20 / 157
第六話「期待と不安と」1
しおりを挟む
私は脚本を仕上げるために夜通しで学生寮として使っているアパートの4階にある角部屋に籠って執筆作業を行った。
いざ脚本作りをやり始めると、思っていたよりも考えることは多い。
浩二には隠していたことだけど、私はこのエッセイ本の映画を参考にしてすでに一度、舞台劇のための脚本を書いている。
それをすぐに浩二に見せるのはさすがに気が引けたので、こうして確認しながら修正をしてから、見せようとしているのだけど、書いていると浩二の凄さが一層よく分かった。
照明やBGM、演技の付け方など、脚本として考えて書いておかなければならないことは実に多い、私は無知であったと自覚するほど、考えが甘かった。
時間はあまり残されていないということを実感する日々の中で、なんとか形にして、クラスメイトに持っていこうと参考書を机に備えながら、私の執筆作業は続いた。
「にゃーー!!」
鳴き声が聞こえた気がした。
少し頭痛がして張りつめていた集中がふいに途切れる。
「ちょっと、マルちゃん!! 邪魔しちゃだめだよ……」
そして急に机に飛び乗って、キーボードに乗りかかって邪魔をしてくるペットの身体を私は掴んで、なんとかキーボードから離した。
集中しすぎていたのか意識が朦朧としているけど、掴むと思ったよりゴツゴツとして体格が大きく重たく、電気スタンドしか付けていなかったからか視界も良くなかった。
自分で言うのもアレだけど、普段一人で部屋にいる時の私はだらんとしている。
決まった時間に寝るわけでもなくラフな格好をしていて、ブラを付けてないことだってある。
視界も悪い中、ペットとじゃれついている時間もそうだし、年頃の女子と変わらないくらい可愛らしいぬいぐるみも部屋にいて、ベッドにも一緒に寝る用のぬいぐるみが置いてある。
「にゃーー!! にゃーー!!」
また鳴き声が聞こえる、ちょっと耳障りなぐらい頭の奥の方まで響く。
軽く頭痛もする、疲れているのかもしれない。
時々、何匹ペットを飼っているのか分からなくなる時もある。一人暮らしがもう長いからかもしれない、実家で飼っていた猫の事が記憶に残っているからなのかも。
とはいえ、ぴょんぴょんと狭い部屋でも飛び回っていて、今日もマルちゃんはいつも通りに元気いっぱいだ。
遊び相手になってほしいのか、近くに寄って来ては私の邪魔をしてくる。
私は仕方ないなぁと思いながら椅子から降りてマルちゃんをこちょこちょしてあげる。
「こちょこちょこちょー!!」
私は他の人の前では見せないテンションでマルちゃんをあやした。
お腹を出して無邪気に喜ぶマルちゃんを見ながら、また私の時間が潰れていくのだった。
マルちゃんは家を抜け出して、公園の段ボールに入っていたこともある。
きっと仲間がいなくて寂しかったのだろう。
孤独な者同士の遊戯がしばらく続いて、私ははっと我に返り執筆の続きに入った。
いざ脚本作りをやり始めると、思っていたよりも考えることは多い。
浩二には隠していたことだけど、私はこのエッセイ本の映画を参考にしてすでに一度、舞台劇のための脚本を書いている。
それをすぐに浩二に見せるのはさすがに気が引けたので、こうして確認しながら修正をしてから、見せようとしているのだけど、書いていると浩二の凄さが一層よく分かった。
照明やBGM、演技の付け方など、脚本として考えて書いておかなければならないことは実に多い、私は無知であったと自覚するほど、考えが甘かった。
時間はあまり残されていないということを実感する日々の中で、なんとか形にして、クラスメイトに持っていこうと参考書を机に備えながら、私の執筆作業は続いた。
「にゃーー!!」
鳴き声が聞こえた気がした。
少し頭痛がして張りつめていた集中がふいに途切れる。
「ちょっと、マルちゃん!! 邪魔しちゃだめだよ……」
そして急に机に飛び乗って、キーボードに乗りかかって邪魔をしてくるペットの身体を私は掴んで、なんとかキーボードから離した。
集中しすぎていたのか意識が朦朧としているけど、掴むと思ったよりゴツゴツとして体格が大きく重たく、電気スタンドしか付けていなかったからか視界も良くなかった。
自分で言うのもアレだけど、普段一人で部屋にいる時の私はだらんとしている。
決まった時間に寝るわけでもなくラフな格好をしていて、ブラを付けてないことだってある。
視界も悪い中、ペットとじゃれついている時間もそうだし、年頃の女子と変わらないくらい可愛らしいぬいぐるみも部屋にいて、ベッドにも一緒に寝る用のぬいぐるみが置いてある。
「にゃーー!! にゃーー!!」
また鳴き声が聞こえる、ちょっと耳障りなぐらい頭の奥の方まで響く。
軽く頭痛もする、疲れているのかもしれない。
時々、何匹ペットを飼っているのか分からなくなる時もある。一人暮らしがもう長いからかもしれない、実家で飼っていた猫の事が記憶に残っているからなのかも。
とはいえ、ぴょんぴょんと狭い部屋でも飛び回っていて、今日もマルちゃんはいつも通りに元気いっぱいだ。
遊び相手になってほしいのか、近くに寄って来ては私の邪魔をしてくる。
私は仕方ないなぁと思いながら椅子から降りてマルちゃんをこちょこちょしてあげる。
「こちょこちょこちょー!!」
私は他の人の前では見せないテンションでマルちゃんをあやした。
お腹を出して無邪気に喜ぶマルちゃんを見ながら、また私の時間が潰れていくのだった。
マルちゃんは家を抜け出して、公園の段ボールに入っていたこともある。
きっと仲間がいなくて寂しかったのだろう。
孤独な者同士の遊戯がしばらく続いて、私ははっと我に返り執筆の続きに入った。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
”小説”震災のピアニスト
shiori
恋愛
これは想い合う二人が再会を果たし、ピアノコンクールの舞台を目指し立ち上がっていく、この世界でただ一つの愛の物語です
(作品紹介)
ピアニスト×震災×ラブロマンス
”全てはあの日から始まったのだ。彼女の奏でるパッヘルベルのカノンの音色に引き寄せられるように出会った、あの日から”
高校生の若きピアニストである”佐藤隆之介”(さとうりゅうのすけ)と”四方晶子”(しほうあきこ)の二人を中心に描かれる切なくも繊細なラブストーリーです!
