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第一章 旅立ち
②-3
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数時間後、ルベライトにて。
そこではフラフラになったラミルとタニア、そして元気いっぱい二人の荷物を運ぶ子パッカの姿がありました。
「つ……次から、一時間ごとに休憩を挟みましょう……? と、いうか……もっと計画性を持って動くというか……」
「そう……だね……あ、甘く見てた……」
今座ったら二度と立ち上がれない自信のある二人は、ふらふらになりながらその辺の木にもたれかかります。
子パッカだけは二人を元気づけようと、るんたるんたと得意の踊りを見せます。そんな可愛らしい子パッカの姿に、ラミルとタニアは頬を綻ばせました。
「それにしても……魔物だけじゃなくて、猛獣も結構出るわね……」
「鏡が無かったら危なかったね……」
ただでさえ何時間も歩き詰めだというのに、魔物も猛獣も鏡の力を使って回避していても結構出会ってしまいました。
その殆どは最初に出会ったカーラームーンほどの強敵ではありませんでしたが、鏡の力やタニアの矢があってやっとです。
「きゅいきゅい?」
一方、子パッカは戦闘はしないものの、二人の荷物を持って走るなどで大活躍です。彼がいなければ、もしかするとラミルとタニアはどこかで詰んでいたかもしれません。
「流石は神獣様……」
「むしろこれ、二週間でチューターまで歩けるの……?」
タニアの指摘に、ラミルは少し考えます。自分たちが子どもであること、そして道中は魔物が出ることも考えると……自分たちだけで二週間は厳しいかもしれません。
「この指令が終わったら、アバンダに一回戻って助っ人の冒険者を募った方が良いかも」
「そ、そうねぇ……。まぁでも、しーちゃんが気に入らないといけないんでしょ?」
同行する人は、子パッカが気に入った人のみです。そうそう見つかるかという話ですが……ラミルは笑みを向けました。
「タニアはすぐに気に入られたし、しーちゃんの査定は案外甘いかもよ?」
「アンタのお兄さんがダメだったのに随分と呑気ねぇ……。それはそうと、そろそろ行きましょう。今夜泊まる宿も見つけないといけないんだし」
タニアの言う通り、今日は既に昼を過ぎています。どれだけ指令が早く終わったとしても、日が暮れるまでにアバンダには帰れないでしょう。
ラミルは頷いてから、ややフラフラしつつ歩き出します。
「じゃあ取り敢えず、牧場まで行こうか」
ルベライトの町は、半分以上の土地が牧場になっています。その中でもラミルは、一応父親の知り合いがいる牧場を選んで向かいました。
歩くこと数分、少し大きめの小屋がある牧場にたどり着きます。ピンク色の三角屋根が眩しい、かなり綺麗な小屋です。
「すいません、何方かいらっしゃいますかー?」
扉の前でノックしながら声をかけると、『見学の方はこちら』という看板を見つけました。その看板に沿ってラミルとタニアが中に入ると……優しそうなオジサンが、出迎えてくれます。
「おや……もしかして、ラミル坊ちゃんですかい?」
「こんにちは、ビンゴおじさん」
ビンゴおじさんは立ち上がると、笑顔を見せてこちらへ駆け寄ってきました。『パッカの鏡』と同じくらい太陽光を反射する頭部と、ふさふさのお髭がチャームポイントのおじさんです。
彼の息子さんがアバンダで働いており、その縁もあってラミルとは知り合いなのです。
「そちらのお嬢さんは? ラミル坊ちゃんの彼女ですかい?」
小指を立てて少し楽し気に笑うビンゴおじさん。彼女――と言われたタニアは少し頬を染めてドキドキしながらラミルを見ますが、彼はいつも通りの笑顔で首を振りました。
