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第二十話「舞い降る雪のように」5
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すっかり雪が降り積もった街並みをブーツを履いて私はゆっくりと歩く。
自分が足を踏みしめた雪道にくっきりとブーツで踏みしめた足跡が克明に残されていく。
粉雪が舞う街を滑らないように一歩一歩踏みしめながら歩いていると、見知った公園まで辿り着いた。
「さすがに、誰もいないか……」
寒さで白い息を吐きながら、私は独り言を言った。
私はそのまま公園の中に入り、雪に濡れて滑りやすくなった道をブーツで足元を確かめながら歩いていく。
すっかり公園内も雪が降り積もり、普段とは景色が一変して見える。
早朝ということもあり無人となっている公園の中を歩いていると、雑木林の中に見慣れない段ボールが見えた。
“拾ってください”と赤いマジックペンでそう書かれたごく普通の段ボールの中を覗き込むと、驚いたことに白い毛色をしたうさぎが入っていた。
「―――マルちゃん、いなくなったと思ったらこんなところにいたの」
雪の寒さに震えながらも懸命に生きているうさぎの姿に同情を覚え、私はマルちゃんを拾い上げて、真っすぐアパートまで連れて帰った。
「寒かったよね。ここなら暖かいから、もう外に行くんじゃないわよ」
白く丸い、愛嬌のあるマルちゃんを抱きかかえ話しかけるが当然返事は返ってこなかった。
でも、私はそれでもいいかと思った。寒い公園に捨てられたままなんて可哀想すぎる。
私はお腹を空かしているだろうと思い、台所の引き出しを引っ張り出して食事を探した。
「あれ……、キャットフードしかない、買ってこないと」
残念ながらマルちゃんに食べさせてあげられるようなものが家にはなかった。
「はぁごめんね……。学園の帰りに何か買ってくるから、それまで我慢してね」
私はじっとしたまま座っているうさぎの傍に寄り、白い体毛を撫でた。
「あれ……、おかしいな、何でだろう、何かおかしい気がする。こうすると鳴き声がした気がするんだけど、うさぎが鳴き声上げたりするわけないのに……、なんでだろう」
考えてみたけどよくわからなかった。
うさぎから発する音は、見知った鳴き声と比べてあまりにか細く思えた。
でも、これ以上考えると疲れそうで、もう深く考える気になれなかった。
「まぁいっか。さぁ、制服に着替えて、学園に行かないと」
変わらない一日が始まるように、玄関に鍵を掛けて学園へ向かって歩く。
7割近くが私服で学園に登校している中、私はいつものように制服を着る。
それが私の日常であり習慣だった。
昨日は休んじゃったけど、また気を取り直して、心機一転頑張ろう。
私はそう心に決めてマフラーをしっかり巻き付け、風邪をひかないよう学園へと向かう。
今日は早くアパートに帰って来て、また、マルちゃんの世話をしてあげなきゃと思いながら。
自分が足を踏みしめた雪道にくっきりとブーツで踏みしめた足跡が克明に残されていく。
粉雪が舞う街を滑らないように一歩一歩踏みしめながら歩いていると、見知った公園まで辿り着いた。
「さすがに、誰もいないか……」
寒さで白い息を吐きながら、私は独り言を言った。
私はそのまま公園の中に入り、雪に濡れて滑りやすくなった道をブーツで足元を確かめながら歩いていく。
すっかり公園内も雪が降り積もり、普段とは景色が一変して見える。
早朝ということもあり無人となっている公園の中を歩いていると、雑木林の中に見慣れない段ボールが見えた。
“拾ってください”と赤いマジックペンでそう書かれたごく普通の段ボールの中を覗き込むと、驚いたことに白い毛色をしたうさぎが入っていた。
「―――マルちゃん、いなくなったと思ったらこんなところにいたの」
雪の寒さに震えながらも懸命に生きているうさぎの姿に同情を覚え、私はマルちゃんを拾い上げて、真っすぐアパートまで連れて帰った。
「寒かったよね。ここなら暖かいから、もう外に行くんじゃないわよ」
白く丸い、愛嬌のあるマルちゃんを抱きかかえ話しかけるが当然返事は返ってこなかった。
でも、私はそれでもいいかと思った。寒い公園に捨てられたままなんて可哀想すぎる。
私はお腹を空かしているだろうと思い、台所の引き出しを引っ張り出して食事を探した。
「あれ……、キャットフードしかない、買ってこないと」
残念ながらマルちゃんに食べさせてあげられるようなものが家にはなかった。
「はぁごめんね……。学園の帰りに何か買ってくるから、それまで我慢してね」
私はじっとしたまま座っているうさぎの傍に寄り、白い体毛を撫でた。
「あれ……、おかしいな、何でだろう、何かおかしい気がする。こうすると鳴き声がした気がするんだけど、うさぎが鳴き声上げたりするわけないのに……、なんでだろう」
考えてみたけどよくわからなかった。
うさぎから発する音は、見知った鳴き声と比べてあまりにか細く思えた。
でも、これ以上考えると疲れそうで、もう深く考える気になれなかった。
「まぁいっか。さぁ、制服に着替えて、学園に行かないと」
変わらない一日が始まるように、玄関に鍵を掛けて学園へ向かって歩く。
7割近くが私服で学園に登校している中、私はいつものように制服を着る。
それが私の日常であり習慣だった。
昨日は休んじゃったけど、また気を取り直して、心機一転頑張ろう。
私はそう心に決めてマフラーをしっかり巻き付け、風邪をひかないよう学園へと向かう。
今日は早くアパートに帰って来て、また、マルちゃんの世話をしてあげなきゃと思いながら。
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