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第十三話「夜を駆ける」3
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私は女の身体であることも忘れ、力強く決意を込めて言葉を放ち、再び木刀を男目掛けて振り下ろす。沸騰した思いが口調までも男の頃に戻させる。
身体が限界を超えていたって関係ない、ただこの息が続く限り、力の限りを尽くすだけ。
ガン!! ダン!! ガンッ!!! と途切れることなく次々に繰り出される太刀で木刀同士がぶつかりあって鈍い音がフロアに響く。
何度も何度も気合を込めてぶつかっていく、止まることない剣劇のように互いの木刀がぶつかり合う。
予想外の追撃の嵐で、次第に男も徐々に息が上がり始める、私の意識はすでに朦朧としていたが、トランス状態に陥っているかのように身体だけは止まることなく男を捉えて離さずぶつかっていく。
もはや誰もが時間の感覚はなく、ただただぶつかり合う回数も忘れて打ち合う音だけが辺りに木霊する。
そして、男の一瞬の油断が木刀を男の左腕へと思い切り命中させた。
「ぬああぁぁぁ!!」
男が一際大きく呻き声を上げる。しかし、それはまだ決定打ではなかった。すぐさま男は体制を整えて反撃の一撃を私の脇腹に加えた。
「くうぅぅ、あああぁぁぁ・・・、いたああぁ・・・、はぁ・・・はぁ・・・」
手の力が抜けて私の木刀が地面に向かって吹き飛んでいった。
「さっきのは驚いたぜ、さぁ、残念だがチェックメイトだ」
息を切らしながら倒れこんだ私に向けて男が木刀を突きつける。
「俺がもし負けたら警察で自供してやろうかと思ったがここまでだな。
あの日、進藤ちづるの父親が通りかかったのは偶然だった。
どれもこれも偶然が重なって起きたことだ、誰でもよかったと言えばそうかもしれない、失業して家出をしていたというのは警察が動機として判断する上では好都合だったがな。
人間ってのはツイてないときはとことんツイてないもんだ。健闘したが、残念ながらお前らの負けだ、父親のことは諦めるんだな」
男が話し終えた後で静寂が流れる。
命が刈り取れる嫌な予感だけが、迫って来る。
抵抗しようにも身体の節々が痛みを訴えて身体を動かそうとしてもいうことをきかない。
視線をずらすと裕子が泣きはらした表情で声を出す気力もなくただ二人の死闘の行方を見守っていた。
「さぁ、諦めな」
男は再度終戦を勧告する。私は一つ大きく息をする、もう時間が来たようだ。
「残念だけど、どうしてもあなたのことは許せないわ」
私がそう告げると、次の瞬間、バンッ!!! と勢いよく大きな音を立てて扉が開かれた。
「進藤さん」
扉を開いて出てきたのは新島俊貴の姿をした礼二さんだった。
「新島君!!」
私はギリギリのところで助けに来てくれたことに感謝を込めて名前を呼んだ。
「なに!?」
男が視線を扉の方に向けて驚き、声を上げる。
「警察だ、葛飾蓮舫、観念しろ!!」
続いて出てきたのは村上警部、持っていた拳銃の銃口をまだ動揺を隠せないままの男に向かって向ける。
「くっ! お前が呼んだのか?!」
「それは念には念を押しておかないとね」
私は傷つきながらも得意げに笑って見せた。
「抵抗しても無駄だ、署まで来てもらうぞ」
村上警部が銃口を突きつけながら一歩一歩近づいてくる。
「ちっ・・・、そうか、全部時間稼ぎだったってわけか」
男が諦めたようにつぶやく。ようやく殺気立った敵意をやめる。驚くくらいの潔さだった。もしかしたら本当は他にも策を用意していたのかもしれない。
しかし、そうしたものが不運にも機能しなかったのか、それはわからないが、この前の一件も含めて計画全てがこの男の単独で行われたことではないことは何となくわかっている。
そうした謎はまだこの時点で残っていて、それらはまだ解決していない。
身体が限界を超えていたって関係ない、ただこの息が続く限り、力の限りを尽くすだけ。
ガン!! ダン!! ガンッ!!! と途切れることなく次々に繰り出される太刀で木刀同士がぶつかりあって鈍い音がフロアに響く。
何度も何度も気合を込めてぶつかっていく、止まることない剣劇のように互いの木刀がぶつかり合う。
予想外の追撃の嵐で、次第に男も徐々に息が上がり始める、私の意識はすでに朦朧としていたが、トランス状態に陥っているかのように身体だけは止まることなく男を捉えて離さずぶつかっていく。
もはや誰もが時間の感覚はなく、ただただぶつかり合う回数も忘れて打ち合う音だけが辺りに木霊する。
そして、男の一瞬の油断が木刀を男の左腕へと思い切り命中させた。
「ぬああぁぁぁ!!」
男が一際大きく呻き声を上げる。しかし、それはまだ決定打ではなかった。すぐさま男は体制を整えて反撃の一撃を私の脇腹に加えた。
「くうぅぅ、あああぁぁぁ・・・、いたああぁ・・・、はぁ・・・はぁ・・・」
手の力が抜けて私の木刀が地面に向かって吹き飛んでいった。
「さっきのは驚いたぜ、さぁ、残念だがチェックメイトだ」
息を切らしながら倒れこんだ私に向けて男が木刀を突きつける。
「俺がもし負けたら警察で自供してやろうかと思ったがここまでだな。
あの日、進藤ちづるの父親が通りかかったのは偶然だった。
どれもこれも偶然が重なって起きたことだ、誰でもよかったと言えばそうかもしれない、失業して家出をしていたというのは警察が動機として判断する上では好都合だったがな。
人間ってのはツイてないときはとことんツイてないもんだ。健闘したが、残念ながらお前らの負けだ、父親のことは諦めるんだな」
男が話し終えた後で静寂が流れる。
命が刈り取れる嫌な予感だけが、迫って来る。
抵抗しようにも身体の節々が痛みを訴えて身体を動かそうとしてもいうことをきかない。
視線をずらすと裕子が泣きはらした表情で声を出す気力もなくただ二人の死闘の行方を見守っていた。
「さぁ、諦めな」
男は再度終戦を勧告する。私は一つ大きく息をする、もう時間が来たようだ。
「残念だけど、どうしてもあなたのことは許せないわ」
私がそう告げると、次の瞬間、バンッ!!! と勢いよく大きな音を立てて扉が開かれた。
「進藤さん」
扉を開いて出てきたのは新島俊貴の姿をした礼二さんだった。
「新島君!!」
私はギリギリのところで助けに来てくれたことに感謝を込めて名前を呼んだ。
「なに!?」
男が視線を扉の方に向けて驚き、声を上げる。
「警察だ、葛飾蓮舫、観念しろ!!」
続いて出てきたのは村上警部、持っていた拳銃の銃口をまだ動揺を隠せないままの男に向かって向ける。
「くっ! お前が呼んだのか?!」
「それは念には念を押しておかないとね」
私は傷つきながらも得意げに笑って見せた。
「抵抗しても無駄だ、署まで来てもらうぞ」
村上警部が銃口を突きつけながら一歩一歩近づいてくる。
「ちっ・・・、そうか、全部時間稼ぎだったってわけか」
男が諦めたようにつぶやく。ようやく殺気立った敵意をやめる。驚くくらいの潔さだった。もしかしたら本当は他にも策を用意していたのかもしれない。
しかし、そうしたものが不運にも機能しなかったのか、それはわからないが、この前の一件も含めて計画全てがこの男の単独で行われたことではないことは何となくわかっている。
そうした謎はまだこの時点で残っていて、それらはまだ解決していない。
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