「いいえ、彼女はぼくの友達です。タニアちゃんです」
「……タニア・マーシュです」
ぶすっと仏頂面で挨拶するタニア。その反応だけで色々と察したビンゴおじさんは、苦笑しながら中に入れてくれます。
「ささ、中へ。……おや、そちらの荷物を持っている……お、お方? は?」
「ああ。えーと……中に入ってから説明するね」
「は、はい。おーい、ばあさん! お客人だ、お茶ー!」
ビンゴおじさんに連れられて応接間のようなところに入り、ソファを勧められます。言われるままにラミルとタニアが座ると、ニコニコとした笑みを浮かべたお婆さんがお茶を持って入ってきました。
「お茶をどうぞ、ラミル坊ちゃま」
「ありがとう、イアおばさん」
ラミルとタニアはお礼を言ってからお茶を飲み、やっと一息ついたところで――子パッカは荷物を置いて、ビンゴおじさんに駆け寄りました。
そしてサムズアップをビンゴおじさんたちに向けます。
「きゅいっ!」
「……おや、これはどういうことですかな?」
「お爺さん、ラミル坊ちゃんがいつもやってくれていたアレじゃないですか?」
「おお、あれか!」
ポンと手を打ったビンゴおじさんは、サムズアップを子パッカとぶつけました。ついでイアおばさんも、こつんとぶつけます。
二人から挨拶を返して貰えた子パッカは、嬉しそうに踊り出します。
「きゅーいっ、きゅーいっ」
「可愛らしいですなあ。ところでラミル坊ちゃん、このお方は?」
子パッカの踊りに目を細めるビンゴおじさん。そしてラミルの方に声をかけると、首をかしげました。
何となく察しがついていそうな目で。ラミルは子パッカを自分の元へ呼び寄せると、彼の頭を撫でながら説明します。
「じつはかくかくしかじかで」
「……やはり、ではラミル坊ちゃんが次代の司祭様を担われるということですか」
口をあんぐりと開けて驚くビンゴおじさん。
「この試練を突破出来たら、だけどね。それでそのために、とっても美味しいミルベライトクッキーをしーちゃんと一緒に食べないといけないんだ」
「おお! なるほど、そのために我が牧場を選んでくださったんですな! そういうことでしたらこのビンゴ、腕によりをかけて絞りますぞ!」
ガタン、と勢いよく立ち上がるビンゴおじさん。話が早くて助かります。
「お爺さん、いきなり大きな声を出さないでくださいな。では準備します故にこちらへどうぞ、お三方」
イアおばさんに連れられて、ラミルたちは長靴やオーバーオールを受け取ります。それらを身につけ、最後に消毒の魔術道具で消毒してから牧場の中に入りました。
どこまでも広がる草原と、青い空。まるで別世界に来たかのような風景が広がっており、タニアは勿論何度も来たことがあるはずのラミルすら一瞬息を呑みます。
「わぁ……」
「いつ来ても、ここは凄いねぇ」
二人の視線の先には――ピンク色の毛で全身が覆われており、お腹が大きくクランベリー色の角を持つ牛がのんびりと歩いています。
「でもアタシ、ミルベライトの実物を見たの初めてかも。本当に二足歩行なのね」
タニアが感心したように言います。彼女の言う通り、どのミルベライトも二足歩行しています。短い足で全体重を支えている姿は、とても牛には見えません。
「なんで二足歩行になったのかは分からないけどね。見た目通り素早く動けない代わりに、凄く力があるから……オスだとあのカーラームーンと殴り合えるよ。それにしても、どの子も良い毛並みだね」
「はっはっは、ラミル坊ちゃんに言われると光栄ですな。ささ、好きなミルベライトを選んでくだされ。どの子も美味しいお乳を出しますぞ」
大きな口を開けて笑うビンゴおじさん。彼の言う通り、どのミルベライトも毛艶が良いです。
「きゅい!」
「あっ、ちょっ、しーちゃん! 急に走っちゃだめよ! ミルベライトが驚くじゃない!」
