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第二十一話「思い出は思い出のままで」6
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控え室に辿り着いたが、まだ誰も帰ってきていなかった。
「……そういえば、着替えは唯花さんと神楽さんがやってくれたから、肝心の脱ぎ方を全然分からないままだった。はぁ……、二人の帰りを待たないといけないのかな……」
私はずっと立っていた疲れもあり、ため息を付いて控室の椅子に座った。
自力で脱ごうとして失敗して破ってしまうのも怖く、どうすることもできずしばらく項垂れていると、唯花さんが様子を見にやってきた。
「あら、稗田さん待ってくれてたの?
じゃあ記念撮影でもしよっか?
元々素材がいいことには気づいてたんだけど、本当に可愛いなって思って。
この際だから記念に写真集でも作りましょうか」
「なんですかそれは、ずるいです。光のためにも家宝としておくので私の分も作ってくださいっ!」
唯花さんの言葉に後ろから入ってきた神楽さんが便乗して援護していた。
鼻息荒く迫ってくる二人、いったい何の話が始まっているのやら……。
いつの間に二人がここまで共謀する関係になっているのか。
まるで私は会話に付いていけてないけど、もしかしてこの人たち私の事好きすぎっ?!
「作りませんから……。さぁさぁ早く着替えを進めてもらって、撮影は控えてもらえますか……。破ってしまいそうで怖くて自分で脱げなくて待っていただけですから」
「目の前にこんな立派な被写体がいるのにお預けだなんて……」
私の言葉にガッカリする神楽さん、滅茶苦茶にキャラぶれしてませんか……。
「あらあら、脱がしてほしいなんて、稗田さんも大胆ね!」
こっちはもっと深刻な勘違いをしてるしっ!
唯花さんは私の言葉を履き違えて、不審な挙動で私の逃げ場を塞いでいた。
「稗田さん、こういうことには遠慮がちな純粋な乙女だと思ってましたが、見られるのに快感を覚えるタイプでしたか」
唯花さんの発言に便乗してとち狂ってしまわれた神楽さん。
この異常さは危険極まりない。
貞操の危機を私は感じた。
「あの……、聞いてます?? 酷い聞き間違いをしているようですけど……」
私は呆れ果てて認識を改めてくれることを心の底から望んだ。
「まぁまぁ、気にせず私に身を委ねて、悪いようにはしないから」
「うん、唯花さんの方だけ見ていてくれればいいよ」
唯花さんが息のかかりそうな距離まで近づいてきて、私の衣装に手を触れる。
一方、神楽さんは撮影可能なケータイ端末を手に持って、画面を食い入るように覗きながら私を見ていた。
「ちょっと?! どう見ても、着替えるところ撮影しようとしてるでしょ?!」
私は半狂乱になる勢いで二人を止めるのだった。
「うーん、気を使って盗撮しないであげたのに」
「そういう問題じゃないからね、いっそ神楽さんの秘密を全部バラしてしまいましょうか……」
主流の目に着けるコンタクトレンズタイプや時計型の端末機器は盗撮できないよう入念に設計されているわけだが、ケータイ端末やデジカメは昔のまま撮影が出来る。
とはいえ、決して堂々と撮れば許されるということではない。
「あぁ聞こえない聞こえない……、せっかくだから、記念撮影記念撮影……っと」
「却下却下却下!! 撮るのは舞台の上だけにしてーー!!」
私の悲鳴にも似た叫びが控室に響き渡った。
なぜ私よりも魅力に溢れ、容姿端麗な二人からこのような仕打ちを受けねばならないのか訳が分からず、悲しい気持ちになった。
その後もドタバタ劇は続き、帰る頃には私は明日が本番にもかかわらず疲れ果ててしまったのだった。
「……そういえば、着替えは唯花さんと神楽さんがやってくれたから、肝心の脱ぎ方を全然分からないままだった。はぁ……、二人の帰りを待たないといけないのかな……」
私はずっと立っていた疲れもあり、ため息を付いて控室の椅子に座った。
自力で脱ごうとして失敗して破ってしまうのも怖く、どうすることもできずしばらく項垂れていると、唯花さんが様子を見にやってきた。
「あら、稗田さん待ってくれてたの?
じゃあ記念撮影でもしよっか?
元々素材がいいことには気づいてたんだけど、本当に可愛いなって思って。
この際だから記念に写真集でも作りましょうか」
「なんですかそれは、ずるいです。光のためにも家宝としておくので私の分も作ってくださいっ!」
唯花さんの言葉に後ろから入ってきた神楽さんが便乗して援護していた。
鼻息荒く迫ってくる二人、いったい何の話が始まっているのやら……。
いつの間に二人がここまで共謀する関係になっているのか。
まるで私は会話に付いていけてないけど、もしかしてこの人たち私の事好きすぎっ?!
「作りませんから……。さぁさぁ早く着替えを進めてもらって、撮影は控えてもらえますか……。破ってしまいそうで怖くて自分で脱げなくて待っていただけですから」
「目の前にこんな立派な被写体がいるのにお預けだなんて……」
私の言葉にガッカリする神楽さん、滅茶苦茶にキャラぶれしてませんか……。
「あらあら、脱がしてほしいなんて、稗田さんも大胆ね!」
こっちはもっと深刻な勘違いをしてるしっ!
唯花さんは私の言葉を履き違えて、不審な挙動で私の逃げ場を塞いでいた。
「稗田さん、こういうことには遠慮がちな純粋な乙女だと思ってましたが、見られるのに快感を覚えるタイプでしたか」
唯花さんの発言に便乗してとち狂ってしまわれた神楽さん。
この異常さは危険極まりない。
貞操の危機を私は感じた。
「あの……、聞いてます?? 酷い聞き間違いをしているようですけど……」
私は呆れ果てて認識を改めてくれることを心の底から望んだ。
「まぁまぁ、気にせず私に身を委ねて、悪いようにはしないから」
「うん、唯花さんの方だけ見ていてくれればいいよ」
唯花さんが息のかかりそうな距離まで近づいてきて、私の衣装に手を触れる。
一方、神楽さんは撮影可能なケータイ端末を手に持って、画面を食い入るように覗きながら私を見ていた。
「ちょっと?! どう見ても、着替えるところ撮影しようとしてるでしょ?!」
私は半狂乱になる勢いで二人を止めるのだった。
「うーん、気を使って盗撮しないであげたのに」
「そういう問題じゃないからね、いっそ神楽さんの秘密を全部バラしてしまいましょうか……」
主流の目に着けるコンタクトレンズタイプや時計型の端末機器は盗撮できないよう入念に設計されているわけだが、ケータイ端末やデジカメは昔のまま撮影が出来る。
とはいえ、決して堂々と撮れば許されるということではない。
「あぁ聞こえない聞こえない……、せっかくだから、記念撮影記念撮影……っと」
「却下却下却下!! 撮るのは舞台の上だけにしてーー!!」
私の悲鳴にも似た叫びが控室に響き渡った。
なぜ私よりも魅力に溢れ、容姿端麗な二人からこのような仕打ちを受けねばならないのか訳が分からず、悲しい気持ちになった。
その後もドタバタ劇は続き、帰る頃には私は明日が本番にもかかわらず疲れ果ててしまったのだった。
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