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第一章 

第32話 新たな仲間 スーム

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「おいおい、おかしいだろ。あの大きさの水の球でなんでこんなに大きな湖が出来るんだよ!」

 出来上がった湖のほとりで唖然として見回す。えぐられた水の道を作った水の球が爆発して、その衝撃で出来上がった穴に水がたまったみたいだ。

 グレンさんのごもっともな意見に僕も苦笑い。
 球を追いかけるように僕の手から水が追いかけていたんだけど、それがあの量の水になってしまったみたい。
 っていうか明らかに魔法の威力がおかしくなってる。それもこれのせいかな……。

 名前 ティル 
 職業 勇者
 
 レベル 1/5

 HP 500550
 MP 500020
 
 STR 349500
 DEF 335000
 DEX 331000
 AGI 328000
 INT 318900
 MND 318900

スキル

【解体上級】【戦士中級】【剣士上級】【武闘家上級】【魔法使い中級】【僧侶上級】【重戦士中級】【魔闘家上級】【魔剣士上級】【賢者中級】【農夫上級】【勇者下級】
 
 馬車に乗る時に勇者に転生しておいた。賢者で落ち着いて転生もしなくなっていたんだけどなれるならと思って転生した。勇者になっただけでステータスがいくらか上がってもちろん、スキルも手に入った。
 それが【勇者下級】効果としては魔法の威力をあげるものっぽい? それじゃ賢者と一緒だから剣とかも上げているかも? 盗賊の首を何の抵抗もなく切れたのも気になるからね。ドンテさんの太刀が凄い切れ味だからって言うのもあると思うけどね。
 
「相棒はどこまで強くなるんだ?」

「さ、さあ……」

 グレンさんに頭を力強く撫でられながら呟かれる。僕も知りたいですよ、グレンさん。

「お兄ちゃん! スライムさん」

「ん? あ~、あれがスライムなんだ~。初めて見る」

 僕の作ったティル湖かっこ仮にうにょうにょと近づく青い物体が見える。リルムちゃんが指さして気づいた。
 スライムたちはみんなティル湖の水を飲み始めた。

「奴らはマナに反応するからな。魔法で作った水に惚れたんだろう……。そうだ!」

 スライムについて話すとポンと手を叩いてグレンさんが一匹のスライムを持ってきた。
 
「だ、大丈夫なんですか?」

「ん? ああ、スライムって言うのは無害だからな。何でも消化しちまうから討伐対象だけど依頼がなければやらなくていいって言われてる。ちょっと触って確認したからこいつは俺を消化しない。そういうもんだ」

 そう言うもんだってグレンさん……一応溶かす魔物なんでしょ。なんか怖いな。
 スライムで何をするんだろうか?

「このスライムに盗賊たちの死体を食べさせる。すると、ほら。ひとりでに全部の死体を食べ始めるってわけだ」

「は~。便利ですね」

「こいつらはネズミみたいに群れで行動するからな。美味しい死体があると一匹が認知すると群れで食べ始めるんだ。ティルの作った湖もたまたま魔法が当たったスライムがいたんだろうな。それでいち早く来たんだろう」

 スライムたちが盗賊の死体を食べ始めて綺麗にしていく。スライムはこの世界の掃除屋みたいな存在っぽいな。
 そんなことを考えていると一匹のスライムが僕の足にスリスリとすり寄ってきた。

「どうしたんだい?」

 その姿に可愛さを感じて声をかけるとぴょんぴょんと跳ねて答えた。そんな姿に感動して思わず持ち上げるとひんやりとした感触が手に広がった。

「かわい~」

 持ち上げたスライムをツンツンするリルムちゃん。他のスライムよりも手乗りサイズで小さいな。

「ははは、どうやらティルの従魔になりたいみたいだな」

「従魔?」

 転生には魔物使いなんていう項目はなかった。魔物は使役できないそう思っていたけど。

「ヴァルバレスの連中も元は魔物って言っていただろ? 魔物の中には知恵を持ったものも生まれるってことだ。そいつはその知恵もちでティルが気に入ったってこった。王都には結構従魔もちもいたからな。いいんじゃねえか?」

 そうか、従魔って言うのはみんなが出来ることだから転生欄に魔物使いがなかったのか。
 結構、みんな使っているのなら従魔にしてもいいかな~。

「名前はどうするのお兄ちゃん?」

「ん~、そうだな~」

 リルムちゃんの質問に考え込む。ゲームでは何度も仲間にしてきたけどな~。いざとなると決めかねるな~。

「スライム、スーラー、スーイー、スームー……、よし決めた! スーム、君の名はスームだ!」

 スライムの名前を決めるとぴか~とスームが輝いて宙に浮いた。
 ポスッと手に落ちるとぴょんぴょん跳ねて肩に乗って頬にすり寄ってきた。

「ははは、スームはかなり弱いな。まあ、これから強くなればいいだろう。一緒に居ればそのうち強くなる」

 グレンさんはスームを鑑定したみたいでそういってきた。スライムは最弱の部類のはずだもんな致し方ない。僕と同じでパワーレベリングすればいいだろう。

「ピ~!」

「ん? どうしたのスーム?」

 湖の方向を見て声をあげるスーム。促されるまま湖を見るとそこには大きなカブトムシのような魔物がスライムを襲っていた。

「ヨロイカブトか。あいつらはスライムが好物だからな」

 魔物の名前はヨロイカブトと言うらしい。
 グレンさんはヨロイカブトのことを説明しながら剣と槍を構える。僕と同じ考えのようで顔を見合ってヨロイカブトへと走り出す。

「リルム! 気をつけろよ。素手だとやりにくい相手だ」

「は~い!」

 ヨロイカブトと言う名の通り、鎧を着ているかのような外殻をしている。虫特有の柔軟な内郭と合わせると打撃攻撃には大層強い。グレンさんはそれを言ってるんだと思う。
 リルムちゃんも理解したようで手にマナを集めだした。

「スライムさんをいじめるな~!」

 ヨロイカブトへ近づくと両手を突き出して吹き飛ばした。外殻が大きくひび割れて動かなくなる。どうやら、一撃で倒したみたいだ。彼女も僕と同じようにパワーレベリングの成果が出たみたいだな。

「流石は虫の魔物だな。量が多い」

 スパッと倒していくグレンさんが呟く。切っても切ってもきりがない。

「キシャー!」

 仲間がやられ始めたのを感じたヨロイカブトが僕らへと威嚇の声をあげる。スライムを襲うのをやめたみたいで僕らへと襲い掛かってくる。

「ピ!」

 肩にいるスームが水玉を吐いて攻撃をする。まだまだ弱いから水鉄砲くらいの威力しか出てないな。それでもけん制になったのか動きを一瞬止めたヨロイカブト。すかさず太刀を突き刺して切り裂く。

「ナイス、スーム!」
 
「ピー!」

 休みなく襲ってくるヨロイカブトを切り伏せながらスームを褒める。嬉しそうに水を撒くスームは嬉しそうなのが見てわかった。

「ふう、かなりの数をやったな。終わりか?」

 百じゃ足りないほどの魔物を倒して一息つく。ヨロイカブトがいなくなって静かになった。

「暗くなってきちまったな」

 長い戦闘の為、日が沈みだしてしまう。丁度いいとティル湖かっこ仮で野営をすることにした。ティル湖の水は飲めるみたいなので飲み水には困らない。便利だなティル湖。

 馬車を連れてきて湖の横にテントを張る。その周りにスライムたちが集まってきて守るように陣を作った。どうやら、恩を返そうとしてるみたいだ。
 グレンさんはネズミと一緒と言っていたけど、それだけじゃ説明のつかないこともあるね。
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