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第十七話「取り戻せない時間」7
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台所の照明をつけて買い物してきたものを一緒に整理整頓して、クリームシチューの材料と食材を並べてた。いざ、料理を始めようと羽月は持参してきた可愛い花柄のエプロンに着替えると、羽月は浩二の視線に気が付いた。
「どうしたの?」
「いや、なんだか新妻みたいだなって」
「バカっ」
浩二の唐突な言葉に照れてしまった羽月は一言で言葉を返した。
羽月は傍に寄ってくる浩二の反応から興奮状態にあることが分かってしまった。
「本当、こんな時にどうしようのない変態、むっつりよねっ」
「うるさいわい」
冗談交じりに会話をすると少しだけ気分が晴れるようだった。
「妹さんもいるんだから、今日は何もしないからね」
羽月が念押しすると、浩二は残酷な知らせを聞いたように寂しそうな表情に変わった。
「そっか、それは仕方ないか……」
「そんなに落ち込まないでよ……、ほらっ」
羽月は顔を上げて、軽くつま先立ちをして身体を伸ばすと優しくキスをした。
「「う、うぅ、ちゅ……」」
唇が重なって、どちらともなく衝動的に唇を押し付け合う。
そっと浩二の手がエプロンを着た羽月の腰の方に回って身体を引き寄せる。
「ううぅ……、うん、いい……、ちゅっ、うう……、もっとっ……」
「うん、っちゅ、ちゅっっ……、ちゅっっ……」
優しいキスから次第に大胆さを増し、情熱的に何度も唇を重ねあって愛を確かめ合う。艶めかしく身体を熱くさせ、惹かれるままに舌を伸ばしてお互いの唾液で口の中までべたべたにしながら、頭の中までも快楽で満たされるような時間が続いた。
自分たちでも信じられないくらいに、背徳的で艶めかしい行為。
一度、始めると止められないほどの快楽が身体中に流れ込み、不安を消し去るように二人は触れ合う時を止められず、赴くままに求め合った。
そうして二人が快楽を求めあい、服に手が掛かったところで玄関の方から人が入ってくる物音が聞こえた。
瞬間、焦るように二人は状況を確認する。
一体、誰だろうと思いながら慌てて唇を離し、服が脱げたり着崩れしていないことにひとまず安堵した。
しかし、身体を離すのが遅れ、まだ抱き合ったままの見られては困る姿勢のまま玄関の方から入ってきた人物と目が合った。
「あれ……、こ、こうじ……、それに羽月さんも……」
玄関から台所の方までやってきたのは唯花だった。想定外な現場に遭遇し、唯花はアタフタと動揺してしまい上手く言葉が出てこなかった。
二人が付き合っていることは聞いていて、時の噂で二人がいい雰囲気で一緒にいる姿を見かけたという話も聞いていた。
だから、直接触れ合っている姿を目撃する事態も予測はできた。
それでも、二人で破廉恥な行為をしている現場を目撃すると、唯花もどうしていいか分からなかった。
(今、確かにキスしてたよね……)
唯花はその瞬間をこの目で見たが、それでも信じたくはなかった。
動揺して上手く言葉が出てこない。だが、手元にある鍋の重さを思い出すと、この場にいてはいけないと、泣きたい感情の中で気が付いた。
「肉じゃが、たくさん作ったからおすそ分けしようと思ったけど、お邪魔だったみたいだね……。私、やっぱり帰るね。さよなら」
気まずい空気に耐えられず、落胆したように聞こえる声色で唯花は言葉をこぼした。
台所で料理を作ろうとする羽月の姿を見て、自分の持ってきた料理が必要ないものであるか、即座に分かった。
二人に嫌われたいわけではない、二人の関係を否定したいわけじゃない、そんな感情が頭の中を渦巻いた。
去っていこうとする唯花に、何か言わなければ、この場にいるべきではないと唯花はそんな風に思っているかもしれない。
そう二人は思ったが、唯花はこの場を離れようと肉じゃがの入った鍋を持ったまま立ち去ろうとした。
「唯花さん!!」「唯花!!」
悲しみの表情に歪ませたままその場を立ち去ろうとする唯花に二人は声を掛けたが、その声は届くことなく、唯花は玄関を出てしまい、扉が閉まる音だけが無情にも家中に響き渡った。
「唯花さん……」
羽月も浩二もあまりの事に脱力して、興奮も冷め手を離した。
自分たちが間違っているのか、そんな自責の念が感情を支配しようとする。
