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第十八話「本当に大切なこと」2
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思い出を積み重ねながら四季は移ろいで行く。
クリスマスもお正月もこれまでとは違い、浩二は羽月と過ごした。
妹の真奈や幼馴染の唯花を大切に想い続けていても、羽月との時間を優先した。
それだけ、恋人である羽月は大切な存在になった。
冬の訪れ。寒い日が続いて、吐く息が白く染まって、分厚いコートを着込んで歩く人々が街に溢れて、すっかり季節は冬になったことを伝えてくれる。
雪が降ると、誰よりも真奈ははしゃぎ回り、両手を広げて嬉しそうに駆け回っていた。
三学期が始まって間もなく、羽月が誕生日を迎える日に二人は遊園地に行く約束をした。
市外に出る機会にはなかなか恵まれなかったが、これを機会に遠出もいいだろうということになった。
浩二は羽月からのクリスマスプレゼントである毛糸のマフラーを巻いて、誕生日プレゼントをデートの前日に買いに行った。
羽月に似合うアクセサリーをと思って悩みながら手が届きそうなイヤリングを買って意気揚々と家に帰る。
明日のことを考えると何もかもが楽しみで、寒さも気にならない。
ただ、満たされた心地の中で、羽月の喜ぶ顔が見られるのが今から楽しみだった。
「おかえりなの、おにぃ」
家に帰ってくると暖かさそうなセーターを着た真奈が迎えに来てくれる。
「おう、ただいま」
浩二は真奈に会えた嬉しさのあまり両手で頬に触れた。
「うにゃ! おにぃ、やめー! それ、つめたいのにゃ!!」
寒空から帰って来たばかりの浩二の手は冷たく、頬を触れられた真奈は嬉しそうにはしゃぎながら、つめたいつめたいと幼さの残る言葉をこぼした。
「真奈、ちゃんと休んでたか?」
浩二は出かける前、真奈が微熱を出していたこともあり心配していた。
「あったかくして、おふとんにくるまってた」
まだ目も充血していて、髪も乱れていて、パジャマ姿をしている真奈が本調子でないことは浩二にもすぐ分かった。
「お昼はまだか?」
「うん、ずっとお部屋にいてたのにゃ」
「じゃあ、元気付けるためにも、一緒に食べるか」
そういって浩二は真奈をダイニングの連れていき座らせると、一緒に昼食を取ることにした。
いつもほどの食欲も元気もない真奈が心配だったが、美味しそうに食べてくれたので、浩二は一安心した。
「おにぃ、プレゼント買ってきたの?」
真奈は事前に羽月の誕生日ということで明日兄が出掛けていくことを聞いていた。
それに、さっき帰ってきた浩二がとても嬉しそうにしていたことも真奈は見逃さなかった。
きっと、明日のことが楽しみでたまらないのだと、それがすぐに分かった。
「おう、買ってきた、明日渡してくるよ」
「楽しみだね。きっとよろこんでくれる」
「うん、真奈にもお土産買ってくるよ」
「本当? 冬はやっぱり甘いチョコレートがいいのだ!」
真奈は冬の場合はチョコレートが溶けないので、チョコレートを買ってくると喜ぶ。
浩二は一人、家で待つ真奈が喜んでくれるのならと、お土産を買って帰ることに決めた。
日々を過ごしながら、時が過ぎれば、恋人同士であることも受け入れられる。そういうものなのだろうと浩二はひっそりと思った。
クリスマスもお正月もこれまでとは違い、浩二は羽月と過ごした。
妹の真奈や幼馴染の唯花を大切に想い続けていても、羽月との時間を優先した。
それだけ、恋人である羽月は大切な存在になった。
冬の訪れ。寒い日が続いて、吐く息が白く染まって、分厚いコートを着込んで歩く人々が街に溢れて、すっかり季節は冬になったことを伝えてくれる。
雪が降ると、誰よりも真奈ははしゃぎ回り、両手を広げて嬉しそうに駆け回っていた。
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市外に出る機会にはなかなか恵まれなかったが、これを機会に遠出もいいだろうということになった。
浩二は羽月からのクリスマスプレゼントである毛糸のマフラーを巻いて、誕生日プレゼントをデートの前日に買いに行った。
羽月に似合うアクセサリーをと思って悩みながら手が届きそうなイヤリングを買って意気揚々と家に帰る。
明日のことを考えると何もかもが楽しみで、寒さも気にならない。
ただ、満たされた心地の中で、羽月の喜ぶ顔が見られるのが今から楽しみだった。
「おかえりなの、おにぃ」
家に帰ってくると暖かさそうなセーターを着た真奈が迎えに来てくれる。
「おう、ただいま」
浩二は真奈に会えた嬉しさのあまり両手で頬に触れた。
「うにゃ! おにぃ、やめー! それ、つめたいのにゃ!!」
寒空から帰って来たばかりの浩二の手は冷たく、頬を触れられた真奈は嬉しそうにはしゃぎながら、つめたいつめたいと幼さの残る言葉をこぼした。
「真奈、ちゃんと休んでたか?」
浩二は出かける前、真奈が微熱を出していたこともあり心配していた。
「あったかくして、おふとんにくるまってた」
まだ目も充血していて、髪も乱れていて、パジャマ姿をしている真奈が本調子でないことは浩二にもすぐ分かった。
「お昼はまだか?」
「うん、ずっとお部屋にいてたのにゃ」
「じゃあ、元気付けるためにも、一緒に食べるか」
そういって浩二は真奈をダイニングの連れていき座らせると、一緒に昼食を取ることにした。
いつもほどの食欲も元気もない真奈が心配だったが、美味しそうに食べてくれたので、浩二は一安心した。
「おにぃ、プレゼント買ってきたの?」
真奈は事前に羽月の誕生日ということで明日兄が出掛けていくことを聞いていた。
それに、さっき帰ってきた浩二がとても嬉しそうにしていたことも真奈は見逃さなかった。
きっと、明日のことが楽しみでたまらないのだと、それがすぐに分かった。
「おう、買ってきた、明日渡してくるよ」
「楽しみだね。きっとよろこんでくれる」
「うん、真奈にもお土産買ってくるよ」
「本当? 冬はやっぱり甘いチョコレートがいいのだ!」
真奈は冬の場合はチョコレートが溶けないので、チョコレートを買ってくると喜ぶ。
浩二は一人、家で待つ真奈が喜んでくれるのならと、お土産を買って帰ることに決めた。
日々を過ごしながら、時が過ぎれば、恋人同士であることも受け入れられる。そういうものなのだろうと浩二はひっそりと思った。
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