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第十二話「真奈と庭園の残り香」3
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真奈は庭園の中にあるコイが飼育されている小さな池にやってきた。
今、通っている小学校にも似たような池があり、その池を見て喜んでいる真奈であったが、コイを元々知ったきっかけになったのはこの池だった。
「久しぶりなのじゃ!!」
透き通った水面の中をすいすいと心地良さそうにエラと尾っぽを動かしながら泳いでいるコイ達。
久々の色鮮やかなコイ達との再会に真奈は目を輝かせて感激した。
コイを飼育するには理想的な澄み切った池の水には、苔も生えていて、環境豊かな天然の自然を意識させた。
「さぁ、ゴハンのじかんなのじゃ!」
コイに話しかけるような調子で餌をコイの住む池に撒いていく。
真奈にとってはコミュニケーションを取るような感覚で、餌に釣られて真っ赤な色彩を帯びた綺麗なウロコを纏ったコイ達が真奈の目の前に集まって、口をパクパクさせながらその顔を覗かせる。
「ええのぉ! ええのぉ! 今日もげんきいっぱいなのじゃ!!」
真奈はコイ達の元気な様子を見て満足そうに笑顔で笑った。
「これからも、いっぱい食べて、大きくなってねん!」
前に見た時よりも体格の大きくなったコイの姿を見て真奈は喜んだ。
「ナポレオンもアウグスティヌスも元気に泳いでおる、クリストファーはこの前よりおっきくなったか? 相変わらず黒くてギョロっとした目をして勇ましいのだ……」
真奈は小学生になっても変わらない習性のまま、コイ達に自由に名前を付けて一人遊びをしていた。
コイの姿を眺めていると、不意に真奈の視界の中に池の向こう側にある白いイスと机がある場所に少し身体が透けているような制服姿の少女の姿が映った。
女子高生くらいだろうか、真奈から見ればかなりお姉さんだった。だがその瞳に生気はなく、虚ろ眼で心ここにあらずにも見える。
物思いに耽っているかのような様子で虚空をただ、少女はずっとそこで眺めていた。
真奈はその様子を見て、視界に映るものを確かめるように瞬きをして、間違いなく知らない人がそこにいると思い、コイと遊ぶのを中断して、少女の元によそよそしく近づいていく。
「お姉ちゃん、そこで何をしてるですか?」
何をするわけでもなく、ただそこに立ち尽くしている様子を不思議に思い、真奈は聞いた。
すぐ反応は帰って来ず、真奈の声が聞こえているのかすぐには分からなかった。
光を受け、徐々にその姿に目が慣れてくると、真奈はさらに不思議なことに、少女の制服は酷く汚れ、血も滲んで付着しているようだった。
「先生のことをずっと探してるの、伝えなければならない事があった気がして」
真奈の方に視線を向けるわけでもなく、そのまま少女は一言呟いた。
今、通っている小学校にも似たような池があり、その池を見て喜んでいる真奈であったが、コイを元々知ったきっかけになったのはこの池だった。
「久しぶりなのじゃ!!」
透き通った水面の中をすいすいと心地良さそうにエラと尾っぽを動かしながら泳いでいるコイ達。
久々の色鮮やかなコイ達との再会に真奈は目を輝かせて感激した。
コイを飼育するには理想的な澄み切った池の水には、苔も生えていて、環境豊かな天然の自然を意識させた。
「さぁ、ゴハンのじかんなのじゃ!」
コイに話しかけるような調子で餌をコイの住む池に撒いていく。
真奈にとってはコミュニケーションを取るような感覚で、餌に釣られて真っ赤な色彩を帯びた綺麗なウロコを纏ったコイ達が真奈の目の前に集まって、口をパクパクさせながらその顔を覗かせる。
「ええのぉ! ええのぉ! 今日もげんきいっぱいなのじゃ!!」
真奈はコイ達の元気な様子を見て満足そうに笑顔で笑った。
「これからも、いっぱい食べて、大きくなってねん!」
前に見た時よりも体格の大きくなったコイの姿を見て真奈は喜んだ。
「ナポレオンもアウグスティヌスも元気に泳いでおる、クリストファーはこの前よりおっきくなったか? 相変わらず黒くてギョロっとした目をして勇ましいのだ……」
真奈は小学生になっても変わらない習性のまま、コイ達に自由に名前を付けて一人遊びをしていた。
コイの姿を眺めていると、不意に真奈の視界の中に池の向こう側にある白いイスと机がある場所に少し身体が透けているような制服姿の少女の姿が映った。
女子高生くらいだろうか、真奈から見ればかなりお姉さんだった。だがその瞳に生気はなく、虚ろ眼で心ここにあらずにも見える。
物思いに耽っているかのような様子で虚空をただ、少女はずっとそこで眺めていた。
真奈はその様子を見て、視界に映るものを確かめるように瞬きをして、間違いなく知らない人がそこにいると思い、コイと遊ぶのを中断して、少女の元によそよそしく近づいていく。
「お姉ちゃん、そこで何をしてるですか?」
何をするわけでもなく、ただそこに立ち尽くしている様子を不思議に思い、真奈は聞いた。
すぐ反応は帰って来ず、真奈の声が聞こえているのかすぐには分からなかった。
光を受け、徐々にその姿に目が慣れてくると、真奈はさらに不思議なことに、少女の制服は酷く汚れ、血も滲んで付着しているようだった。
「先生のことをずっと探してるの、伝えなければならない事があった気がして」
真奈の方に視線を向けるわけでもなく、そのまま少女は一言呟いた。
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