魔法使いと繋がる世界EP2~震災のピアニスト~

shiori

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第二十二話「三者三様の舞台」5

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「後、気になるだろうから八重塚には先に伝えておく、被害に遇った生徒は、だよ」
のですか?」

 羽月はさらに驚きの表情を浮かべた。
 エリザはクラスの中心人物の一人でもあり、今日の舞台にも当然立つ予定だった生徒だ。漆原先生が羽月にも分かりやすいよう愛称でその名を呼ぶのを聞き、羽月はすぐさまその重大さを理解した。

「あぁ、だからこそ、フォーシスターズの面々やそのクラスの中でも情報がすでに出回って混乱が続いている。
 こういう事は情報を整理した上で伝えないと憶測が飛び交って余計に混乱を大きくしてしまうものだが、時すでに遅しといったところだな。

 それで結果的に演劇の参加を辞退しなければならないのも当然の事態となっているわけだが、もう一つ問題があってな、こちらはまだ情報の確認を取ってる最中なのだが、
 原因も詳細も分からないが、教師の間でもリズと連絡を取れないと聞いている」

「そんな、リズまで……。同じフォーシスターズのメンバーで行方不明者まで出ているなんて……。他のクラスのこととはいえ、同じ学園の生徒が……。これだけのことが起きている中、私たちは演劇を続けていいんでしょうか……?」

 リズの行方不明に事件の関連性があると想像したくはなかったが、羽月はまずは自分たちの演劇をこのまま続けてよいのか心配だった。

「中止とするのが適切なことかもしれないが、観客も入る上に、再公演の日程を調整するのも簡単ではないだろう。今のところ2クラスでも開催予定だよ」

 大々的な報道もまだ行われておらず、混乱を避けるために2クラスでの開催を予定しているのであろうと羽月は理解した。

 同学園の生徒が被害に遇う事件が起きている中で開催するのは不謹慎ではあるが、開催するというのなら、生徒たちは前を向いて演劇に集中するしかない。羽月も驚いてばかりではいられなかった。

「それに、古典芸能研究部の委員長から自分たちの事は気にせず開催してほしいという話があった。彼もどうしてか耳が早いものだが、この発言が決定打になるわけではないが、このまま開催するのは現状をみて間違いないと思う」

 漆原先生の話しを聞く限り、事態は大きく動き始めている。

 情報整理をするための重大な話し合いが続きながら、気付けば二人は予定通りに会場へと辿り着いた。



 現地の会場に到着し、バスで先に到着していたクラスメイト達を集めたところで漆原先生は重苦しい心情を隠しながら、何時になく言葉を選んで生徒達に古典芸能研究部の辞退を伝えた。

 情報の拡散は控えるようにと漆原先生からの伝達もあり、生徒達に動揺が広がり、その場にいる生徒間での憶測も飛び交う中、スケジュールは大きく変更になり、様子見のために待機時間が多く取られる形となった。

 羽月は先ほどの車内で内情を伝え聞いていたので、現実的な事情を鑑みてスケジュールの変更は理解できたが、そこにさまざまな都合があることを思うと複雑な心境だった。

「昨日の言い合い……、最近険悪だって分かる雰囲気だったけど、無関係なのかな……、でも興味本位で知ろうとするのはよくないよね……」

 前日にフォーシスターズの言い合いをする姿を目撃していた知枝は複雑な心境だった。他クラスの事情に深入りすべきでないと自分に言い聞かせる。
 
 映像研の舞台が昼の13時入場、13時15分開演の14時までということが会場側から発表され、演劇クラスは15時開場の15時15分開演となった。

 当初の会場の貸し出し時間をも超過する大幅なスケジュール変更、それだけまだ開催に対して会場側、学園側共に慎重を要しざわついている部分が多いということだろうと羽月は心の内で思った。

 報道メディアや警察関係者まで出入りするとなれば、演劇どころではないというのは正直なところで、慎重になるのも仕方のないということだろう。

 何よりも羽月は犯人が捕まり、行方不明のリズが見つかる事やエリザの意識が戻り無事が確認されることを望んでいるが、自分ではどうすることも出来ないのが現実だった。

 それからすぐに報道が解禁され、事件のことが伝えられた。

 同じ学園で学ぶ生徒が通り魔による傷害事件の被害に遭った現実、被害者のエリザは未だ重体で、犯人も捕まっていないという。

 会場を訪れている生徒達は不安に包まれ、心が沈んだ様子のままで、一方キャストは貸し出された会場内の控え室で事件の事を考えないように自主練習に励んだ。舞台に立つ以上、最善を尽くすのが彼らの役目だった。
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