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第一章 

第12話 エレステナ

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「シスター!」

「ティル? どうしたのそんなに焦って?」

 グレンさんの話を聞いて焦って孤児院に走ってきた。転生を何度も繰り返した結果、かなり早く走れるようになった。街のはずれにある孤児院に一瞬で着くことが出来た。
 孤児院に勢いよく入るとシスターが心配そうにしてる。
 子供達も心配そうに僕に近づいてきて、頭を撫でてあげると笑顔になった。

「シスター。何か困っていることがあるんじゃないですか?」

「え?」

「冒険者ギルドの仲間が言っていたんです。孤児院が金銭問題を抱えているって」

 シスターは僕に迷惑をかけないように黙っていたに違いない。そう思って聞いたけど、シスターは笑顔で僕を抱きしめた。

「大丈夫よティル。それは私が何とかするから


「やっぱり! なんで黙っていたんですか!」

「これは私の問題だからよ。自分の不始末くらい自分で」

「違います! これは僕の問題でもある! 僕らを育てるために借金をしていたんでしょ」

「なんでそれを……」

 シスターはみんなにわからないようにしていたと思っているだろうけど、僕は知ってた。
 お金を商人ギルドのロジードっていう人に借りてることを。まさか、返済に困っていたとは知らなかったけどね。
 お金が必要だった。たくさんのお金を得て孤児院に寄付し続けた。
 だけど、シスターは優しい人だから孤児が増えて……自分は満足に食べられなくてもエルフだから大丈夫って言って我慢してた。
 エルフでも食べないと生きていけないのは僕でもわかる。シスター……僕が守る。守れるちからを得たから。

「シスター。ロジードに借金を返そう」

「ロジードのことも知っているのね」

「うん。小さな頃、話しているところを見たから」

「そう……なら知っているでしょ。とても返せる額じゃない」

 大金貨3枚。やつがあの時に口にしていた額だ。今での僕の所持金じゃ全然足りない。
 孤児もあの時よりもかなり増えてる。どれだけ借金が増えているかわからない。
 というかロジードのやつ、シスターの足元を見て利子が高いんだ。大金貨3枚なんて街の住人全員の税収よりも高いんじゃないか? 
 絶対に返せない額にして、エルフであるシスターを奴隷にしようとしてるんだ。
 エルフを奴隷として持つことをステータスと思っている奴もいる。
 王族に売ってお近づきになろうとしてるんだ。絶対そうだ。

「だから、ティルは自分の人生を歩んで」

「僕の人生は僕が決めます! 僕は育ててくれたあなたを助けたい、それが僕の人生です。エレステナ!」

「ティル……」

 涙を堪えて両手で顔を覆うシスター。

「エレステナ、頼ってください。僕らはあなたの子供なんだから」

「はい、ティル」

 頬を赤く染めたエレステナ。恥ずかしそうに頬を指で掻いてる。
 まったく、僕らのお母さんは……でもそんなところも好きなんだよな~。告白する勇気はないけどね……。

「それじゃとりあえず、はい」

 どさっと金貨入りの皮袋を机にだす。シスターや子供達がびっくりしてそれを見つめた。

「てぃ、ティル!? これ」

「今日の報奨金だよ。ワーウルフを倒してきたから結構高くなったみたいなんだ」

 僕が報告するとエレステナは目を潤ませて抱きしめてきた。
 
「ワーウルフなんて……とても大変だったでしょ」

「うん、まあね。でも僕も強くなったから」

「危なくなったらすぐに帰ってきてね。あなたがいなくなるなんて考えたくないわ」

「うん。大丈夫だよ。グレンさんもいるしね」

 抱きしめる力を強めるエレステナ。
 死ぬ気はないから危なかったら逃げることだけを考えるよ。

「じゃあ、シスター。そろそろ帰るね。急いできたからグレンさんと飲む約束を忘れてたんだ」

「ティル。その、エレステナって呼んで」

「え?」

「その、名前で言われた方が嬉しいから」

 さっきから名前で呼んでしまっていたのをシスターと言い直すとエレステナが恥ずかしそうに名前で呼んでほしいと言って来た。
 これは僕の事を男と思ってくれたってことかな? それなら嬉しいな。
 でも、いざ名前で呼んでと言われると、緊張するな。

「じゃ、じゃあ。え、エレステナ……さん」

「呼び捨てでいいよティル」

「え、エレステナ」

「うん。またね」

「シスターもティルお兄ちゃんも顔真っ赤~」

「おもしろ~い」

 子供達に笑われてしまうほど二人で顔を真っ赤にしてしまった。
 顔が熱くてしょうがないから駆け足で孤児院から出てきちゃったよ。
 でも、これからもっと頑張らないとな。借金がどれだけあるかわからないけど、大金貨3枚以上を返さないといけないわけだからね。

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