いきなり駆け出した子パッカを追いかけ、タニアも走り出そうとしました。しかし牧場主であるビンゴおじさんと、ラミルは笑顔でタニアを制止します。
「ミルベライトは図太いから、それくらいなら大丈夫だよ」
「むしろ、珍しい物が好きですから人気者になるかもしれません」
「いや、見失ったら困るじゃない」
「それも大丈夫ですぞ、だだっ広いですが隠れる場所はありませんからな」
わっはっは、と笑うビンゴおじさん。タニアは若干納得がいかないながらも、二人に倣って一緒に歩きます。
そして一分も経たぬうちに子パッカは動きを止めると、一頭のミルベライトの前で立ち止まりました。
「きゅいっ、きゅいっ!」
ぴょんぴょんとミルベライトの前で飛び跳ねる子パッカ。しかし目の前に来ても、ミルベライトは子パッカに関心を示しません。
子パッカはいつも通りサムズアップしてみますが、当然無視します。
「きゅいっ!?」
ガーン、と書き文字が出そうなほどショックを受ける子パッカ。そんな彼の元にラミルたちがたどり着くと……ビンゴおじさんが困ったように眉に皺を寄せました。
「これは……神獣様はお目が高いですな。年齢的に、この牧場で一番良いお乳を出すミルベライトです。ただ、他のミルベライトの方が良いんですが……」
ビンゴおじさんがそう言いますが、子パッカは嫌々と首を振ります。そんな子パッカに、ラミルは話しかけます。
「何か事情があるみたいだけど……他の子のお乳じゃダメなの?」
「きゅっ、きゅい」
ミルベライトに抱き着く子パッカ。譲る気は無さそうと判断したラミルは、ビンゴおじさんの方を向きます。
「やっぱりこの子が良いみたいなんですけど……なんでダメなんですか?」
ラミルが問うと、ビンゴおじさんは渋い顔で頷きました。
「ええ。実はこのミルベライト、もう三か月もお乳を出してないんです」
「「三か月も!?」」
「きゅい?」
一難去ってまた一難。
美味しいクッキーはまだ遠そうです。
③へつづく
そこではフラフラになったラミルとタニア、そして元気いっぱい二人の荷物を運ぶ子パッカの姿がありました。
「つ……次から、一時間ごとに休憩を挟みましょう……? と、いうか……もっと計画性を持って動くというか……」
「そう……だね……あ、甘く見てた……」
今座ったら二度と立ち上がれない自信のある二人は、ふらふらになりながらその辺の木にもたれかかります。
子パッカだけは二人を元気づけようと、るんたるんたと得意の踊りを見せます。そんな可愛らしい子パッカの姿に、ラミルとタニアは頬を綻ばせました。
「それにしても……魔物だけじゃなくて、猛獣も結構出るわね……」
「鏡が無かったら危なかったね……」
ただでさえ何時間も歩き詰めだというのに、魔物も猛獣も鏡の力を使って回避していても結構出会ってしまいました。
その殆どは最初に出会ったカーラームーンほどの強敵ではありませんでしたが、鏡の力やタニアの矢があってやっとです。
「きゅいきゅい?」
一方、子パッカは戦闘はしないものの、二人の荷物を持って走るなどで大活躍です。彼がいなければ、もしかするとラミルとタニアはどこかで詰んでいたかもしれません。
「流石は神獣様……」
「むしろこれ、二週間でチューターまで歩けるの……?」
タニアの指摘に、ラミルは少し考えます。自分たちが子どもであること、そして道中は魔物が出ることも考えると……自分たちだけで二週間は厳しいかもしれません。
「この指令が終わったら、アバンダに一回戻って助っ人の冒険者を募った方が良いかも」
「そ、そうねぇ……。まぁでも、しーちゃんが気に入らないといけないんでしょ?」
同行する人は、子パッカが気に入った人のみです。そうそう見つかるかという話ですが……ラミルは笑みを向けました。
