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第一章
第29話 ヴァルバレス
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「着きましたわ。ヴァルバレスですわ」
馬車が走り出して一日が経った。
馬車が一台通れるほどの道しかない森を抜けるとそこにはクレーターのように沈み込んだ大地があった。滝から流れる水が川を作り出していて、その川が城下町へと流れてる。
お城を中心とした大きな円形の街が一望できる。隠れ里といってもいいかもね。
「滝の横に階段がございます。そこから下りましょう」
アビスさんに促されて階段を下っていく。なかなかの段数の階段だ。上ったら煩悩が消え去るだろうな~。ああ、エレベーターが欲しい。
「お嬢様。お帰りなさいませ」
「ジュラス、ただいま」
したまで下ってくると川に船とおじいさんが待ってた。普通のおじいさんみたいだけど、この人も吸血鬼なのかな?
「ん、そちらの人間は?」
「この方々は発作を治してくれるのです。私達はすでに治してもらってるんですよ」
「そ、それは本当ですか! これは急いで王城へと知らせなくては。早くお乗りください」
ジュラスさんが僕らを急かして船へと促す。この人数でも乗れる大きめの船。川が結構でかいから大丈夫だろうけど、座礁しないか心配だ。
川を下っていく間にジュラスさんに【ヒール】をしてあげた。感動で涙を流すジュラスさんは腰の調子もよくなったと喜んでくれた。
船が川を下っていって町に入るとにぎわいが聞こえてくる。
「お嬢様達が帰ってこられたぞ~」
「おお、相変わらずお美しい」
「人か? 吸血鬼ではないな?」
そんな声が周りから聞こえてくる。人族が来るのは珍しいみたいだな。
お城の前に船着き場があって止まるとお城へと案内してくれた。
「では皆さま、少し準備をしてきますね」
「ティル様。また後で」
「また今度私の知らない物の話をしてくださいね~」
「ははは……」
アビスさん達は何かを準備するみたいで僕らと別れる。ルビスさんに苦笑いを返しておいた。これ以上未来の科学を教えていいものなのだろうか。少し不安だ。
「ではティル様、グレン様、リルム様。こちらでございます」
ジュラスさんがにっこりと微笑んでお城の中へと案内してくれる。
お城の中に入ると赤い絨毯の通路が広がっていて中央まで真っすぐ続いていた。左右に部屋が等間隔に設置されてる。
「こちらでございます」
中央まで案内されると正面のいかにも玉座の間ですって感じの扉へと案内される。
え? まさか?
「では」
「お、おい!? まさか、このまま始祖の王と会うんじゃないだろうな?」
「そのまさかでございます」
「おいおい、こっちの心の準備ってもんが」
まさかと思っていたらやっぱり王との謁見だった。グレンさんも思っても見なかった事だったみたいでジュラスさんに疑問を投げかけてる。答えを聞いて焦って身なりを整えてる。こんなグレンさんを見るのは初めてだな。なんだか新鮮だ。
「ヴァイアント様、お客様をお連れしました」
『聞いている。入れ』
「はっ!」
ジュラスさんが大きな声で問いかけると扉の奥から低音の声が聞こえてきた。
一度頷いたジュラスさんの手によって玉座の間への大きな扉が開かれる。
玉座が見えて中に入ろうと思ったその時、不意の背後の気配に僕は手が出てしまった。
「ぐ、はっ!」
「だ、誰だ!」
「み、見事だ……救世主と言うのは本当のようだな……」
バタッ。気配の主が笑みを浮かべて親指を立ててきて倒れた。魔闘家も極めてしまった僕の攻撃は素手でもワーウルフをせん滅できる。急なことだったから手加減できなかったけど、大丈夫かな?
とりあえず、ヒールを使っておこうかな。
「ヴァイアント様!」
「はぁ? こいつが王様だと!?」
「す、すぐに回復しますね」
ジュラスさんの言葉に驚きながらも【ヒール】と使っていく。真っ赤な目だったヴァイアント様はビシャスさん達と同じように普通の人のような目になっていく。
「申し訳ございません。ヴァイアントがどうしてもティル様方の力が見たいと言って」
焦りながら回復させてると玉座の間から背の高い女性が出てきた。
スラッとした真っ白なドレスに身を包んでいて金髪のとても綺麗な人……目が真っ赤じゃないってことは吸血鬼じゃないのかな?
「私はレーンと申します。この町唯一の人族ですわ」
深くお辞儀をして自己紹介するレーンさん。お辞儀が終わるとヴァイアント様へと近づいて頬をぺちぺちと叩きだした。
「もっと叩かないとダメかしら」
呟くレーンさん。どんどん強くなっていくビンタ。いつの間にかヴァイアント様の頬が通常の三倍になっていった。
やっと目覚めたころには別人のように頬の大きな人になってて、リルムちゃんが目を輝かせて『おじさん面白い~』と声をあげてた。
まだ自分の頬が凄いことになっていることに気づかないヴァイアント様は笑いながら手を振ってるよ。
「お待たせしましたティル様。!?」
「お、お父様!」
「またお母様に叩かれたの?」
三姉妹が綺麗に着飾って玉座の間に入ってくるとヴァイアント様の姿に驚いてる。
どうやら、あの姿は日常のことのようでまた~と言われてる。
「お恥ずかしい」
「はっはっは。レーンは強いからな~。流石は儂の嫁」
「ふふふ、嫌ですわヴァイアント様」
「あたっ。はっはっは」
アビスさんが頭を抑えてうなだれてるとヴァイアント様が楽しそうに話した。すかさずレーンさんがヴァイアント様の頭をものすごい速さではたいた。あの速さは尋常じゃないけど、本当にレーンさんは強そうだな。まあ、それに耐えてるヴァイアント様は更に強そうだけど。
「さて、婿殿」
「ちょ、お父様。ティル様は断っておいでです。まずは発作についての話を」
「ああ、そうであったな。しかし、婿になってほしいんだがな。かなりのマナを感じて一目ぼれだぞ」
「あらあら、私と言うものがありながらそんなことを言っていいのですかヴァイアント様?」
「あたっ。さっきよりも強いなレーン。あっはっは」
ヴァイアント様の言葉にビシャスさんが否定してくれた。僕へとウインクしながら惚れたというとヴァイアント様はレーンさんにはたかれてる。コント見たいで面白いな、リルムちゃんはレーンさんのはたき方を真似てる、誰にやるのかな? それ。
「さて、救世主殿。そなたの回復魔法確かに見させてもらった。素晴らしいの一言だ。発作は完全になくなった感覚がある。ありがとう」
「いえ、まだ皆さんにやっていないのでお礼はまだ早いです」
「そういってくれるか。ではすぐにでも皆を集めよう。我々はティル様を歓迎いたします」
ヴァイアント様はそういって跪いてくれた。流石に恐縮してしまって僕も跪くと微笑んでくれた。
馬車が走り出して一日が経った。
馬車が一台通れるほどの道しかない森を抜けるとそこにはクレーターのように沈み込んだ大地があった。滝から流れる水が川を作り出していて、その川が城下町へと流れてる。
お城を中心とした大きな円形の街が一望できる。隠れ里といってもいいかもね。
「滝の横に階段がございます。そこから下りましょう」
アビスさんに促されて階段を下っていく。なかなかの段数の階段だ。上ったら煩悩が消え去るだろうな~。ああ、エレベーターが欲しい。
「お嬢様。お帰りなさいませ」
「ジュラス、ただいま」
したまで下ってくると川に船とおじいさんが待ってた。普通のおじいさんみたいだけど、この人も吸血鬼なのかな?
「ん、そちらの人間は?」
「この方々は発作を治してくれるのです。私達はすでに治してもらってるんですよ」
「そ、それは本当ですか! これは急いで王城へと知らせなくては。早くお乗りください」
ジュラスさんが僕らを急かして船へと促す。この人数でも乗れる大きめの船。川が結構でかいから大丈夫だろうけど、座礁しないか心配だ。
川を下っていく間にジュラスさんに【ヒール】をしてあげた。感動で涙を流すジュラスさんは腰の調子もよくなったと喜んでくれた。
船が川を下っていって町に入るとにぎわいが聞こえてくる。
「お嬢様達が帰ってこられたぞ~」
「おお、相変わらずお美しい」
「人か? 吸血鬼ではないな?」
そんな声が周りから聞こえてくる。人族が来るのは珍しいみたいだな。
お城の前に船着き場があって止まるとお城へと案内してくれた。
「では皆さま、少し準備をしてきますね」
「ティル様。また後で」
「また今度私の知らない物の話をしてくださいね~」
「ははは……」
アビスさん達は何かを準備するみたいで僕らと別れる。ルビスさんに苦笑いを返しておいた。これ以上未来の科学を教えていいものなのだろうか。少し不安だ。
「ではティル様、グレン様、リルム様。こちらでございます」
ジュラスさんがにっこりと微笑んでお城の中へと案内してくれる。
お城の中に入ると赤い絨毯の通路が広がっていて中央まで真っすぐ続いていた。左右に部屋が等間隔に設置されてる。
「こちらでございます」
中央まで案内されると正面のいかにも玉座の間ですって感じの扉へと案内される。
え? まさか?
「では」
「お、おい!? まさか、このまま始祖の王と会うんじゃないだろうな?」
「そのまさかでございます」
「おいおい、こっちの心の準備ってもんが」
まさかと思っていたらやっぱり王との謁見だった。グレンさんも思っても見なかった事だったみたいでジュラスさんに疑問を投げかけてる。答えを聞いて焦って身なりを整えてる。こんなグレンさんを見るのは初めてだな。なんだか新鮮だ。
「ヴァイアント様、お客様をお連れしました」
『聞いている。入れ』
「はっ!」
ジュラスさんが大きな声で問いかけると扉の奥から低音の声が聞こえてきた。
一度頷いたジュラスさんの手によって玉座の間への大きな扉が開かれる。
玉座が見えて中に入ろうと思ったその時、不意の背後の気配に僕は手が出てしまった。
「ぐ、はっ!」
「だ、誰だ!」
「み、見事だ……救世主と言うのは本当のようだな……」
バタッ。気配の主が笑みを浮かべて親指を立ててきて倒れた。魔闘家も極めてしまった僕の攻撃は素手でもワーウルフをせん滅できる。急なことだったから手加減できなかったけど、大丈夫かな?
とりあえず、ヒールを使っておこうかな。
「ヴァイアント様!」
「はぁ? こいつが王様だと!?」
「す、すぐに回復しますね」
ジュラスさんの言葉に驚きながらも【ヒール】と使っていく。真っ赤な目だったヴァイアント様はビシャスさん達と同じように普通の人のような目になっていく。
「申し訳ございません。ヴァイアントがどうしてもティル様方の力が見たいと言って」
焦りながら回復させてると玉座の間から背の高い女性が出てきた。
スラッとした真っ白なドレスに身を包んでいて金髪のとても綺麗な人……目が真っ赤じゃないってことは吸血鬼じゃないのかな?
「私はレーンと申します。この町唯一の人族ですわ」
深くお辞儀をして自己紹介するレーンさん。お辞儀が終わるとヴァイアント様へと近づいて頬をぺちぺちと叩きだした。
「もっと叩かないとダメかしら」
呟くレーンさん。どんどん強くなっていくビンタ。いつの間にかヴァイアント様の頬が通常の三倍になっていった。
やっと目覚めたころには別人のように頬の大きな人になってて、リルムちゃんが目を輝かせて『おじさん面白い~』と声をあげてた。
まだ自分の頬が凄いことになっていることに気づかないヴァイアント様は笑いながら手を振ってるよ。
「お待たせしましたティル様。!?」
「お、お父様!」
「またお母様に叩かれたの?」
三姉妹が綺麗に着飾って玉座の間に入ってくるとヴァイアント様の姿に驚いてる。
どうやら、あの姿は日常のことのようでまた~と言われてる。
「お恥ずかしい」
「はっはっは。レーンは強いからな~。流石は儂の嫁」
「ふふふ、嫌ですわヴァイアント様」
「あたっ。はっはっは」
アビスさんが頭を抑えてうなだれてるとヴァイアント様が楽しそうに話した。すかさずレーンさんがヴァイアント様の頭をものすごい速さではたいた。あの速さは尋常じゃないけど、本当にレーンさんは強そうだな。まあ、それに耐えてるヴァイアント様は更に強そうだけど。
「さて、婿殿」
「ちょ、お父様。ティル様は断っておいでです。まずは発作についての話を」
「ああ、そうであったな。しかし、婿になってほしいんだがな。かなりのマナを感じて一目ぼれだぞ」
「あらあら、私と言うものがありながらそんなことを言っていいのですかヴァイアント様?」
「あたっ。さっきよりも強いなレーン。あっはっは」
ヴァイアント様の言葉にビシャスさんが否定してくれた。僕へとウインクしながら惚れたというとヴァイアント様はレーンさんにはたかれてる。コント見たいで面白いな、リルムちゃんはレーンさんのはたき方を真似てる、誰にやるのかな? それ。
「さて、救世主殿。そなたの回復魔法確かに見させてもらった。素晴らしいの一言だ。発作は完全になくなった感覚がある。ありがとう」
「いえ、まだ皆さんにやっていないのでお礼はまだ早いです」
「そういってくれるか。ではすぐにでも皆を集めよう。我々はティル様を歓迎いたします」
ヴァイアント様はそういって跪いてくれた。流石に恐縮してしまって僕も跪くと微笑んでくれた。
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