐ……う……」

『あははははあはははははは!!! さあ狂いましょう、狂いましょう! 狂って狂って――無様に情けなく死んでください!』

「あ、はは……死ぬのは、ごめんだね」

 でも、これのおかげで――最後の、最後の力が振り絞れる。
 息を吸い、吐く。そして俺は……心臓に魔力を集中させていく。俺の奥にある、扉を開くために。魔力を集めて、開くんだ。
 使いすぎると動けなくなる魔力。それを無意識にセーブしている――扉、みたいなものを。

(ぐっ!)

 ドクン、と心臓が暴れるかのように跳ねる。この重症でこんなことをして……はは、本当に俺は狂ったのかな。
 魔力が体内で暴れまわり、この体の外へ弾けようと、体中を駆け巡る。
 膨大な魔力はそれそのものが物理的圧力を持つかのように爆発し、破裂し、燃え上がるように全てを喰らおうと狂い踊る。

「ぐ、あ、ぐ……俺は一条の槍」

 無意識に――無意識に、俺の口が詠唱を紡ぐ。魔法を使う時に大事なことはイメージ力。ならばそれを補正するために詠唱するのも悪くない。

「敵を見据え、刺し穿つだけの武器に過ぎない。常に前を向き、ただひたすら自らの眼前の敵を殺し――背後にいる者を守るだけ」

 がふっ、と暴れ狂う魔力のせいで口から血を吐いてしまう。
 でも止まらない、止まれない。
 ここで止まって――二度と、二度と皆と会えなくなるなんて嫌だ。
 だから、覇王――。

「そう俺は――悪に破滅を齎し魂喰らう槍!」

 ――オマエを俺の経験値にする!

終扉開放ロック・オープン――!!!!!」

 俺の体内から魔力が爆発し、その瞬間俺の理性は途切れた。
 そう、俺は一条の槍になり果てたのだ。
 ただ守る者を守るために――敵を殺す、一条の槍に。
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