唯花に遠慮してほしくない、傷ついてほしくはないと思いながらも、自分たちが始めてしまった交際関係を止めることは今更できないことは言うまでもなかった。
「どうしたの?」
「いや、なんだか新妻みたいだなって」
「バカっ」
浩二の唐突な言葉に照れてしまった羽月は一言で言葉を返した。
羽月は傍に寄ってくる浩二の反応から興奮状態にあることが分かってしまった。
「本当、こんな時にどうしようのない変態、むっつりよねっ」
「うるさいわい」
冗談交じりに会話をすると少しだけ気分が晴れるようだった。
「妹さんもいるんだから、今日は何もしないからね」
羽月が念押しすると、浩二は残酷な知らせを聞いたように寂しそうな表情に変わった。
「そっか、それは仕方ないか……」
「そんなに落ち込まないでよ……、ほらっ」
羽月は顔を上げて、軽くつま先立ちをして身体を伸ばすと優しくキスをした。
「「う、うぅ、ちゅ……」」
唇が重なって、どちらともなく衝動的に唇を押し付け合う。
そっと浩二の手がエプロンを着た羽月の腰の方に回って身体を引き寄せる。
「ううぅ……、うん、いい……、ちゅっ、うう……、もっとっ……」
「うん、っちゅ、ちゅっっ……、ちゅっっ……」
優しいキスから次第に大胆さを増し、情熱的に何度も唇を重ねあって愛を確かめ合う。艶めかしく身体を熱くさせ、惹かれるままに舌を伸ばしてお互いの唾液で口の中までべたべたにしながら、頭の中までも快楽で満たされるような時間が続いた。
自分たちでも信じられないくらいに、背徳的で艶めかしい行為。
一度、始めると止められないほどの快楽が身体中に流れ込み、不安を消し去るように二人は触れ合う時を止められず、赴くままに求め合った。
そうして二人が快楽を求めあい、服に手が掛かったところで玄関の方から人が入ってくる物音が聞こえた。
瞬間、焦るように二人は状況を確認する。
一体、誰だろうと思いながら慌てて唇を離し、服が脱げたり着崩れしていないことにひとまず安堵した。
しかし、身体を離すのが遅れ、まだ抱き合ったままの見られては困る姿勢のまま玄関の方から入ってきた人物と目が合った。
「あれ……、こ、こうじ……、それに羽月さんも……」
玄関から台所の方までやってきたのは唯花だった。想定外な現場に遭遇し、唯花はアタフタと動揺してしまい上手く言葉が出てこなかった。
二人が付き合っていることは聞いていて、時の噂で二人がいい雰囲気で一緒にいる姿を見かけたという話も聞いていた。
だから、直接触れ合っている姿を目撃する事態も予測はできた。
それでも、二人で破廉恥な行為をしている現場を目撃すると、唯花もどうしていいか分からなかった。
(今、確かにキスしてたよね……)
唯花はその瞬間をこの目で見たが、それでも信じたくはなかった。
動揺して上手く言葉が出てこない。だが、手元にある鍋の重さを思い出すと、この場にいてはいけないと、泣きたい感情の中で気が付いた。
「肉じゃが、たくさん作ったからおすそ分けしようと思ったけど、お邪魔だったみたいだね……。私、やっぱり帰るね。さよなら」
気まずい空気に耐えられず、落胆したように聞こえる声色で唯花は言葉をこぼした。
台所で料理を作ろうとする羽月の姿を見て、自分の持ってきた料理が必要ないものであるか、即座に分かった。
二人に嫌われたいわけではない、二人の関係を否定したいわけじゃない、そんな感情が頭の中を渦巻いた。
去っていこうとする唯花に、何か言わなければ、この場にいるべきではないと唯花はそんな風に思っているかもしれない。
そう二人は思ったが、唯花はこの場を離れようと肉じゃがの入った鍋を持ったまま立ち去ろうとした。
「唯花さん!!」「唯花!!」
悲しみの表情に歪ませたままその場を立ち去ろうとする唯花に二人は声を掛けたが、その声は届くことなく、唯花は玄関を出てしまい、扉が閉まる音だけが無情にも家中に響き渡った。
「唯花さん……」
羽月も浩二もあまりの事に脱力して、興奮も冷め手を離した。
自分たちが間違っているのか、そんな自責の念が感情を支配しようとする。
唯花に遠慮してほしくない、傷ついてほしくはないと思いながらも、自分たちが始めてしまった交際関係を止めることは今更できないことは言うまでもなかった。
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