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第二話「演劇クラス再始動!」3
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知枝と光は放課後、公園を訪れて空を眺めていた。
昼休みに話していたエルガー・フランケンの空中絵画を見るためだ。
公園のベンチに並んで座り、お菓子に甘いサクサクのポッキーを食べながら、知枝はアイスココアを、光はカルピスウォーターを飲みながら、その瞬間までの時間を楽しむ。
「もうすぐだね」
目を輝かせる光が楽しそうに、待ちきれずにつぶやく。
「うん、私はカリフォルニアで見て以来かな」
知枝の心境は複雑だった。現状、まだ黒沢研二が敵か味方か分からない、その本当の目的さえも。
この空中絵画を観測したとしても、その謎が全て解けるわけではないだろう。
でも、芸術家として彼の描く空中絵画の美しさには期待していた。こうしてそれをこれから光と一緒に見れる幸せも。
カリフォルニアで見た幻想的な光景は未だに忘れてはいない。
最高傑作ともいわれた傑作、タイトル名“空中庭園”、多くの民衆を魅了したそれは、未だに知枝の記憶の中で鮮明なものとして焼き付いて離れない。
「僕はこの目で見るのは初めてかな。4年前の時は、まだ知らなかったし、“天国への花束”はこの街じゃなかったから」
空を見上げる小柄な光の姿、確かに女装が似合いそうだなと思う可憐な美しさを知枝は感じた。
予告された時刻まであと少し、いよいよカウントダウンが始まった。
夕陽で紅く燃える空に、音を立てながら花火が打ちあがる。
60、59、58、57、56、55……、七色に輝く花火の明かりがカウントダウンの数字を空に点灯させる。
この街に暮らす人々、さらにはモニターを通して見届ける世界中の人々、多くの人々がこの時、この瞬間を待ちわびてきた。
見上げる空の美しさを前に胸が高鳴り、同じ空を眺める幸福を、確かなものとして感じ取ることが出来た。
昼休みに話していたエルガー・フランケンの空中絵画を見るためだ。
公園のベンチに並んで座り、お菓子に甘いサクサクのポッキーを食べながら、知枝はアイスココアを、光はカルピスウォーターを飲みながら、その瞬間までの時間を楽しむ。
「もうすぐだね」
目を輝かせる光が楽しそうに、待ちきれずにつぶやく。
「うん、私はカリフォルニアで見て以来かな」
知枝の心境は複雑だった。現状、まだ黒沢研二が敵か味方か分からない、その本当の目的さえも。
この空中絵画を観測したとしても、その謎が全て解けるわけではないだろう。
でも、芸術家として彼の描く空中絵画の美しさには期待していた。こうしてそれをこれから光と一緒に見れる幸せも。
カリフォルニアで見た幻想的な光景は未だに忘れてはいない。
最高傑作ともいわれた傑作、タイトル名“空中庭園”、多くの民衆を魅了したそれは、未だに知枝の記憶の中で鮮明なものとして焼き付いて離れない。
「僕はこの目で見るのは初めてかな。4年前の時は、まだ知らなかったし、“天国への花束”はこの街じゃなかったから」
空を見上げる小柄な光の姿、確かに女装が似合いそうだなと思う可憐な美しさを知枝は感じた。
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60、59、58、57、56、55……、七色に輝く花火の明かりがカウントダウンの数字を空に点灯させる。
この街に暮らす人々、さらにはモニターを通して見届ける世界中の人々、多くの人々がこの時、この瞬間を待ちわびてきた。
見上げる空の美しさを前に胸が高鳴り、同じ空を眺める幸福を、確かなものとして感じ取ることが出来た。
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