二人に巻き起こる”出会い”と”再会”と”別離”
震災の後遺症で声の出せなくなった四方晶子を支えようする佐藤隆之介
再会を経て、交流を深める二人は、ピアノコンクールの舞台へと向かっていく
一つ一つのエピソードに想いを込めた、小説として生まれ変わった”震災のピアニスト”の世界をお楽しみください!
*本作品は魔法使いと繋がる世界にて、劇中劇として紡がれた脚本を基に小説として大幅に加筆した形で再構成した現代小説です。
表紙イラスト:mia様
Hand in Hand - 二人で進むフィギュアスケート青春小説
宮 都
青春
幼なじみへの気持ちの変化を自覚できずにいた中2の夏。ライバルとの出会いが、少年を未知のスポーツへと向わせた。
美少女と手に手をとって進むその競技の名は、アイスダンス!!
【2022/6/11完結】
その日僕たちの教室は、朝から転校生が来るという噂に落ち着きをなくしていた。帰国子女らしいという情報も入り、誰もがますます転校生への期待を募らせていた。
そんな中でただ一人、果歩(かほ)だけは違っていた。
「制覇、今日は五時からだから。来てね」
隣の席に座る彼女は大きな瞳を輝かせて、にっこりこちらを覗きこんだ。
担任が一人の生徒とともに教室に入ってきた。みんなの目が一斉にそちらに向かった。それでも果歩だけはずっと僕の方を見ていた。
◇
こんな二人の居場所に現れたアメリカ帰りの転校生。少年はアイスダンスをするという彼に強い焦りを感じ、彼と同じ道に飛び込んでいく……
――小説家になろう、カクヨム(別タイトル)にも掲載――
看取り人
織部
ライト文芸
宗介は、末期癌患者が最後を迎える場所、ホスピスのベッドに横たわり、いずれ訪れるであろう最後の時が来るのを待っていた。
後悔はない。そして訪れる人もいない。そんな中、彼が唯一の心残りは心の底で今も疼く若かりし頃の思い出、そして最愛の人のこと。
そんな時、彼の元に1人の少年が訪れる。
「僕は、看取り人です。貴方と最後の時を過ごすために参りました」
これは看取り人と宗介の最後の数時間の語らいの話し
もう一度『初めまして』から始めよう
シェリンカ
ライト文芸
『黄昏刻の夢うてな』ep.0 WAKANA
母の再婚を機に、長年会っていなかった父と暮らすと決めた和奏(わかな)
しかし芸術家で田舎暮らしの父は、かなり変わった人物で……
新しい生活に不安を覚えていたところ、とある『不思議な場所』の話を聞く
興味本位に向かった場所で、『椿(つばき)』という同い年の少女と出会い、ようやくその土地での暮らしに慣れ始めるが、実は彼女は……
ごく平凡を自負する少女――和奏が、自分自身と家族を見つめ直す、少し不思議な成長物語
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/light_novel.png?id=7e51c3283133586a6f12)
僕の目の前の魔法少女がつかまえられません!
兵藤晴佳
ライト文芸
「ああ、君、魔法使いだったんだっけ?」というのが結構当たり前になっている日本で、その割合が他所より多い所に引っ越してきた佐々四十三(さっさ しとみ)17歳。
ところ変われば品も水も変わるもので、魔法使いたちとの付き合い方もちょっと違う。
不思議な力を持っているけど、デリケートにできていて、しかも妙にプライドが高い人々は、独自の文化と学校生活を持っていた。
魔法高校と普通高校の間には、見えない溝がある。それを埋めようと努力する人々もいるというのに、表に出てこない人々の心ない行動は、危機のレベルをどんどん上げていく……。
(『小説家になろう』様『魔法少女が学園探偵の相棒になります!』、『カクヨム』様の同名小説との重複掲載です)
古屋さんバイト辞めるって
四宮 あか
ライト文芸
ライト文芸大賞で奨励賞いただきました~。
読んでくださりありがとうございました。
「古屋さんバイト辞めるって」
おしゃれで、明るくて、話しも面白くて、仕事もすぐに覚えた。これからバイトの中心人物にだんだんなっていくのかな? と思った古屋さんはバイトをやめるらしい。
学部は違うけれど同じ大学に通っているからって理由で、石井ミクは古屋さんにバイトを辞めないように説得してと店長に頼まれてしまった。
バイト先でちょろっとしか話したことがないのに、辞めないように説得を頼まれたことで困ってしまった私は……
こういう嫌なタイプが貴方の職場にもいることがあるのではないでしょうか?
表紙の画像はフリー素材サイトの
https://activephotostyle.biz/さまからお借りしました。
昇れ! 非常階段 シュトルム・ウント・ドランク
皇海宮乃
ライト文芸
三角大学学生寮、男子寮である一刻寮と女子寮である千錦寮。
千錦寮一年、卯野志信は学生生活にも慣れ、充実した日々を送っていた。
年末を控えたある日の昼食時、寮食堂にずらりと貼りだされたのは一刻寮生の名前で……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる