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エピローグ「記憶から記録へ変わる日々」(完)1
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別れの日が近づく中、私の予定も埋まっていった。
保留にしていた演奏会などに改めて参加を希望したからだ。
ここまで依頼が増えたきっかけは新聞のコラムに私の記事が掲載されたことが大きかったと思う。
”震災のピアニスト”
そんな仰々しいタイトルが付けられ、ピアノコンクールのことや副賞で参加したオーケストラとの演奏会でのことが書かれることになったのだ。
その後、その記事を見た人からの出演依頼が増えることになり、私は例え一人でも学校や公民館、教会にまで出向いて演奏を続けていくことにした。
”被災者の方々に向けて、勇気を与えたい”
分かりやすい私のメッセージが届いて、式見先生にも手伝ってもらいながら、高校に通いながら忙しい日程が組まれることになった。
ストリートピアノを通じて勇気を届ける運動も少しずつ現実味を帯びた計画にもなった。
私の望んだことはこういう事なのだろうと私は納得して、出来る限りことをしていこうと思った。
*
隆ちゃんが旅立つ日、私は式見先生と空港まで見送りに行った。
今度のお別れは寂しくないと行く前は息巻いていたけど、いざ、隆ちゃんに会ってみると寂しさでいっぱいになった。
「―――また、会えるよ。泣かないで晶ちゃん」
私が抱きついて離れないから、隆ちゃんは優しく頭を撫でて慰めてくれる。
―――私はきっと、怖かったのだと思う。
予定をたくさん入れて、忙しさで忙殺するようになったら、どんどん再会するのが先延ばしになってしまうのではないかと。
ほとんど自分が蒔いた種なのに、こうすれば寂しくならなくて済む、自分には隆ちゃんと同じようにやるべきことがある、そういう前向きな気持ちであったはずなのに。
今はこんなにも寂しい、予定を埋めて隆ちゃんに会えない苦しみから逃げているようで、そんな自分が憎らしい。
だから私はそんな自分を許せなくて、一生懸命に彼がいない寂しさを訴えかけるように泣いた。
平気なんかじゃない、会えなくて平気なんかじゃないんだって分かってほしかったんだ。
空港のアナウンスが入り、飛行機の出発時刻になって、彼がお母さんと一緒に旅行用カバンを手に離れて行く。
私は何とか懸命に顔を上げて、目を赤く充血させながらも彼のことを真っ直ぐ見た。
笑顔で手を振ってくれているその瞳からは、私と同じように涙が滲んでいた。
―――その表情を見ることが出来て、私はやっと安堵した。
彼は私のことを愛している。
こうして別れが苦しいのは私だけじゃない。
それが痛いくらい分かったから、私は上手に笑えないけど、式見先生の横で最後まで手をいっぱい伸ばして、彼を見送った。
そうして飛行機は彼を乗せて飛び立っていき、私と彼のピアノコンクールに挑んだ日々も過ぎ去って、再び私たちは遠距離になった。
保留にしていた演奏会などに改めて参加を希望したからだ。
ここまで依頼が増えたきっかけは新聞のコラムに私の記事が掲載されたことが大きかったと思う。
”震災のピアニスト”
そんな仰々しいタイトルが付けられ、ピアノコンクールのことや副賞で参加したオーケストラとの演奏会でのことが書かれることになったのだ。
その後、その記事を見た人からの出演依頼が増えることになり、私は例え一人でも学校や公民館、教会にまで出向いて演奏を続けていくことにした。
”被災者の方々に向けて、勇気を与えたい”
分かりやすい私のメッセージが届いて、式見先生にも手伝ってもらいながら、高校に通いながら忙しい日程が組まれることになった。
ストリートピアノを通じて勇気を届ける運動も少しずつ現実味を帯びた計画にもなった。
私の望んだことはこういう事なのだろうと私は納得して、出来る限りことをしていこうと思った。
*
隆ちゃんが旅立つ日、私は式見先生と空港まで見送りに行った。
今度のお別れは寂しくないと行く前は息巻いていたけど、いざ、隆ちゃんに会ってみると寂しさでいっぱいになった。
「―――また、会えるよ。泣かないで晶ちゃん」
私が抱きついて離れないから、隆ちゃんは優しく頭を撫でて慰めてくれる。
―――私はきっと、怖かったのだと思う。
予定をたくさん入れて、忙しさで忙殺するようになったら、どんどん再会するのが先延ばしになってしまうのではないかと。
ほとんど自分が蒔いた種なのに、こうすれば寂しくならなくて済む、自分には隆ちゃんと同じようにやるべきことがある、そういう前向きな気持ちであったはずなのに。
今はこんなにも寂しい、予定を埋めて隆ちゃんに会えない苦しみから逃げているようで、そんな自分が憎らしい。
だから私はそんな自分を許せなくて、一生懸命に彼がいない寂しさを訴えかけるように泣いた。
平気なんかじゃない、会えなくて平気なんかじゃないんだって分かってほしかったんだ。
空港のアナウンスが入り、飛行機の出発時刻になって、彼がお母さんと一緒に旅行用カバンを手に離れて行く。
私は何とか懸命に顔を上げて、目を赤く充血させながらも彼のことを真っ直ぐ見た。
笑顔で手を振ってくれているその瞳からは、私と同じように涙が滲んでいた。
―――その表情を見ることが出来て、私はやっと安堵した。
彼は私のことを愛している。
こうして別れが苦しいのは私だけじゃない。
それが痛いくらい分かったから、私は上手に笑えないけど、式見先生の横で最後まで手をいっぱい伸ばして、彼を見送った。
そうして飛行機は彼を乗せて飛び立っていき、私と彼のピアノコンクールに挑んだ日々も過ぎ去って、再び私たちは遠距離になった。
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