「タニアはすぐに気に入られたし、しーちゃんの査定は案外甘いかもよ?」
「アンタのお兄さんがダメだったのに随分と呑気ねぇ……。それはそうと、そろそろ行きましょう。今夜泊まる宿も見つけないといけないんだし」
タニアの言う通り、今日は既に昼を過ぎています。どれだけ指令が早く終わったとしても、日が暮れるまでにアバンダには帰れないでしょう。
ラミルは頷いてから、ややフラフラしつつ歩き出します。
「じゃあ取り敢えず、牧場まで行こうか」
ルベライトの町は、半分以上の土地が牧場になっています。その中でもラミルは、一応父親の知り合いがいる牧場を選んで向かいました。
歩くこと数分、少し大きめの小屋がある牧場にたどり着きます。ピンク色の三角屋根が眩しい、かなり綺麗な小屋です。
「すいません、何方かいらっしゃいますかー?」
扉の前でノックしながら声をかけると、『見学の方はこちら』という看板を見つけました。その看板に沿ってラミルとタニアが中に入ると……優しそうなオジサンが、出迎えてくれます。
「おや……もしかして、ラミル坊ちゃんですかい?」
「こんにちは、ビンゴおじさん」
ビンゴおじさんは立ち上がると、笑顔を見せてこちらへ駆け寄ってきました。『パッカの鏡』と同じくらい太陽光を反射する頭部と、ふさふさのお髭がチャームポイントのおじさんです。
彼の息子さんがアバンダで働いており、その縁もあってラミルとは知り合いなのです。
「そちらのお嬢さんは? ラミル坊ちゃんの彼女ですかい?」
小指を立てて少し楽し気に笑うビンゴおじさん。彼女――と言われたタニアは少し頬を染めてドキドキしながらラミルを見ますが、彼はいつも通りの笑顔で首を振りました。
「いいえ、彼女はぼくの友達です。タニアちゃんです」
「……タニア・マーシュです」
ぶすっと仏頂面で挨拶するタニア。その反応だけで色々と察したビンゴおじさんは、苦笑しながら中に入れてくれます。
「ささ、中へ。……おや、そちらの荷物を持っている……お、お方? は?」
「ああ。えーと……中に入ってから説明するね」
「は、はい。おーい、ばあさん! お客人だ、お茶ー!」
ビンゴおじさんに連れられて応接間のようなところに入り、ソファを勧められます。言われるままにラミルとタニアが座ると、ニコニコとした笑みを浮かべたお婆さんがお茶を持って入ってきました。
「お茶をどうぞ、ラミル坊ちゃま」
「ありがとう、イアおばさん」
ラミルとタニアはお礼を言ってからお茶を飲み、やっと一息ついたところで――子パッカは荷物を置いて、ビンゴおじさんに駆け寄りました。
そしてサムズアップをビンゴおじさんたちに向けます。
「きゅいっ!」
「……おや、これはどういうことですかな?」
「お爺さん、ラミル坊ちゃんがいつもやってくれていたアレじゃないですか?」
「おお、あれか!」
ポンと手を打ったビンゴおじさんは、サムズアップを子パッカとぶつけました。ついでイアおばさんも、こつんとぶつけます。
二人から挨拶を返して貰えた子パッカは、嬉しそうに踊り出します。
「きゅーいっ、きゅーいっ」
「可愛らしいですなあ。ところでラミル坊ちゃん、このお方は?」
子パッカの踊りに目を細めるビンゴおじさん。そしてラミルの方に声をかけると、首をかしげました。
何となく察しがついていそうな目で。ラミルは子パッカを自分の元へ呼び寄せると、彼の頭を撫でながら説明します。
「じつはかくかくしかじかで」
「……やはり、ではラミル坊ちゃんが次代の司祭様を担われるということですか」
口をあんぐりと開けて驚くビンゴおじさん。
「この試練を突破出来たら、だけどね。それでそのために、とっても美味しいミルベライトクッキーをしーちゃんと一緒に食べないといけないんだ」
「おお! なるほど、そのために我が牧場を選んでくださったんですな! そういうことでしたらこのビンゴ、腕によりをかけて絞りますぞ!」
ガタン、と勢いよく立ち上がるビンゴおじさん。話が早くて助かります。
「お爺さん、いきなり大きな声を出さないでくださいな。では準備します故にこちらへどうぞ、お三方」
イアおばさんに連れられて、ラミルたちは長靴やオーバーオールを受け取ります。それらを身につけ、最後に消毒の魔術道具で消毒してから牧場の中に入りました。
どこまでも広がる草原と、青い空。まるで別世界に来たかのような風景が広がっており、タニアは勿論何度も来たことがあるはずのラミルすら一瞬息を呑みます。
「わぁ……」
「いつ来ても、ここは凄いねぇ」
二人の視線の先には――ピンク色の毛で全身が覆われており、お腹が大きくクランベリー色の角を持つ牛がのんびりと歩いています。
「でもアタシ、ミルベライトの実物を見たの初めてかも。本当に二足歩行なのね」
タニアが感心したように言います。彼女の言う通り、どのミルベライトも二足歩行しています。短い足で全体重を支えている姿は、とても牛には見えません。
「なんで二足歩行になったのかは分からないけどね。見た目通り素早く動けない代わりに、凄く力があるから……オスだとあのカーラームーンと殴り合えるよ。それにしても、どの子も良い毛並みだね」
「はっはっは、ラミル坊ちゃんに言われると光栄ですな。ささ、好きなミルベライトを選んでくだされ。どの子も美味しいお乳を出しますぞ」
大きな口を開けて笑うビンゴおじさん。彼の言う通り、どのミルベライトも毛艶が良いです。
「きゅい!」
「あっ、ちょっ、しーちゃん! 急に走っちゃだめよ! ミルベライトが驚くじゃない!」
いきなり駆け出した子パッカを追いかけ、タニアも走り出そうとしました。しかし牧場主であるビンゴおじさんと、ラミルは笑顔でタニアを制止します。
「ミルベライトは図太いから、それくらいなら大丈夫だよ」
「むしろ、珍しい物が好きですから人気者になるかもしれません」
「いや、見失ったら困るじゃない」
「それも大丈夫ですぞ、だだっ広いですが隠れる場所はありませんからな」
わっはっは、と笑うビンゴおじさん。タニアは若干納得がいかないながらも、二人に倣って一緒に歩きます。
そして一分も経たぬうちに子パッカは動きを止めると、一頭のミルベライトの前で立ち止まりました。
「きゅいっ、きゅいっ!」
ぴょんぴょんとミルベライトの前で飛び跳ねる子パッカ。しかし目の前に来ても、ミルベライトは子パッカに関心を示しません。
子パッカはいつも通りサムズアップしてみますが、当然無視します。
「きゅいっ!?」
ガーン、と書き文字が出そうなほどショックを受ける子パッカ。そんな彼の元にラミルたちがたどり着くと……ビンゴおじさんが困ったように眉に皺を寄せました。
「これは……神獣様はお目が高いですな。年齢的に、この牧場で一番良いお乳を出すミルベライトです。ただ、他のミルベライトの方が良いんですが……」
ビンゴおじさんがそう言いますが、子パッカは嫌々と首を振ります。そんな子パッカに、ラミルは話しかけます。
「何か事情があるみたいだけど……他の子のお乳じゃダメなの?」
「きゅっ、きゅい」
ミルベライトに抱き着く子パッカ。譲る気は無さそうと判断したラミルは、ビンゴおじさんの方を向きます。
「やっぱりこの子が良いみたいなんですけど……なんでダメなんですか?」
ラミルが問うと、ビンゴおじさんは渋い顔で頷きました。
「ええ。実はこのミルベライト、もう三か月もお乳を出してないんです」
「「三か月も!?」」
「きゅい?」
一難去ってまた一難。
美味しいクッキーはまだ遠そうです。
③へつづく
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